Snapshot⑭-秋吉耕佑、2011年全日本ロードレース2連覇達成!-

2020/06/20

新型コロナウィルスの影響で2020年の開幕を迎えられない全日本ロードレース選手権。感染し亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、感染された方々の早期回復と皆様の健康をお祈り申し上げます。Racing Heroesでは過去に撮影した写真の中から独断と偏見でセレクト、その時のエピソードと共にランダムに掲載していきます。

2011年全日本ロードレース最終戦鈴鹿。秋吉耕佑は2連勝を飾り、2年連続のJSB1000クラスチャンピオンを獲得した。しかもこの年は8戦中6勝、残り2戦は2位、つまり表彰台率100%の圧倒的強さを魅せて王者獲得である。

開幕戦鈴鹿、路面温度は46度まで上昇。独走していた秋吉だが、路面温度上昇によりタイヤがタレてくる。途中からタイヤ温存に切り替える。終盤、中須賀が迫ってくるとラスト3周でスパート。そのまま秋吉がトップチェッカー。

第4戦SUGO。金・土ウェットで決勝日は快晴。ドライセットが決まらない状態でレース。スタートダッシュを決めて逃げにかかる常套パターンかと思いきや、終盤に高橋巧が追いついてくる。テール・トゥ・ノーズのバトルは最終ラップまで続き、最後のシケインでバックマーカーが両者の間に入り秋吉が優勝。これで開幕4連勝を飾った。ゴール後、高橋の成長を称えるかのように秋吉から高橋に握手を求めた。

ランキングトップで迎えた最終戦鈴鹿。レース1。直前の雨でスタートディレイ。オープニングラップのヘアピンで加賀山をかわしてトップに立つと後続を引き離してそのまま独走でトップチェッカー。高橋巧が5位に沈んだのでレース1でチャンピオンを決めた。

レース2。オープニングラップの2輪シケイン立ち上がり、スプーン進入の200Rで加賀山をかわしてトップに立つと、レース1同様後続を引き離してひとり旅でダブルウィン。圧倒的速さで2年連続のチャンピオンを決めた。

秋吉の走りは鋭い。豪快にリアタイヤをスライドさせたブレーキングの突っ込み。くるっと向きを変えると圧倒的な立ち上がり加速で消えていく。また、雨の秋吉は手が付けられないほど速い。最終戦鈴鹿のレース2では、他のライダーが2分19秒後半から20秒台のラップなのに秋吉だけ2分18秒253のファステストラップ。2位以下に15秒以上の大差を付けて優勝している。

秋吉は『宇宙人』のニックネームで呼ばれている。「ここで抜く?!」というところでパッシングする、他人には理解が難しいコメントをする、などが理由だそうだ。本人は「なんで宇宙人なのかわからないのですが。。(笑)」と意に介さない。随分と昔、まだスマホが出てくる前の時代、フィリップアイランドのMotoGPテストで食事を一緒にする機会があった。そこで何故か携帯の話題となり『携帯を買ったら取扱説明書は最初から最後まで全ページ読み込みます。だって使っていない機能があったら勿体ないじゃないですか』。一同唖然。あの分厚い説明書を最初から最後まで?

でもわかるような気がする。秋吉はデータロガーの画面を観ながらメカニックと長時間打合せをする。データをみればどんな動きをしているのかわかる。しかしメカニックはコース上でのマシンの挙動がわからない。だから共有して自分の望む方向性にするにはどうしたら良いのか、を納得がいくまで話し合う。アタマの中で理解できる理論性とカラダで体現できる優れた直感力、相反する二つの高い能力を兼ね備えているのが秋吉耕佑だろう。今シーズンは自らのチームを立ち上げて臨む。どんな走りをするのかとても楽しみである。

photo & text : Toshiyuki KOMAI