新型コロナウィルスの影響で2020年の開幕を迎えられない全日本ロードレース選手権。感染し亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、感染された方々の早期回復と皆様の健康をお祈り申し上げます。
Racing Heroesでは過去に撮影した写真の中から独断と偏見でセレクト、その時のエピソードと共にランダムに掲載していきます。
2010年鈴鹿300km耐久レースでヨシムラの青木宣篤/酒井大作組が優勝した。現在は開催されていないが鈴鹿300kmレースは鈴鹿8耐の前哨戦として重要な位置を占めていた。
2009年、ヨシムラは青木宣篤/酒井大作/徳留和樹のチームで鈴鹿8耐優勝を果たしている。その中で青木は存在感を放った。同年の鈴鹿300kmレースで3位表彰台に立った酒井/徳留ペアは鈴鹿8耐に向けてマシンを詰めていくのだが思うように進まない。MotoGPテストで忙しい青木が合流したのは7月。酒井・徳留の意見の違いを集約、お互いのマッチングポイントを見つけてセットアップに臨むと両者が乗りやすいマシンに改善されていった。その甲斐もあって見事鈴鹿8耐優勝を飾る。
2010年、ヨシムラは世界に闘いの場を定め全日本ロードレースを休止。鈴鹿8耐に向けて重要なレースである鈴鹿300kmに臨む。このレースは天候に翻弄された。降雨でスタートディレイ、レインタイヤでスタートしたものの天候が回復してレインタイヤでは厳しくなる。スタートライダーの酒井は11周目にドライタイヤへチェンジ。ファステストラップの猛チャージで2番手まで順位を上げる。しかしここで再び雨。足元をすくわれるライダーが出現する中、酒井はドライタイヤで走り切る。
ライダーチェンジ。アドバイザーの辻本聡さんは青木に「ドライタイヤで行く」と告げていた。最終的にはコースの状況を一番知っている酒井の判断に委ねることに。酒井は「ドライタイヤ」と答えた。ハーフウェットの中、青木はドライタイヤで出ていく。コースインした青木「大作――!どこがドライタイヤで行ける、だ!」と恨み節を言ったそうである。
しかし路面は徐々に乾いて行き青木はトップを走る。と、ここで再び雨。上位陣が再びウェットタイヤに交換する中、青木はドライタイヤで走り続ける。その判断が功を奏する。再び雨は上がり路面は乾いて行く。そのまま青木がトップチェッカー!めまぐるしく変わる天候のなか、チーム、辻本さんの的確な判断と青木・酒井の巧みな走りで優勝を勝ち取った。
Photo & text : Toshiyuki KOMAI