2019 MFJ MOTOAWARDS 開催

2019/12/22

「2019 MFJ MOTO AWARD」が東京都大手町・日経ホールで開催され、全日本ロードレース、全日本モトクロス、全日本トライアル、全日本スノーモビル、全日本スーパーモト、全日本エンデューロ、各選手権シリーズの各カテゴリー上位3名が表彰された。

今年の6月、MFJ会長に就任した鈴木哲夫氏。元・株式会社ホンダ・レーシング(HRC)社長として高名な方だ。鈴木会長から今年度の報告と来年度の方針説明があった。

日本のモーターサイクルスポーツの歴史を後世に伝え、輝かしい実績のあった功労者及び選手を讃える「MFJモーターサイクルの殿堂」。第2回となる今年は、本田宗一郎氏と吉村秀雄氏を選出。本田宗一郎氏は1959年日本メーカーとして初めてFIM世界ロードレース選手権マン島TTレースに参戦、1966年には全クラス制覇の偉業を達成。日本のモーターサイクルスポーツを飛躍的に発展させた。村秀雄氏は日本のモーターサイクルスポーツ黎明期からエンジン開発を始めマシンのチューニングに取り組み日本のみならず海外のレースにも参戦。日本におけるレーシングコンストラクターの地位を確立し多くのコンストラクター・チューナを育成した。

顕彰式では本田氏の長女である尾形恵子様と吉村氏の妻である吉村直江様、長男の吉村不二雄様に記念のクリスタルトロフィーと花束が贈呈され、会場からは惜しみない拍手が送られた。

JP250クラス インター チャンピオン:笠井悠太、2位:谷本音虹郎、3位:岡野聖
JP250クラス ナショナル チャンピオン:松岡玲、2位:佐々木將旭、3位:片山千彩都

全日本ロードレースの表彰

J-GP3クラス チャンピオン:長谷川聖、2位:鈴木大空翔、3位:村瀬健琉

ST600クラス チャンピオン:小山知良、2位:南本宗一郎、3位:岡本裕生

J-GP2クラス チャンピオン:名越哲平、2位:榎戸育寛、3位:作本輝介

そして最高峰クラスJSB1000では

チャンピオン:中須賀克行、2位:高橋巧、3位:野左根航汰

ロードレース特別賞として

ルーキーオブザイヤー
J-GP3クラス:村瀬健琉
ST600クラス:荒川晃大
JSB1000クラス:岩戸亮介

ベストチーム
J-GP3クラス「CLUB Y’s」
ST600クラス「T.Pro.Innovation」
J-GP2クラス「Team HARC-PRO.」
JSB1000クラス「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」

が受賞した。

各クラスのチャンピオンに今年の振り返りと来季の抱負を聞いてみた。

2年連続、通算9回のチャンピオンを獲得したJSB1000クラス中須賀克行。今シーズンはホンダワークス:高橋巧が中須賀の前に立ちはだかる。開幕2連勝の後の第2戦鈴鹿でまさかの転倒ノーポイントレース。高橋は鈴鹿から4連勝で中須賀の連覇は難しいと言われた。しかし、後半戦で4連勝を含む5勝を挙げ、最終戦で大逆転でチャンピオンを決めた。

「ホンダが速いのは解っていたのでその上を行くためにセパンの事前テストから良かれと思ってやって来たことが、開幕戦もてぎでは上手く機能して勝つことができました。しかしかなりの接戦だったので厳しいシーズンになるだろうな、と覚悟はしました。第2戦鈴鹿ではホンダ+高橋巧選手のパッケージがべらぼうに速くて驚きました。自分たちがやって来たことを信じて走りましたが予選でも追いつけず、決勝レースでは引き離されまいとしてプッシュした結果転倒してしまいました。

サーキットによって合う・合わないが出ているのは、どこかのバランスが僅かに狂っているのではないか、見落としがあるのではないか、と懸命にマシンのセットアップを詰めていきました。マシン開発には鈴鹿8耐も使いながらマシン開発を進めましたが詰め切れず結果も2位でした。

後半戦の初戦もてぎで勝てて、岡山でもウェットレースで3位でしたがドライでの好感触を得て、バイクのポテンシャルと目指す方向性が間違っていないことを確認できました。オートポリスから新しいパーツが入ってきて上手く機能してコースレコードを更新して2勝を挙げることができました。

最終戦は、(高橋)巧選手、(野佐根)航汰選手、自分、みんなチャンピオンシップがかかっていました。各々がやるべきことをやった中でアクシデントがありましたが、その中で自分が勝てるポジションにいたことがチャンピオン獲得への流れを作るきっかけになったと思います。ですが走りは固くなってしまいました。
オートポリス以降自分は、勝つことしか残されていなかったので、鈴鹿も“やってやるぜ!”と意気込んでサーキット入りしましたが、レース1の途中から失ったものが再び手に入るかもしれない、と思ったら急に走りがガチガチに固くなってしまいました。チャンピオンと獲れば獲るほどその重みがわかってくるので余計に緊張して自分の走りができませんでした。

