ロードレースの次世代を担う若手ライダーの育成のために2006年から開催されている「MFJロードレースアカデミー」。目的は「年少者にモーターサイクルスポーツを通じて社会性や親子のコミュニケーション、向上心、自立心、規律、助け合いの精神を育み、心身の健全な発達を促すとともに競技力向上をはかること」会場は栃木県・ツインリンクもてぎ。年間10回のカリキュラムです。
去る3月20日(日)に今年度の開校式が行われ、第1回カリキュラムが4月30日(土)に開催されました。
校長はWGP 世界選手権GP125クラスで2度の世界チャンピオンに輝いた坂田和人さん。
インストラクターは2014年全日本ロードレースST600クラスチャンピオン:小林龍太選手(年間アカデミー)、全日本ロードレースGP250ccクラス、ロードレースヨーロッパ選手権GP250クラスチャンピオン:関口太郎選手(1dayスクール)と豪華な講師陣が指導します。
「年間アカデミー」は12歳から18歳までの若手ライダーが対象。レースに必要なマナーを学び、ライディングテクニックはもとより、フィジカルトレーニングや走行前車両チェックなど総合的なトレーニングを行っています。
「1dayスクール」は年齢/性別の制限はありません。「オトナもこのアカデミーを受講したい」という声が多く2012年から始めました。これからレース出場を目指す人、サーキット走行を楽しんでいる人を対象にレースに必要なスキルやマナーを教えます。
今年も7名のちびっ子達が年間アカデミーに参加します。そのうち3名は昨年に引き続き2年目の受講となります。
朝8:30、生徒達は空気圧やポジション合わせなど、まず自分のバイクのメンテナンスから始めます。その後、全体ミーティング、準備運動を経て「マルチコース」でみっちり基礎練習を行いました。
坂田校長が過去の経験から生み出したパイロンを使ってのオリジナルコース。低・中速域でのブレーキング・クラッチリリース練習、全開加速→シフトダウン・クラッチリリース、定常円・八の字周回、パイロンスラローム、など基本中の基本をみっちり走り込みます。
ここで活きてくるのが坂田さんをはじめとするインストラクター達の的確な指導です。ほんの一例ですが「あそこがダメだった」「なぜダメなのか、それは脚の開き方が悪いから」「無理矢理開いているからバンクしたときに膝が地面にあたる」「そこでつっかえるからそれ以上バイクが寝ない」「だから脚はこうやって開く」と、約20分毎の走行時間の後にひとり一人にアドバイスします。
その教え方はとても厳しいです。スパルタ、と言ってもいいでしょう。坂田さんは「モータースポーツだからこそ厳しく教えなくてはいけない、何故ならほんの些細なことがケガに繋がるから」と言います。本当は優しく褒めながら指導したいのですがそれでは悪いところがなかなか治らない。厳しく指摘して自分で考えさせる、それが坂田さんの指導です。ただ厳しいだけではなくそこには生徒のことを大切に思う坂田さんの愛情が込められています。
お昼ごはんはホテルツインリンクのレストラン「グリーンベイ」。ここでも坂田校長のアイディアが。レストランに入ったらすぐに食事ができるように事前にレストランと調整しています。「昨年までは(パドックの)レストランで食事が出てくるまでの待ち時間が長く慌ただしかった。休憩時間も大切なカリキュラムのひとつ。生徒達にゆっくり休んで欲しい」との思いからこの方法を取り入れたそうです。
午後もマルチコースで午前中と同じメニューをきっちり走り込みます。ですが全く同じ事をするわけではなく少しずつアレンジして応用させます。午前よりも午後、今回よりも次回、と常に良くなるように考えています。
マルチコースの後はいよいよ本コースの走行。先導走行2周の後はフリー走行。この日は途中から雨が落ちてくる生憎の天気。微妙なコンディション変化を感じて自分のペース、走り方を考えるには良かったと思います。
バイクレースの舞台で活躍して欲しい、それがMFJロードレースアカデミーの基本主旨です。フォームや乗り方など最も基本的なこと、だけど一番大事なことは、今(小さいうち)からやっておかなくてはならない。だから時には厳しく指導するし、現役で活躍するインストラクターにこだわります。
今年の年間アカデミー7名の生徒たちです。(五十音順)
秋山龍生君 12歳
(秋山君は直前にトレーニング中に骨折してしまい、今回は残念ながら見学でした)
アカデミーに参加した理由:うまくなりたいから
アカデミーを卒業したらどんな道に進みますか?:エスハチ(S80)に乗りたい
将来目指すライダーは?:今はいない
岡部怜(れん)君(2年目) 13歳
アカデミーに参加した理由:自分のスキルをもっと上げたかったから
アカデミーを卒業したらどんな道に進みますか?:もっと大きいバイクに乗って活躍したい
将来目指すライダーは?:バレンティーノ・ロッシ選手、坂田和人選手、小林龍太選手
千田俊輝君 12歳
アカデミーに参加した理由:バイクに上手く乗れるようになるため
アカデミーを卒業したらどんな道に進みますか?:ロードレース
将来目指すライダーは?:バイクコントロールに優れたライダー
竹下龍馬君 (2年目) 16歳
アカデミーに参加した理由:もっと速くなりたいから
アカデミーを卒業したらどんな道に進みますか?:150cc以上のバイクにのってレースに出る
将来目指すライダーは?:バレンティーノ・ロッシ選手
藤原毬花(まりか)ちゃん 12歳
アカデミーに参加した理由:バイクを上手く走れるようになりたいからです
アカデミーを卒業したらどんな道に進みますか?:たくさんのバイクに乗ってみたいです。
将来目指すライダーは?:速く走れるライダー
宮崎隼君 13歳
アカデミーに参加した理由:乗れるバイクを増やしたいから
アカデミーを卒業したらどんな道に進みますか?:考え中
将来目指すライダーは?:GPライダー
山田尚輝君 14歳(2年目)
アカデミーに参加した理由:もっと上手になりたいと思ったから
アカデミーを卒業したらどんな道に進みますか?:受検
将来目指すライダーは?:ホルヘ・ロレンソ選手
みなさんのこれからの活躍を期待しています!
photo & text : koma