「2024 MFJ MOTOAWARDS 授賞式」が東京都千代田区・日経ホールで開催された。全日本ロードレース、全日本モトクロス、全日本トライアル、全日本スノーモビル、全日本スーパーモト、全日本エンデューロ、各選手権シリーズの各カテゴリー上位3名が表彰された。
冒頭MFJ会長:鈴木哲夫氏から今年度の報告があった。全日本ロードレースのトピックスとして4年ぶりに新チャンピオンの誕生を挙げた。「岡本裕生選手が新チャンピオンに輝き文部科学大臣杯を授与されました。また、外国車メーカのドゥカティのワークスマシンを駆って参戦した水野涼選手も、シリーズを大きく盛り上げてくれました」と若いライダーの台頭を歓迎していた。
また「環境へのチャレンジとしてモーターサイクルスポーツの国内最高峰クラスJSB1000クラスにハルターマン・カーレスジャパン合同株式会社様の、100%非化石由来の燃料ハルターマンR100を年間で約1万6000リッターほど使用しました。カーボンニュートラル100%の燃料を使用したレースは、グローバルに見てもまだまだ少ない中、安定して使用できたのは、エントラントの皆様、国内外の車両メーカーの皆様、またタイヤメーカーの皆様、そして開催施設の皆様のご理解とご尽力のおかげです」
その他にもモトクロスやトライアルで電動バイク参戦を導入するなど持続可能なモータースポーツに向けた活動を本格化させている。
全日本ロードレースの表彰。
J-GP3クラスのチャンピオンは4年連続の尾野弘樹。ランキング2位:若松怜、3位:木内尚汰。
ST600クラスのチャンピオンは阿部恵斗が2年連続で獲得、来季はアジアロードのAST1000に挑む。ランキング2位:長尾健吾。3位:伊達悠太。
ST1000クラスは5戦中4勝を挙げた國井勇輝がチャンピオン。来季は世界の舞台:Moto2にステップアップ。全日本から世界へ、の新たな道を切り拓いた。ランキング2位:岩戸涼介、3位:羽田太河。
そして最高峰 JSB1000クラスは絶対王者中須賀克行を追い詰めた岡本裕生。中須賀はランキング2位。今年一番の話題をさらった水野涼が3位。
4年ぶりの新チャンピオン岡本の挨拶。「最終戦の最終レースまで同ポイントという非常に白熱したレース展開を見せられたと思っています。その中で自分がチャンピオンを獲得できて来年に繋がるとても良いシーズンでした。自分は来年から世界選手権のワールドスーパースポーツクラスに参戦することになりました。心機一転、全日本の最高峰クラスのチャンピオンとして胸を張って頑張っていきたいと思います」
「2016年から全日本に参戦し続けてきて初めて海外参戦になるので非常に不安な思いと楽しみな思いが半々です。と同時に(日本で走れないのは)非常に寂しい思いもあります。自分が言うのはちょっとおこがましいのですがロードレースと、そして日本のモータースポーツのご支援とご声援のほど、何卒よろしくお願いいたします。」と日本のロードレース発展を祈念したコメント。岡本の成長ぶりを感じた。
岡本はここ数年で本当に速く・強くなった。特に今シーズン後半戦オートポリスから4連勝。一発の速さに加えてアベレージの速さが加わった。さらにスムーズなコーナリング。
中須賀が得意とする“ガツン!とブレーキングして小回りで一気に立ち上がる”スタイルとは違い、ブレーキングこそ中須賀ほど強くないがコーナリングスピードを落とさず滑らかに周り立ち上がるスタイル。ワークスチームに入った頃は「中須賀さんほど強いブレーキングができないのです」と中須賀スタイルのブレーキングを模索していた。
しかし今は岡本流の“スムーズなコーナリング”を身につけた。それが中須賀の焦りを生む。中須賀も今までと同じコーナリングでは勝てない、と感じていた。そして今、岡本流のコーナリングスタイルを取り入れようとしている。オートポリス、岡山での転倒はその最中に起きた。「焦りがミスを生み転倒に繋がりました」中須賀から“焦り”と言う単語が出てくるとは思わなかったので驚いた。
“STOP THE YUKI“と言う言葉が出てきそうなほどの勢いに乗る岡本は後半戦で中須賀に追いつき最終戦の第2レース時点では岡本・中須賀共に211ポイント。セーフティカー(SC)が入る荒れたレースでSC明けの一瞬に勝負を仕掛けた中須賀。一発のタイムもアベレージも先をいく岡本に勝つには前に出て抑えるしかない。しかし1コーナーで転倒、その瞬間に岡本のチャンピオンが決まった。中須賀に悔いはない。岡本も仕掛けてくるのはわかっていて防いだ。新世代のチャンピオンの誕生だ。岡本は来季ワールドスーパースポーツに参戦する。全日本から世界へ、を実力で掴んだ。スペインのバレンシアに拠点を構えるそうだ。
もう一人の立役者は水野涼。ドゥカティの世界チャンピオンワークスマシンを日本に持ち込み“黒船来襲”と名打ち国内に殴り込みをかけて来た。その勢いは伊達ではなく本物だった。開幕戦でいきなり2位表彰台。その後も連続表彰台に昇り、鈴鹿8耐ではあと一歩で表彰台という4位入賞。そして後半戦初っ端のもてぎで優勝。最高峰クラスでは史上初の外国車優勝の快挙を達成。最終戦では岡本・中須賀を抑え切り2連勝で締めた。
来シーズン、中須賀を苦しめる存在になることは間違いないだろう。
ロードレース以外の表彰は以下の通り。
全日本モトクロス:IA-1クラスチャンピオン Jay Wilson
全日本トライアル:国際A級スーパークラスチャンピオン:小川友幸
スーパーモト:S1 PRO チャンピオン 小原堅斗
全日本エンデューロ:インターナショナルAクラスチャンピオン 馬場亮太
全日本スノーモービル:SX-Proクラスチャンピオン 郷瞬希
2025年シーズンもライダーたちが織りなす人間ドラマをぜひサーキットの現場で観て欲しいと思う。
Photo & text : Toshiyuki KOMAI