「ここで走れることを誇りに思う」中須賀克行、MotoGP日本グランプリ直前インタビュー
2017 FIM MotoGP世界選手権シリーズ 第15戦 MOTUL日本グランプリ開幕前日、ツインリンクもてぎにて6年連続でワイルドカード参戦する中須賀克行(YAMALUBE YAMAHA FACTORY RACING)にインタビューを行った。
実戦を通じた開発評価
中須賀は「YZR-M1」の開発を担っている。ほぼ1年中マシン開発のためにテストコースに赴き走行を重ねている。6回目となる今年も「来季に向けた」マシンの開発のために参戦している。
「毎年(モテギでは)来季に向けての先行開発車輌で参戦しています。ファクトリーライダーと同じトラックを走り、彼らがどんなフィーリングを言うのかを感じることができる貴重な場所です。そして実戦で走った彼らのコメントを聞きながらパーツのテストができるのは非常に有効です。より良いデータを持ち帰り次の開発に繋げることが大きな目的です」
普段のレースでは決勝レースにピークが来るように金曜からマシンのセットアップを詰めるが、中須賀の場合はセッション毎にパーツを変えたり、セットを変えたり、とテストがメインのウィークとなる。しかし中須賀はそれだけでは終わらない。決勝レースではひとつでも上のリザルトを獲るために闘う。そこには全日本のレベルのアピールと日本を代表して走るという自負がある。
「金曜日から土曜日までは(開発という)線引きがあるけど、決勝レースで、よーい!ドン!したら、“いち”ライダーとして攻めて思いっきり走っています。自分の結果が「全日本(ロードレース)のレベルってこんなんだ」と思われたくはないので、一人の日本人として意地をみせるべくひとつでも上の順位を目指して勝負に挑んでいます」
ワイルドカードは限られた人間しか参戦できない。そこに値するだけの技量と結果を残していなければ。それが前人未到の全日本ロードレース5年連続、通算7回のチャンピオンであり、鈴鹿8耐3連覇、中須賀だからこそできる参戦ではないかと思う。
「中須賀克行というライダーが認められて自分は出られるのかなと思っています。(ワイルドカードは)誰でも出られるわけではない、まずはその位置にいることに価値があると思っていますし、誇りに思います。」
「YZR-M1」の開発やワイルドカード参戦は全日本ロードレース(JSB)にも活かされているという。
「MotoGPマシンとJSBマシンでは速度域が全く違うので、JSBマシンに乗ったときの眼や体感の慣れがゆとりを持ってコントロールできる要因となっています」「MotoGPマシンは完全なレーシングマシンなので色々なパーツを交換できます。このパーツを交換したらこうなる、というフィーリングは自分の経験値としてJSBマシンの開発時に活かされています」
と中須賀。JSBマシンはMotoGPマシンに比べて改造の規制が多いが、中須賀の経験値がパーツ制作の方向性や、セットアップに寄与している。
最終戦は強い中須賀を魅せたい
いよいよ最終戦鈴鹿を残すのみとなった全日本ロードレースについて。
「今年は残念ながらチャンピオン争いは厳しいですが、強いヤマハ、強い中須賀をみなさんに魅せたいと思います」
「オートポリス、岡山と連勝して少し自信も戻ってきましたし、この勢いで最終戦鈴鹿2連勝を飾って最多勝記録を伸ばしたいと思います」
今シーズン17インチタイヤへの対応に苦戦した中須賀。しかしオートポリス、岡山では見事な優勝。課題を克服した中須賀は速い。この週末のMotoGP日本グランプリ、そして全日本ロードレース最終戦の活躍に期待したい。
Photo & text :Toshiyuki KOMAI