「MFJ MOTO AWARDS 2018」が東京都大手町・日経ホールで開催され、全日本ロードレース、全日本モトクロス、全日本トライアル、全日本スノーモビル、全日本スーパーモト、全日本エンデューロ、各選手権シリーズの各カテゴリー上位3名が表彰された。
日本のモーターサイクルスポーツに情熱をもって取り組みんできた方々の偉大な活躍や功績を讃えた「MFJモーターサイクルの殿堂」を今年度設立した。初代殿堂入りを果たしたのは、1961年世界ロードレース選手権西ドイツグランプリでセンターポールに日の丸を掲げた最初の日本人ライダー:高橋国光氏と、1963年マン島T.T.レースで日本人として最初に優勝した伊藤光夫氏。会場からは惜しみない拍手が送られた。
「モータースポーツが日本の文化として根付くこと」を目的に発足した自由民主党モータースポーツ振興議員連盟が評議して決定した今年の議員連盟会長杯は、前人未到の全日本モトクロス国際A級通算150勝を獲得し最終戦で逆転チャンピオンに輝いた成田亮に贈られた。
JP250インター:チャンピオン:笠井悠太、2位:村瀬健琉、3位:成田彬人
JP250ナショナル:チャンピオン:家根谷大晟、2位:西村硝、3位:横山尚太
全日本ロードレースの表彰
J-GP3クラス チャンピオン:中島元気、2位:岡谷雄太、3位:小室旭
ST600クラス チャンピオン:岡本裕生、2位:小山知良、3位:長尾健吾
J-GP2クラス チャンピオン:岩戸亮介、2位:関口太郎、3位:名越哲平
JSB1000クラス チャンピオン:中須賀克行、2位:高橋巧、3位:渡辺一馬
世界選手権で功績を残した日本人を称える「世界選手権功労賞」に、FIM世界耐久選手権に日本チームとして初めてチャンピオンを獲得した「F.C.C. TSR Honda France」藤井正和総監督、FIM世界トライアル選手権 TRIAL-E CUP 2位の黒山健一が受賞した。
ルーキーオブザイヤー
J-GP3クラス:岡谷雄太
ST600クラス:佐野悠人
J-GP2クラス:名越哲平
JSB1000クラス:水野涼
ベストチーム
J-GP3クラス「Team SRS-Moto」
ST600クラス「51ガレージ チームイワキ」:宗和孝宏代表
J-GP2クラス「Team 髙武 RSC」:柳本眞吾代表
JSB1000クラス「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」:吉川和多留監督
が受賞した。
全日本ロードレース各クラスのチャンピオンに今年の振り返りと来季の抱負を聞いてみた。
11レース中(岡山は決勝レース中止)8勝と圧倒的な強さを見せつけてシリーズチャンピオンを奪回、通算8度目の獲得を達成した中須賀克行。
「今シーズン、点数をつけるとしたら90点かな、と思っています。マイナス10点は鈴鹿8耐を走れなかったことですね。自分が造ってきたマシンで優勝できたことは嬉しいですけどやっぱり走りたかったですね。10点は来年に取っておきます(笑)
自分にはまだまだ伸び代が残っていると思っていますし、100点は自分で言うのではなく周りから“アイツは100点だったよな”と言ってもらえるのが嬉しいですね」
「昨年、チャンピオンと獲れなかったのは、連続チャンピオン、レースに出れば勝つのが当たり前という自分自身に対する甘えがあったのだと思います。そこに隙ができたのかな、と。初めてチャンピオンを獲った年は常に“勝つためにバイクをどうすればいい?”“レースをどう闘う?”と自問自答してもがいていたことを思い出しました。いま一度初心に立ち返り、自分を追い込んでバイク・レースへの向き合い方、トレーニングの仕方を見つめ直した結果が今年の結果に繋がっていると思います。」
「来シーズンも当然チャンピオンを狙っていますし、参戦するレース一戦一戦に“勝ち”にこだわりたいです。そしてレベルの高い走りをファンのみなさまにご覧に入れられるように全力で頑張ります」
中須賀ほどの強さを持つライダーが自分をさらに追いつめた、とは意外であったがそこが“常に勝ちにこだわる”中須賀克行たる所以かもしれない。
2年目の今年、大きく成長したJ-GP2クラスチャンピオン:岩戸亮介。
