芳賀選手の真骨頂は本番での強さ
1スティント走行を告げられた芳賀選手、最初は「ふざけんな!」と思ったがそこは加賀山選手との長い付き合いの仲、加賀山選手の考えを理解すると納得したそうである。世界広しと言えども芳賀選手を第3ライダー扱いできるのは加賀山選手の他にいないだろう。
レース後芳賀選手に本当はどうだったの?と聞いてみたところ「最初はアタマに来たけど(笑)、本当はドキドキだった。昨年の鈴鹿8耐以来走っていないし、2分10秒の壁が破れず、ずっと11秒台だったから、正直なところプレッシャーが凄かった。」とのこと。しかし、いざ決勝レースを走ってみればキッチリ2分10秒台で走行する、これが芳賀選手の真骨頂ではないだろうか。
「実際、紀行の技術は俺よりも1枚も2枚も上手!練習走行が少なく、慣れないマシンでもレースになれば速く走るのはわかっていた。8耐は走行時間が短く、時間を3等分すると時間が少な過ぎて皆が力を発揮出来なくなる。練習量を極端に少なくする役を紀行にした。奴の能力はオレが一番知ってるからね!紀行にしか出来ない仕事だよ!」と加賀山選手。絶大なる信頼を置いているのがうかがえる。
鈴鹿8耐を若手ライダーの世界への登竜門に、そして日本の二輪レースに盛り上がって欲しい
ドミニク選手の速さを確信した加賀山選手は、ドミニク選手が3スティント、加賀山選手が2~3スティントずつ、芳賀選手を1~2スティントとする戦略を決勝前夜に決めた。遙々ミラノから駆けつけた芳賀選手のスティントを削ってまでドミニク選手の走りを増やす。期待通り、ドミニク選手のラップアベレージは高かった。改めてその作戦の理由を尋ねると
「”世界で闘っている選手(ドミニク選手)はこんなに速いんだ”と言うことを日本のお客様に魅せたかった。日本の若いライダーの刺激にしたかった」からだと言う。そして「鈴鹿8耐で活躍をした若手ライダーがMotoGPをはじめとする世界で注目されて活躍すれば若手ライダーにとって8耐が登竜門となるだろう。そして再びMotoGPライダーが8耐を走るようになってもっと盛り上がるのではないか」と応えた。
それもこれも、芳賀紀行選手に絶大なる信頼を置いているからこそ出来たことだと思う。そして、芳賀選手と加賀山選手の関係性がなければできなかったことである。「オレ以外のライダーがノリユキを第3ライダー扱いにしたらヤツはぶん殴ってるだろう(笑)」と加賀山選手。
加賀山選手は自身の勝利を勝ち取るために闘うのはもちろんのことだが、常に日本のレース界が盛り上がることを願い、そのために自分のできることを実践している。だからこそ加賀山選手の廻りには多くの賛同者、協賛者が集まってくるのではないだろうか。
来年の鈴鹿8耐でTeam KAGAYAMAはどんな花火を打ち上げてくれるのだろうか。今から楽しみである。
photo & text : koma