「勝って当然」この上ないプレッシャーに苛まれながらの闘い。藤原克昭選手

2014/08/27

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「勝って当然」の重圧

アジアロードレース選手権オートポリス。褐色の肉体、明るい「ノリ」のBEET Kawasaki Racing藤原克昭選手は普段と変わりないように見えた。しかし実際はとてつもなく大きなプレッシャーを感じていた。

遡ること約3週間前の鈴鹿8耐。Kawasakiの13年振り復活は大きな話題となった。柳川明選手、渡辺一樹選手の相棒が誰になるのかが注目される中で発表された藤原克昭選手参戦の正式発表。周囲の期待は大きく膨らみ、同時にそれはプレッシャーとなってライダー達にふりかかる。加えて、普段乗っている600ccマシンと1,000ccの耐久マシンとの違い、スリックタイヤと溝付きタイヤの違い、そしてチェンジペダルの逆チェンジと正チェンジの違い、それらは藤原選手の体力に大きな負担となってのしかかる。迎えた鈴鹿8耐決勝、波乱続きの大荒れなレースを12位完走で締めくくった。

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それからわずか2週間後、藤原選手はオートポリスにいた。ここはKawasakiのホームコース。となれば自ずと「優勝」の二文字が重くのしかかる。そして「勝って当然」と周囲からの評価。この勝って当然、と思われることはライダーにとって重圧である。

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やはりライバル達も速くなってきている

ライバル達も確実に速く進化しており、藤原選手自身もそれを痛感していた。「簡単には勝てない」しかし「ここで2連勝、イヤ、1勝でも上げれば流れは変わる」そう思って臨んだオートポリス。

この週末は天候不順で霧と雨が繰り返しドライ路面になることはなかった。予選日はところどころウェットパッチはあるもののウィーク中、初のドライ路面となった。「雨が降ってくるかもしれない」と読んだ藤原選手は序盤からスパート、リーダーボードのトップに立つ。予想通りここで雨が落ちてくる。しかし、ウェット路面になるほどの降りではなくドライ路面が続く。
セッション中盤、Jakkrit Sawangswat選手がリーダーボードのトップに立つと、予選終了5分を切ったところで藤原選手は渾身のワンアタックを決行、それが見事ポールポジションタイムとなった。

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この週末、ウェットセッションが続き、ドライのセッティングを詰められなかったチームが多い中、BEET Kawasaki Racingはキッチリと決めてくる。ここに藤原選手が絶大なる信頼を寄せているチームのチカラがある。しかし単純に予選結果を喜べなかった。完全ドライとは言えないので比較には多少無理があるが、昨年の藤原選手のポールタムは1分53秒584。今年より2.4秒も速い。予選2番手Jakkrit Sawangswat選手とのギャップはコンマ6秒。やはり簡単には勝たせてもらえそうもない。そう思った。

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プレッシャーに打ち勝って挙げたポール・トゥ・ウィン!

迎えた決勝日、決勝レース1は晴天、完全ドライ路面となった。ホールショットは藤原選手が奪う。序盤から飛ばす藤原選手に小山知良選手、Md Zamri Baba選手が食らいつきトップグループを形成する。そこに予選14番手の伊藤勇樹選手がジャンプアップしてくる。トップは何回か入れ替えられ、緊迫したレース展開が続く。トップグループが8台にも及ぶ混戦。「簡単には勝たせてもらえそうにない」藤原選手の読みは当たった。レース終盤、後ろから様子を伺っていた藤原選手はラスト2周の10周目にスパート、一気にトップを奪い返す。そのままトップチェッカー!ここオートポリスで4年連続のポール・トゥ・ウィンを飾る。レース後の藤原選手は疲れ切っていた。コンマ9秒以内に6台が入る大混戦だった。「ものすごく長い12周だった。ひと時も気を抜ける間がなく体力的にもキツイレースだった」と語った。
しかし、「ホームコースでの勝利を期待され非常にプレッシャーを感じていたが、ここで勝てたことはとても嬉しい」と喜びを表現していた。

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迎えたレース2、さらに上がった路面温度に苦しみながらもトップを行く玉田誠選手を追いかけながらアグレッシブに攻め続けたが混戦から抜け出せず結果は4位。惜しくも表彰台には届かなかった。
やはりライバル達も黙って藤原選手に勝たせるわけにはいかない。

しかし藤原選手は後ろを振り返らない。「1秒前は過去のこと。我々は次(のレースの勝利)に向けて進み出す」という名言が表すとおり、気持ちは既に次戦鈴鹿に切り替えている。日本ラウンド2戦目の鈴鹿は、9月7日(日)に決勝レースが行われる。藤原選手のアグレッシブな走りに注目が集まる。

Photo & text : koma

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