「悪い印象ですけど開幕戦は忘れられません。作本選手は13番グリッド。自分は2番グリッドだったのにレース途中で作本選手にパスされて“えっ?なんで?”と。そこから手を出せなくなってしまいました。“自分で自分をぶん殴ってやりたい”とコメントしましたがレース直後は悔しさを通り越して茫然自失状態。一生忘れられない悔しさとなりました。チームメイトの作本選手に負けたことで自分に足りないものが明確になりました」
「単純に速さだけではなく、レース中に勝つための組み立てや、日頃からの取り組み方も含めて気持ちの持ちようが足りていなかった、と感じました。自分の中の不安材料を取り除くためにレースに対する向き合い方やトレーニングを改めて継続させた結果、気持ちの中に余裕ができてレース中にどんな状況になっても冷静に対処して前に出られるようになりました。結果が伴うことで “負ける気がしない”という自信が生まれるようになりました」
「来季の動向はまだ決まっていませんが自分の目標はずっとJSB1000クラスに上がり、ものすごく大きな壁である中須賀選手に挑戦することなので、そこを目指して頑張ります」
「自分は福岡県出身で熱くなると中須賀さんのような福岡弁でしゃべるんですよ」と気の優しそうな顔つきからは想像できないほど気が強い岩戸。来シーズン、JSB1000クラスにステップアップできることを祈りたい。
ST600クラスのチャンピオンに輝いた岡本裕生。
「シーズン前に立てた目標は、全戦優勝、コースレコード更新、チャンピオンの三つでした。そのうちひとつは獲得できましたがそれ以外は程遠い結果でした。全戦表彰台に登れましたが全戦優勝からは程遠い結果で、チャンピオンを獲れたことは嬉しく思いますが悔しい思いが強いです」
「SUGOではコースレコードまで1000分の何秒かまで迫り、後続を10秒以上引き離して勝てたことが嬉しかったです。1ポイント差で迎えた最終戦ですが、チャンピオン獲得のことは考えずレースに勝つことだけを考えていました。チャンピオン獲得は目標にしていましたが、獲って当たり前、獲らなくては目標にしている海外では通用しないと思っていました。しかし優勝で締めることができず悔しかったです」
「2年前、自分から宗和さんにお願いしてチームに入れてもらいました。宗和さんは厳しい中にも優しさを持って指導していただいています。初年度2勝を挙げて今年はチャンピオンを獲りに行くぞ、との目標を立て、自分の目標に向かって歩んでいけるための道筋を造ってもらいました。宗和さん、芳賀紀行さんの尽力でイタリア選手権にも2回参戦させてもらいスキルアップすることもできました。宗和さんには感謝の言葉しかありません。今年はチャンピオンという形でチームに恩返しができたかな、と思っています。来年もチームのため、そして自分のために走り、海外で走ると言う目標のために結果を残していきたいと思います」
宗和監督の指導の下、成長を続ける岡本の来季の活躍に期待したい。
激戦のJ-GP3クラスを制した:中島元気。
「自分は昨年全日本ロードレースデビューイヤーで、表彰台に登れることが嬉しかったですが、今シーズンは勝ちにこだわりました。もちろん表彰台の登るのは嬉しいですが勝てない2位、3位では悔しい思いがありました。特に前半戦、岡谷選手にあと一歩というところで連勝されてしまい”どうして勝てないのだろう?“と考えていました。昨年参戦したアジアタレントカップのライダーの闘争心、貪欲な勝ちへの執着心、それが足りなかったな、と思います。マシンに頼る走りではなく自分のレベルを上げて行く走りを意識した結果速さがついてきたかな、と思っています」
「オートポリスの優勝は本当に嬉しかったです。前半戦の悔しさを晴らせました。小室選手との最終ラップの最終コーナーのバトル、今までの自分だったら競り負けてはじき出されていたと思いますが、“勝ちたい”という闘争心のおかげで競り勝てたのだと思います」
「来年の体制はまだ決まっていませんが、今年チャンピオンを獲得して自分で成長できたかな、と感じられるので、来年はさらに成長して常に勝ちを狙って全力で闘いたいと思います」
2019年シーズンもライダーたちが織りなす人間ドラマをぜひサーキットの現場で観て欲しいと思う。
Photo & text : Toshiyuki KOMAI