東京都千代田区・丸の内マイプラザで「2017年 ヤマハ発動機モータースポーツ活動計画発表会」が開催された。
冒頭、木村隆昭代表取締役 副社長執行役員からの挨拶。
数々の勝利と共に”Revs your Heart“の具現化を目指す。
「ヤマハがモータースポーツ活動に取り組む目的は①ブランド価値の向上、②先進技術の獲得、③二輪レースの振興普及の3つ。創立60周年を機にレース活動に取り組む意義や目的について検証を行い、中長期の展望に立ったグローバル戦略を再構築、その活動を加速させる」とコメント。さらにヤマハがファクトリーを復活させたこの2年間確実に積極的に取り組んできた活動と進捗状況を報告
「ファクトリーチームの担うミッションはタイトル獲得だけではない。全日本ロードレースと8耐を重要な開発拠点として位置づけ、活動から得た技術と情報を世界のレースシーンにフィードバックしている。ヤマハチームの成績向上、参戦シェアの向上、開発の効率化に結びつけている。その取り組みを市販モデルのYZF-R1の市場導入とリンクさせて実施した結果、販売拡大に貢献している」
「若手育成も重要な目的。アジアロード選手権を人材発掘育成の場として活用。アジアから世界に羽ばたくライダーのステップアップにも力を注ぐ。このステージで頭角を現したライダーには「ヤマハVR46マスターキャンプ」への派遣して更なる研鑽の機会を提供する」と、ヤマハがモータースポーツ活動を企業文化として捉えていることをアピールした。
続いて島本誠 上席執行役員 技術本部長兼RF車両ユニット長が技術の視点からレース活動の位置づけ、具体的な取り組みを報告。
「技術本部の使命は「先進の技術を獲得し、ニーズを顕在化すること」。それはレース活動に取り組む意義のひとつ「技術のフィードバック」に直結する。レース活動を通じて産み出される様々な先進技術は数年後には市販マシンに活かされる。例えばクロスプレーンエンジン、6軸センサーなどはその象徴的な事例。
もう一つ、重要な使命は人材開発。レースと言う厳しい環境の中で求められる判断力と対応力、不屈のチャレンジスピリットは技術者にとって不可欠な要素。レースはこうしたものを身につけるステージになっており、モノづくりの会社としてレース活動を積極的に続けていく意義がある」と、ディフェンディングチャンピオンとして臨む全日本ロードレース、鈴鹿8耐は更なる戦闘力アップに向けて現在開発を続けていることをアピールした。
河野俊哉 技術本部 MS戦略部部長兼MC事業本部 第1事業部 先進国営業部部長はマーケティングと人材育成の視点からレース活動の位置づけと取り組みを報告。
レース活動と人材の育成を通してヤマハブランドをより光り輝くものにする
「レース活動はブランドイメージを向上させ、お客様にヤマハ製品を選んでいただくための重要なマーケティング施策の一つ。大きなビジネスチャンスがあり、レースへの関心が高いアジアでの活動に重点を置いている。アジアでのスマートフォンの急速な普及拡大に伴い、情報を如何に的確に伝えるかが重要。お客様ご自身で情報入手することが容易になっており、欧米や日本の情報にも敏感になっている。
レースをもっと身近に感じてもらうためにヤマハブランドと活動の情報発信とそのための仕組み作りに努めていく。レース活動とそれを支える仕組みや人材の育成を通してヤマハブランドをより光り輝くものにしていきたい」とレースの振興と普及に貢献することを目指して活動を続けることを語った。
辻幸一 技術本部 MS開発部部長はレースマシンの開発状況について説明。
YZF-R1は、ある意味問題が出尽くして良い意味で良いマシンと言える
「昨年のMotoGPはタイヤブランドの変更と共通ECU化と言う大きなレギュレーション変更があった。前半線は調子良かったものの中盤戦以降調子が悪く、その原因は2人のライダーの7回の転倒。「ハンドリングのヤマハ」を取り戻すために、原点に立ち直ってマシンを見直している。開幕から優勝を目指して残りの時間を有効に使って開発を進めていく。
YZF-R1は今年3年目。ある意味問題が出尽くして熟成した良いマシンができていると思う。それは全日本ロードレースの連覇をみていただければご理解いただけると思う。まだ開発の余地はあるがこのロードレースマシンは8耐のベースマシンでもある。耐久レースで最も大切なのは信頼性。そう言う意味でも今年は期待ができると思う。」と語った。
