2024年全日本ロードレースが三重県の鈴鹿サーキットで開幕した。今シーズンは開幕前から話題が豊富だ。先日お伝えしたDUCATI Team KAGAYAMAがワールドスーパーバイク2023年チャンピオン:アルバロ・バウティスタのワークスマシンを持ち込んで水野涼が乗り込む。長島哲太はレースタイヤ開発のためにダンロップワークスとして参戦。デフェンディングチャンピオン:中須賀克行は13度目の最高峰チャンピオンを目指して着々と準備を進める。チームメイトの岡本裕生も確実に力をつけて中須賀と真っ向勝負できるようになった。高橋巧は4年ぶりにJSB1000クラスに復帰。ヨシムラが渥美心を起用して開幕戦にスポット参戦、渡辺一樹もTOHO Racingからスポット参戦など、話題に溢れている。
金曜日はART合同走行として40分間の走行枠が4本開催された。1本目は朝9時にスタート。路面温度9度(手元観測)と言う低さに様子見をするライダーも多かった。日向にいれば暖かさを感じるが例年より1ヶ月早い3月開催はまだまだ寒い。
総合トップは長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)2’05.626。真冬のような寒さの中、ただ一人5秒台に入れてきた。
近年の全日本ロードレースはブリヂストンタイヤが圧倒的なシェアを占め、ダンロップタイヤは劣勢を強いられてきた。そんな中、長島のトップタイムは周囲を驚かせた。Qタイヤ(予選用の数周しか保たないハイグリップタイヤ)投入かと思われたが「確かに柔らかいですが数週しか保たない本気のQタイヤではありません。今週はそこまでのタイヤは不要ですし、一発のタイムを出すより決勝で良い成績を残すことの方が大切ですのでそちらに集中しています」
ブリヂストンとの差を埋めるために今シーズンからタイヤ開発を担う。タイヤメーカーが用意したタイヤをテストするのではなく長島が「ここをこうしたい」と要望を出し、それに応える。長島主導で開発が進められているようだ。
長島哲太:「ダンロップのポテンシャルを少し見せられたかな」
「実はJSBクラスは初体験です。マシンも先週のテストがシェイクダウンのブランニューです。ですが自分のことをよく知っている藤沢さんがチームにいてくれるので短時間でここまで詰められたと思います。
このプロジェクト(長島のタイヤ開発)を聞い時に「ダンロップじゃ無理だろ」と多くの人が思ったとも思います。ですがウィーク2日目にトップタイムをマークするポテンシャルは見せられたかなと思います。」
総合2番手は水野涼(DUCATI Team KAGAYAMA)2’06”072。「黒船来襲」と話題騒然のドゥカティワークスマシンを引っ提げての参戦。十分な準備時間が無くバタバタの中での開幕。先週のテストがシェイクダウンだった。そこで、加賀山、エンジニア、水野、それぞれが描いていたイメージが別の方向を向いていたのが分かった。それが金曜日の午後に「これでいけるかも」と言う方向性が見つかったと言う。そこで出たタイムが5秒台も見える6秒。
イタリアのワークスマシンを日本に持ち込んでいるのでパーツが国内には無い。だから絶対に転倒はできない。「転倒したらレースに出られないのです」と言う。転倒しないマージンを持って乗っている。「もちろん攻めていますよ。でもどこかに転倒しないだけのマージンは持っています」
水野涼:「上出来な滑り出しかなと思います」
「先週のテストはシェイクダウンなりのセットアップでしたが、今週はレースに向けてのセットアップを進めています。セットアップのイメージを共有してまとめるのに時間がかかってしまいましたが、その分まとまると良い方向へ向かいます。転倒できないマージンを持った中でのこのタイムは上出来の滑り出しだと思います」
3番手は岡本裕生(YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2)2’06.471:「タイムアタックができませんでした」
「新品タイヤを入れてアタックしようと出ていった周に赤旗が出てしまい、一度熱を入れたタイヤが冷えてしまいタイヤの美味しいところ使えずタイムアタックができませんでした。そんな状態の中で3番手なのでネガな部分はありません」
明日土曜日は今日よりもさらに寒く、風が強くなる予報。そんなコンディションは各ライダーを苦しめるだろう。転倒だけはせずに無事に決勝レースに臨んでほしい。
1:#30 長島 哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI 2’05.626
2:#3 水野 涼 DUCATI Team KAGAYAMA 2’06.072
3:#2 岡本 裕生 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2 2’06.471
4:#1 中須賀 克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2’06.513
5:#13 渥美 心 YOSHIMURA SERT Motul 2’06.673
6:#35 渡辺 一樹 TOHO Racing 2’07.051
7:#33 高橋 巧 日本郵便Honda Dream TP 2’07.389
8:#20 日浦 大治朗 Honda Dream RT桜井ホンダ 2’07.389
9:#5 亀井 雄大 Honda Suzuka Racing Team 2’07.429
10:#6 津田 拓也 AutoRace Ube Racing Team 2’07.572
Photo & text: Toshiyuki KOMA