中須賀克行、野左根航汰へのエール
2020年、圧倒的な速さに強さを纏ってシリーズチャンピオンを獲得した野左根航汰。今シーズンはワールドスーパーバイク選手権(WSBK)にフル参戦する。
「全日本ロードレースでチャンピオンを獲得して世界へ」全日本を走るライダーなら誰もが目指す道を野左根は体現した。
野左根の世界への挑戦を自分のことのように喜ぶオトコがいる。中須賀克行、野左根のチームメイトであり、ずっと目標にしてきた絶対王者だ。
2017年に野左根がファクトリーチームに加入してからずっとその成長を見守ってきた。中須賀は懇切丁寧に教えるタイプではない。かといって自分のやり方を隠すこともしない。闘い方、トレーニング、レースに対する考え方、とりわけ“勝利のへの執着心”、それら全てを包み隠さず全てをさらけ出してきた。「盗める物はドンドン盗め」というタイプだ。
「俺を越えていけ。でなければその先は無いぞ」常に語りかけてきた言葉。
その中須賀に野左根のWSBK挑戦について聞いてみた。
「自分を目標にしてきてくれたなら嬉しい。常に上を目指して、自分で努力した結果、速くなったし強くなった。自分を土台にして越えていく、そして世界への挑戦のチャンスを掴んだことが嬉しい。チャンスが巡ってきたときにそのポジションにいたことは航汰自身のチカラだと思う。この挑戦を糧に活躍して欲しい。」
と満面の笑みである。
後輩が世界に行くことは悔しくないのだろうか?
「もちろんひとりのライダーとしては(野左根は)ライバルだし、悔しい。自分はWSBKへの挑戦のチャンスが巡って来なかった。だけどずっと国内でトップを張ってこられた。もしも途中で世界へ行っていたらこの記録は生まれなかった。自分の置かれた環境の中で努力した結果が今の自分だと思っているので誇りに思っている。」
中須賀らしい言葉だ。絶対王者としての誇り。しかしそのためにどれだけの努力をしてきたか。今いるポジショニングよりもその過程に誇りを持っている。
2020年、滅多に褒めない中須賀が野左根の強さを認めた。中須賀を脅かすほどの強さを備えた野左根。そこには中須賀の存在が多分に影響していると思う。
「バイクに対する考え方、レースへの向き合い方、勝つためにナニが必要なのか、を考える姿勢が前向きになったと感じる。自分はそうやって今のポジションを勝ち取ってきた。航汰が考えた方法で努力してきたからこそ今の速さがあると思う。自分と一緒の時間を過ごした結果のカタチとして今の航汰がいるなら嬉しい。」
最後に野左根に贈る言葉を聞いてみた。
「常にチャレンジャーとしてプッシュし続けて活躍して欲しい。可能性は無限大。WSBKからMotoGPへ行くのもありだし、WSBKでチャンピオンを獲るのもあり。
国内から世界へ出る事例が少ない中、久しぶりに明るい話題だと思う。航汰自身が世界への道を模索している中で掴んだチャンス。漠然と行きたいなぁ、、だけで掴めるものではない。それだけ航汰が努力したという証。強くなった航汰を気持ち良く送り出したい。」
「中須賀さんを越えなければ世界には行かない」と決めていた野左根。自らが課した厳しい課題を克服してWSBKに挑戦する野左根。容易く通用する世界ではないが自信を持って暴れて欲しい。
photo & text : Toshiyuki KOMAI