Snapshot⑪-2017年鈴鹿8耐合同テスト:佇む水野涼-

2020/06/01

新型コロナウィルスの影響で2020年の開幕を迎えられない全日本ロードレース選手権。感染し亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、感染された方々の早期回復と皆様の健康をお祈り申し上げます。

Racing Heroesでは過去に撮影した写真の中から独断と偏見でセレクト、その時のエピソードと共にランダムに掲載していきます。

2017年鈴鹿8耐合同テストの夕方、水野涼が佇んでいた。ハルクプロに所属するがこの年は桜井ホンダから参戦した。2015年にJ-GP3クラスチャンピオンを獲得。翌2016年にJ-GP2クラスへステップアップ。2017年もJ-GP2参戦、開幕3連勝と絶好調。しかし走行時間が少ない。自分の走行時間を増やすことと経験の為に鈴鹿8耐に参戦した。1,000ccでも行ける、と自信を持って挑んだがトップとの実力差と自分の非力さに苛立ちと悔しい気持ちだけが残ったテストだった。それでも決勝レースでは10位入賞を果たす。

鈴鹿8耐で貴重な経験を積んだ2017年は圧倒的な強さでJ-GP2クラスのチャンピオンを獲得。翌2018年に最高峰クラスへステップアップ。再び鈴鹿8耐にハルクプロから参戦する。ランディ・ドゥ・プニエ、ドミニク・エガーターがチームメイト。まだJSB1000マシンを乗りこなすまでには至らずタイムではこの二人に追いつけない。決勝レースではハーフウェットの中で転倒、左手首骨折のケガを負ってリタイアとなってしまう。

2019年、水野は飛躍的に伸びた。納得のいかない2018シーズン終了後、1,000ccマシンを操れるだけの体力をつけるべく肉体改造に乗り出す。考え方も変えた。『速く走らなくては、との思いから最初から最後まで100%全力で臨むと力んでしまい終盤に腕上がりを起こすことも多かった』。だから『緩急をつけた走り。80%〜90%の力で100%の力と同じタイムを出す事を考えながら走る』ことにした。もちろんすぐに効果が現れるわけではない。2019年前半戦終了辺りから効果が出だす。

鈴鹿8耐からワークスマシンを貸与された。これを機に歯車が回り出す。鈴鹿8耐は不運なペナルティで最後尾スタート。だが初めて3スティントを走行し、7位でフィニッシュ。

後半戦のもてぎで2位、初表彰台を獲得する。しかも、中須賀克行、高橋巧といった王者を前に真っ向勝負の先頭争いを演じる。続く岡山でも2位。しかし『絶対に負けたくない』野左根航汰の後塵を拝し悔しさを滲ます。最終戦鈴鹿でも3位表彰台。2019シーズンはランキング4位に躍進した。野左根航汰と言うライバルの存在とエースライダーという自覚が水野を覚醒させた。(参照:「苦しみ抜いた末に見出した活路。今年の水野涼は速い」)

Photo & text : Toshiyuki KOMAI