発表会終了後、全日本ロードレースを闘う3人のライダーに今年の抱負を聞いた。
中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)
マシン3年目の今年はイチバン古いマシンとなる。R1=中須賀を証明したい
「YZF-R1がデビューして以来「マシンが速い」と言われてきたが、今年はウチ(ヤマハ)が一番古いマシンになる。マシンとライダー中須賀の速さを本当の意味で発揮できる年だと思う。ここでしっかり結果を出さないとライダーとしてもマシンとしても強さをアピールできない、そう言う意味でもやり甲斐のある年になるのではないかと思う。昨年「全戦全勝」を掲げて達成できなかったので、今年もその高い目標に向かって、開幕ダッシュをかけられるように頑張る」と力強く抱負を語った。
新たに加入する野左根に対しては「後輩が入ってくることによって刺激になるし、自分の背中をみてどれだけ成長してくれるかを見るのが楽しみ。ありのままの中須賀克行をみせて、その中で盗めるものは盗んで欲しい。僕が強いウチに負かすことに意義がある、弱くなってきてから倒されても価値がない。そう言う意味では野佐根にとってチャンスの年となるだろう」
「来年はここ(中須賀のシート)にコイツ(野左根)が座ってるかもね」と言う中須賀の言葉に、後輩の成長への期待と「ぜってぇ負けねぇ!」という強い自信を感じた。
「自分は記録を作ってきている。それを誇りに思う。過去の記録を破るのではなく、自分で記録を作っていくと言う今までに経験のない緊張感を味わっている。R1=中須賀を証明したい。」
野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)
「ファクトリーチームに入れたことは非常に嬉しく、栄誉に思う。YAMALUBE RACING TEAMで2年間経験を積んで加入できたことは自分の中でも自信に繋がっている。今年は開幕戦から優勝を狙っていきたい。速いだけでは勝てない、強くて速いライダーになりたい。絶対王者の中須賀選手は最強にして最高の目標のヒト。だけど「YAMAHAを倒すのはYAMAHA」だと思っている。中須賀選手は他メーカーに負けないと思う。自分が中須賀選手を倒せるように成長していきたい。」
「中須賀選手は丁寧に教えてくれる部分もあるけど、「真似できるモンなら盗んでみろ」が基本だと思う。教えてもらったからと言ってすぐに真似できるものでもないがその中から自分のものにして中須賀選手に追いつきたい。
今年は2カテゴリー(全日本ロードレースとEWC)に出るので厳しいシーズンになるとは思うが、EWCはチームと一丸になってチャンピオンを獲りたいと思う。
全日本ロードレースはEWCの関係で1レース欠場すると思うので、逆に、その分ランキングを気にせず一戦一戦に集中できるので攻めた走りで、毎戦勝負をしかけて一戦毎の順位を上げていきたい。」
ユースチームからファクトリーチーム昇格した初年度に2つのカテゴリにエントリーするのは厳しいシーズンになるとは思うが、野左根にとって大きなチャンスとなるシーズンになるだろうし、そう期待したい。
藤田拓哉(YAMALUBE RACING TEAM)
「ユースチーム(YAMALUBE RACING TEAM)で3年目のシーズン。ファクトリーに野左根航汰選手が上がったので今年は自分一人になるが、今まで以上の結果を出したいと思っている。(野左根との)差はハッキリと自覚している。その差をどこで埋めるのか、どうやって埋めるのかは自分自身の問題」
「追いつくだけでなく追い抜かさなくてはいけない。無我夢中の境地に近い研ぎ澄まされた状態になれるスイッチがある。常にその状態に持って行けるように自分自身のルーティンの持って行き方を考えている。
ユースチームは勉強になることがたくさんあるし、ファクトリーチャンピオンの中須賀選手に話を聞いたり、自分で盗むチャンスもある恵まれた環境の中にいることに感謝をしている。今年は「全戦表彰台に昇る」という意気込みで闘っていこうと思う」と固い誓いを語った・
今シーズンもヤマハのレース活動から目が離せない。
Photo & text : koma
(レースシーンは2016年の写真)