今年は厳しいシーズンでしたが、例年以上に接戦だったし、レベルも高かったので非常に内容の濃い1年だったと思います。」

今シーズン、高橋巧という強力なライバルの出現により中須賀と高橋の熾烈なバトルが各サーキットで繰り広げられた。「厳しいシーズンだったけど、どうやったら勝てるか、を考えながらマシンの開発、レースを闘えたのでそう言う意味では楽しかった」と中須賀らしいコメントを発した。

J-GP2クラス最後のチャンピオンとなった名越哲平。今シーズン開幕戦の優勝が認められ世界(Moto2)へスポット参戦を果たした。

「今年は全戦全勝を掲げてシーズン入りしました。チャンピオンを獲らなくてはと言うプレッシャーがありましたが獲れるだろうという自信もありました。

開幕戦はポールポジション獲得、自分の思い描いていたレース展開、ペースで走れて優勝という幸先の良いスタートが切れました。

サーキット毎にマシンが合うところ、合わないところが出てくるだろうという予想はしていました。そこを含めて全戦全勝を掲げていたのですが、SUGOと筑波のレース1、岡山を落としてしまい結果的に達成できなかったのは自分の技量がまだまだ足りない、という事だと思います。

今年は3回、世界への挑戦をさせていただきました。初めてのマシン、初めてのコース、海外の猛者たちを前にして納得のいく結果ではありませんでしたが、この時の経験がシーズン後半に活きてきたと思っています。

また、鈴鹿8耐も走る機会を与えていただき、二人で走ることとなりとても厳しかったですけど、あれだけたくさん走り込みましたので改めて鈴鹿というコースを理解することができたと思います。その結果が最終戦鈴鹿でコースレコードを更新することに繋がったのではないか、と思っています。

自分自身と向き合った結果、そして新しい経験からたくさんの発見があり、それがチャンピオンに繋がったのかな、そう言う意味ではすごく良いシーズンでした。」

ST600クラスのチャンピオンに輝いた小山知良。意外なことにチャンピオン獲得は2000年以来19年ぶりだと言う。今シーズンは7戦中4勝、特に後半戦岡山から鈴鹿までは3連勝を飾っている。

「毎年チャンピオン獲得を目指して闘ってきました。ケガやトラブルに泣かされた年もありましたがここまで来るのに19年かかりました。特に昨年はあれだけチャンピオンにこだわって闘ったのに獲れなかった。だったら今年は一戦一戦、勝ちにこだわり、レコードを更新し、圧倒的な速さで勝つことを目標にしました。

開幕戦はトラブルの不発に終わりましたがそこからチームと立て直しを図り、第2戦SUGOで優勝、岡山、オートポリス、鈴鹿と3連勝できました。毎戦、勝つことにこだわった結果がチャンピオンに繋がったと思います。今までは接戦で勝つことが多かったのですがオートポリスでは2位以下に5秒近いギャップを付けて勝てました。まだまだ自分自身成長していると感じています。

勝ちにこだわることは当然リスクも背負います。例え転倒したとしてもそれは攻めた結果だから仕方ない、キチンと原因を突き止めて次戦に活かしてさらに勝ちを狙う。そうやって勝ちを重ねていけば必然的にチャンピオンは付いてくると思います。

今年の岡山、急な雨で苦しいレース展開でしたが、そこで2位でもイイや、3位でもイイや、と思わず絶対に勝つと思って勝負に臨んだことが、結果的にその後のチャンピオンシップに影響を及ぼしました。

来年は2連覇を狙いたいですけど、軽々しく口に出して言えるほど簡単なものではないことは自分が一番良く知っています。

来年も今年同様に、自分自身が成長して、勝ちにこだわり、圧倒的な速さを見せつけて勝つレースをしていきたいと思います。」

一見リスクが高い闘い方だが、長年のレース経験で培ってきた技術、レースの組み立て方、展開の豊富な知見がある小山だからこそできるのだと思う。

激戦のJ-GP3クラスを制した:長谷川聖。シーズン3勝を挙げ最終戦を待たずにオートポリスでチャンピオンを決めた。

「昨年自分はランキング4位だったのですが、上位3人が他のクラスへ移行してしまい、自分が実質一番上に立ったのでチャンピオンは獲らなくてはならない、と言う気持ちでシーズンに入りました。今までとは全然違うモチベーションでした。

その意識の高さが開幕戦優勝という形で現れたと思います。その後も常に上位争いに絡んで2勝を挙げることができました。最終戦鈴鹿はトラブルで全然トップ争いに絡めませんでしたが、前戦のオートポリスでチャンピオンを決めていて良かったです。

今年はチャンピオンシップを考えて走りました。転倒したら獲れるものも獲れなくなってしまうので、順位が下がったとしても下がり幅を減らしていかに多くのポイントを取るか、を考えていました。J-GP3クラスは混戦で誰が勝ってもおかしくない状態で自分は常に上位でポイントを重ねて行けたのがチャンピオンに繋がったと思います。

2位以下に10秒以上の差をつけて全日本ロードレース初優勝できた開幕戦が今年最も印象に残っているレースです。

来年の体制はまだ決まっていませんが、できれば大きな排気量のクラスで走りたいと思っています。」

 

2020年シーズンもライダーたちが織りなす人間ドラマをぜひサーキットの現場で観て欲しいと思う。

Photo & text : Toshiyuki KOMAI