岡本裕生がコースレコードを更新してポールポジション獲得。1’25.310。前日にマークした25秒450を上回り公式記録としてレコードブレイクした。
「路面コンディションは思ったほど悪くなかったのですが風が強くて走行に影響が出ました。24秒台に入れられる感覚はあったのですが」と相変わらず好調をキープ、一発のタイムもアベレージタイムも速い。
2番グリッドは水野涼(DUCATI Team KAGAYAMA)1’25.857。自己ベストをマーク。3番グリッドに中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)1’25.858。水野との差は1000分の1秒。4番グリッドは野左根航汰(Astemo Honda Dream SI Racing)1’25.916、野左根も25秒台に入れてきた。
当日の午後22周の決勝レース1が開催された。
「岡本を先行させてはいけない」誰もがそう考えていた。あの中須賀に「このままでは裕生の一人旅が見えている」と言わしめたほどの速さだ。一方岡本は序盤から抜け出して逃げ切りたい。それぞれの思惑が入り混じる中決勝レース1がスタート。
ホールショットは岡本。水野と続いて1コーナーに進入する。と、そこへ野左根が来た!岡本と水野のインを突いてトップで2コーナーを立ち上がる。中須賀は4番手、そこへ長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)が4コーナーでインに飛び込み中須賀をパスした。
オープニングラップは野左根が制し、岡本、水野、中須賀、長島、伊藤和輝(Honda Dream RT桜井ホンダ)、津田拓也(AutoRace Ube Racing Team)、岩田悟(Team ATJ)、名越哲平(SDG Honda Racing)、高橋巧(日本郵便Honda Dream TP)の上位10台。
2周目の最終シケインで中須賀が岡本をかわして3番手、そして3周目のホームストレートではドゥカティの凄まじい速さで水野が野左根をあっと言う間にパス、トップを奪う。開幕戦からそのポテンシャルの高さを見せてきたドゥカティの水野が牽引する。7周目の馬の背コーナーで岡本が野左根をパス2番手に上がる。そして9周目の馬の背、ここでやっと水野をパスしてトップに立つ。
ここまでのラップタイムは1分26秒台後半。岡本の持ちタイムは26秒台前半から25秒後半。もっとペースを上げられるはず。だがスタートで抜け出せず水野たちに先行させてしまい、言わば蓋をされてしまった。「ホールショットを取れず先行を許してしまった自分のミスです。またトップに立ってからも逃げ切れるだけの速さを出せませんでした」
それは水野たちからすると作戦成功である。岡本の速さを封じ込めて接近戦に持ち込んだ。野左根は徐々に27秒台後半のラップタイムにペースダウン。3番手との差が開き始める。「引っ掻き回すつもりでした。序盤のペースは良いのですが、まだレース勝つイメージができていません」と、後半ドロップするのは織り込み済みで序盤に飛び出した。これが岡本の序盤に影響を与えた。
そして11周目、再び水野がトップに立つ。岡本はハイポイントコーナーでアウトから仕掛けるがストレートが速い水野に馬の背で抜き返される。そこへ中須賀が110Rで岡本のインを突く。これで岡本は3番手にドロップ。
今度は中須賀がトップ水野に襲いかかる。そして16周目の110R、水野のインに飛び込みシケイン手前でトップに立つ。すると一気に水野との差を広げる。17周目の馬の背で岡本が水野をパス、ヤマハファクトリーのワン・ツー体制となる。
水野もペースが思うように上がらなくなっていた。「金曜日のフリー走行で感じた事前テストと違うフィーリングから抜け出せずレース中盤から後半にかけてペースを上げることができませんでした。事前テストではロングランができずこのレース1で初めて長距離を走りました」
岡本が中須賀の背後にピタリと付ける。ラップタイムはコンマ何秒か岡本の方が速いのだが中須賀が巧みにブロック。また緩急つけたペースで岡本のリズムを狂わせ、前に出させない。さらに残り2周のヘアピンで岡本が痛恨のブレーキングミス、これで勝負がついた。そのまま中須賀がトップチェッカー!開幕3連勝を飾る。
「蓋を開けてみたらみんな”裕生を前に出させない”と言う同じ作戦だったのが幸いでした。冷静に今の自分の状況を分析して100%の力を出し切ることに集中しました。トップに立ってからも裕生はいつでも抜けるタイムだったと思うけどブロックラインで締めたりブレーキングを遅らせたり工夫して走りました。この一勝は今シーズンの中で大きな意味を持つと思います。明日のレース2もみんな同じ作戦だと思いますが、自分が先頭でレースメイクしたいですね。これだけ接近していると転倒のリスクも高いので」
一発もアベレージも速い岡本に対して中須賀が一枚上手の強さを見せたレースであった。
岡本は悔しい2位。しかしファイナルラップにファステストラップを刻んで意地を見せた。
「完全にみんなの作戦に巻き込まれてしまいました。もう少し速いペースで進むと思っていました。自分には持ちタイムがあったのに序盤にみんながガンガン行った時に様子を見てしまいました。トップに立った時も一気に引き離すペースを作れず、最後にミスをして差が開いてしまいました。明日もみんな今日と同じ作戦でくると思いますので、同じミスをしないようにしっかりと対応して勝ちたいと思います」と本当に悔しそうであった。
いつもは「決勝の周回数長いな」と思うのだが今日は「もう終わり?」と感じたそうである。ファイナルラップにファステストをマークするくらいの速さを温存していた。まだまだ力は残っていたと言うことだろう。
水野も悔しい3位。「中須賀さんと同じく岡本選手を前に出させない展開を考えていました。途中までトップを走れただけにもうちょっと粘りたかったですし、抜かれた後についていけなかったことが今後の課題です。ですが予選でのタイム差(コンマ5秒)を考えると中盤から終盤までトップで後続を抑えられたことはポジティブに捉えています。ここSUGOでコンマ5秒違うと絶望的な差になりますので」
明日も今日と同じ作戦で来るだろう、そして岡本も易々と作戦に乗ることはなく対策をしてくるだろう。圧倒的なタイムを持つ岡本と他のライダーとのバトルはどんな結果になるのだろうか。
全日本ロードレース第3戦SSUGO 決勝レース1 上位10位の結果は以下の通り
1:#1 中須賀克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
2:#2 岡本 裕生 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2
3:#3 水野涼 DUCATI Team KAGAYAMA
4:#32 野左根航汰 Astemo Honda Dream SI Racing
5:#9 伊藤和輝 Honda Dream RT桜井ホンダ
6:#4 名越哲平 SDG Honda Racing
7:#33 高橋 巧 日本郵便Honda Dream TP
8:#10 岩田悟 Team ATJ
9:#6 津田拓也 AutoRace Ube Racing Team
10:#30 長島哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI
Photo & text:Toshiyuki KOMAI