いつもと様子が違う2020年シーズンイン。YAMHA FACTORY RACING TEAMコメント

2020/03/12

 新型コロナウィルス感染が広がる中、毎年恒例のシーズン前合同テストはホンダ系のチームが参加を自粛したため、2チーム:5名という異例のテスト風景となった。ワークス復帰して6シーズン目のYAMHA FACTORY RACING TEAM。絶対王者中須賀克行をエースに若手育成からステップアップして4シーズン目の野左根航汰。ワークス体制を敷くのはこのチームだけになってしまったが、やはりメーカーが総力を集結するチームは必要だと思う。中須賀と野佐根に開幕前の状況について聞いてみた。

昨年前人未到の10度目のシリーズチャンピオンを獲得した中須賀に先ずはマシンについて聞いてみた。
昨シーズンからマシンに変更はありますか?

「基本パッケージは昨年と同じです。EURO5の排ガス規制をクリアするために吸気系に対策を施しています。それがJSB仕様のマシンにどう作用するかはこれから見極めが必要です。外装パーツの変更で空力が向上しています。あとは電子スロットルに変わりました。電子スロットルはワイヤレスのためアクセレーションのフィーリングが若干違うので細かく詰めているところです。」

昨年、セパンテストで改良を加えたことが結果的にサーキットによって合う・合わないが生じるマシンとなってしまいましたが、今年のセパンからここまでの流れではいかがでしょうか。

「そのような状況にならないように昨シーズン後半から開発を進めてきました。ベースマシンは変わらないのでさらにレベルアップすべくリアアームやフロントフォークなど大きなパーツもヤマハさんに造ってもらい、確実に進化していると思います。先日のセパンでも感触が良く、セパンで決めたパーツでここ鈴鹿を走りましたがフィーリングはすごく良いです。ですので昨年の開幕戦よりは戦闘力の上がったYZF-R1を魅せられると思います。」

今日は確認がメインなのでタイムは二の次だと思いますが、今年はこのマシンでどのくらいのタイムを狙いますか?

「もちろん狙うのはコースレコードです。そう簡単なことではないことはわかっていますが、目標は高く設定してそこに向けて自分たちができることをしっかりと準備をすることが大切だと思っています。」

今シーズンの抱負をお願いします。

「ディフェンディングチャンピオンとして、という意識はありません。今年も全日本ロードレースのシリーズチャンピオンを狙う一人のライダーとして毎戦毎戦勝利を目指し、結果的にチャンピオンを獲れれば良いと思います。その高い目標に向けてしっかりと準備を行っていきたいと思います」

「準備をする」中須賀が常に発する言葉である。中須賀は人一倍「勝つこと」にこだわる。そのために何をすれば良いのかを常に考えている。「準備をする」、一見どうとでもない言葉に聞こえるがそのために中須賀が見えないところで自らを追い込む厳しいトレーニングを行い自らを鍛え上げる。「(メーカーに)厳しいマシン開発をお願いする以上、自分もさらに上に行かないといけない」と言う。中須賀のここまでストイックなレースに対する姿勢がシリーズチャンピオンを産み出す基となっているのだと思う。

続いて野左根航汰。昨年の後半戦は若手ライダーの活躍が話題となった。その中心ライダーの一人が野佐根だ。ワークス4年目の今年、野佐根の真価が問われる。

今シーズン最初の国内テストを走った印象はいかがでしょうか?

「今年コース改修でデグナーの路面が少し変わったのでそこの攻め方を習得するのに少し時間がかかってしまいましたがテストとしては順調に進めたかな、と思います。方向性が違うバイクを2台持ち込んでしっかりと乗り比べて確認ができたことが大きかったです。まだどちらで行くかは決め切れていませんが次回のテストで決めたいと思います。」

昨シーズン後半からグンと頭角を出してきた印象が強いのですが自分の中で変化があったのでしょうか?

「昨年8月のもてぎ2&4で水野選手とのバトルで結果的に負けてしまったことがとても悔しくて悔しくて仕方なかったです。それで自然と意識が変わったと思います。そこから後半戦は調子が上向いたと思っています。」

今、水野涼、野左根航汰に代表されるヤングライダー達の成長が注目されています。そのような状況下で走っている本人としてはどのような気持ちですか?

「自分は今まで一番年下のライダーだったのですが、“あぁ、もう自分は追いかけられる立場になったんだ”と思う面もありますが、でもまだ自分は“追いかける立場”でもっともっと成長していきたいと思います。

特に水野選手とは年齢が近いこともあり、絶対に負けたくない相手、ですね。でも、水野選手のようなライバルがいることで自分の意識も変わりますし成長できます。」

ワークス4シーズン目。考えるところはありますか?

「中須賀選手の背中をずっと追いかけてきました。やはり相変わらず大きな山です。レース本番がとにかく強い。組み立て方然り、走り方然り、自分の方が持ちタイムが速いときでも結局は中須賀選手が勝ってしまいます。中須賀選手からは学ぶことばかりです。ですが今年は中須賀選手に勝ちたい、ではなく勝たなくてはいけない、と思っています。」

今シーズンの抱負をお願いします。

「昨年はもっと上を狙っていたのですがシリーズランキング3位で終わってしまいました。今年はランキング2位ではなくチャンピオン獲得を目指さなければダメだと思っています。シーズン4年目はそう言う年だと思っています。チャンピオンは獲れちゃった、で手に入るものではないので、そこまで強い覚悟を以て臨まなければ獲れないと思います。」

photo & text :Toshiyuki  KOMAI