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通算100勝達成したハルク・プロが5年ぶりの「 感謝の夕べ」を開催。2025年参戦体制発表

コロナ禍もあり5年ぶりに「ハルク・プロ 感謝の夕べ」が東京都・ホテルエミシア東京立川で開催され、大勢のお客様が駆けつけた。

2024年、ハルク・プロは通算100勝を達成。さらにST1000クラスの國井勇輝が全日本及びアジアロードレースでダブルタイトル獲得と手応えのあったシーズンであった。

「1985年にチームを立ち上げてから全クラスを通じて今年100勝目を挙げることができました。これもひとえにずっと応援をいただいている皆さまのおかげだと思って本当に感謝しております。ありがとうございます。」と本田重樹会長から会場に集まったお客様に長年のサポートへの感謝の挨拶。

今シーズンは國井の年だったと言っても過言ではないだろう。そしてその活躍が認められて来季は世界の舞台「Moto2」にステップアップする。最近では見られなくなった「国内から世界へ」の道筋を見せてくれた好例である。「全日本ST1000クラスとアジアASB1000クラスで見事(笑)ダブルチャンピオンを獲得することができました。そこに至るまでにはたくさんの方々・スポンサーの皆さまからの支援、チームの手厚いサポートがありました。本当に感謝していいます。ありがとうございました。

そして来シーズンは青山博一監督率いる「IDEMITSU Honda Team Asia」からMoto2クラス参戦が決まりました。この3年間ハルク・プロで学んだことをしっかりと活かして頑張りたいと思いますので引き続き今後とも応援のほど何卒よろしくお願いいたします。」自ら「見事に」と発言した際には会場は爆笑の渦。こんな穏やかな人柄が國井の人気の理由だ。

続いてSDG株式会社 柏木健作 代表取締役社長CEOからのご挨拶。

「5年ぶりの感謝の夕べにて皆さまとご一緒できることを大変嬉しく思います。ハルク・プロ本田重樹会長をはじめご来場の皆さまには大変お世話になりましてありがとうございました。また弊社製品をたくさんの皆さまにもご使用いただきましたこと、この場をお借りして御礼申し上げます。

私が本田重樹会長と初めてお目にかかったのは1990年、そこから26年のお付き合いです。2014年からチームタイトルスポンサーをさせていただき11年目。今年弊社の会社名を昭和電機株式会社からSDG株式会社に変更、チーム名も少しかっこよくなったかなと思います。そのおかげかレースの成績も良く、弊社の売り上げにも良い影響が出ました。

今シーズン入る前に本田会長に國井選手に全日本とアジアのダブルエントリーさせませんか?と打診したところ“それは厳しいです”との回答でした。しかし“なんとかやりましょう!彼をもう一度世界の舞台に戻す、それも我々の使命ですよ”と説得しました。その結果がダブルタイトル、そして来季Moto2参戦に繋がり、とても嬉しく思います。

全日本の空洞化と呼ばれて久しいですが、まだまだ日本から世界に通じる道はあるんだ、と言うことを示せたのではないかと思います。全日本が、レース業界全体がもっと盛り上がって欲しいと祈念すると同時に我々にできるサポートをし続けるつもりです」

バイクレースをスポンサードしているお手本とも言えるSDG株式会社。頻繁なSNS投稿は常に新しい情報を届け、新たなファンを生み出し、リクルート活動にも好影響が出ているとのこと。柏木社長のバイクレースへの並々ならぬ熱い思い入れがあればこそのことだと思う。

さらに柏木社長から國井に金一封贈呈のサプライズ。これには國井も大喜び!

恒例の樽酒の鏡開き、そして本田技研工業株式会社二輪業統括部マーケティング企画部部長市川様の乾杯のご発声で宴会がスタート。

「1990年に1勝目を挙げてか足掛け34年目の今年100勝を達成することができました。これもひとえにみなさまからの熱い応援とサポートがあったからこそだと思います。ありがとうございました。」と本田光太郎社長から御礼のコメント。100勝の立役者であるライダーたちも駆けつけた。

ハルクプロ3勝目を挙げた小野真央。

小野の後に加入した青山博一。「小野さんには高速道路に置いて行かれたり(笑)鍛えられたので全日本チャンピオンを獲れたと思います。その後世界チャンピオンを獲れたのも自分の起点はハルクプロにあると思います」。

100勝中18勝と最多勝利の小西良輝は京都から駆けつけた。

2017年にハルクプロにJSB1000クラスチャンピオンをもたらした高橋巧。「優勝回数ではあまり貢献できませんでしたがチャンピオン獲れたことに自分は満足しています(笑)」

「自分もあまり優勝回数では貢献できませんでしたがこの3年間鈴鹿8耐で走らせていただき、昨年は表彰台に上がることができました。」と浦本修充。

「現役ライダーとして優勝できていないのですが、次の200勝に向けて少しでも貢献したいです」と名越哲平。

「数勝ですけど貢献できて嬉しいです。ハルクプロさんには色々な作法を教えてもらい今も役立っています」と赤ちゃんを抱いて登壇した榎戸育寛。

最後は國井勇輝。「3年目にして初優勝を飾ることができました。そして運良く自分が100勝目を挙げることができて感銘しています」。記念すべき100勝目は國井がハルクプロにプレゼントした。

続いて2025年の参戦体制が発表された。

JSB1000クラスはチーム名が「SDG Team HARC-PRO. Honda」に変わり名越哲平が継続参戦。

「来シーズンも継続参戦できて嬉しく思います。今シーズン学んだこと、悔しかったことをしっかりと来シーズンに結果として残せるようにチーム一丸となって優勝を目指して頑張りますので引き続きサポートをよろしくお願いします。」今シーズンのホンダワークスでの経験は今後の名越の糧になるだろう。つい最近結婚、新しい家族も増えて名越の意気込みはさらに上がる。

ST600クラスは2名体制。チーム名は「SDG Team HARC-PRO.」に変更。継続起用の濵田寛太に加え、小田喜阿門が新加入する。

「今シーズンは悔しい思いをたくさんしました。来シーズンに向けてやることはたくさんあるので結果を残せるようにトレーニングしていきます。引き続き応援よろしくお願いします。」と濵田寛太

「ヨーロッパのジュニアGPを走っていたのですが来季のシートが無く悔しい思いをしていたのですがSDG Team HARC-PRO.で走らせてもらえることになりました。國井選手のようにもう一度世界に戻れるように強い走りをしていけるように頑張りますので応援よろしくお願いします。」と小田喜阿門。

JP250クラスには赤間清が継続参戦。

「ハルクプロ在籍33年の赤間と申します。ですが先ほどすっかり忘れられてしまいました(笑)来シーズンは忘れないような走りをするように頑張って参りますので応援のほど何卒よろしくお願いいたします。」参戦発表の際に赤間が呼ばれずこのようなコメントとなった。

そして國井が抜けた後のASB1000クラスには今年のST600チャンピオン:阿部恵斗が新加入する。チーム名は「SDG HARC-PRO. Honda Philippines」

「来年ホンダ車に乗り換えてアジア選手権への新しい挑戦ということで、しっかり気を引き締めて頑張っていこうと思います。國井選手が今年チャンピオンを獲っているので、来年自分が獲れるように頑張ります。引き続き今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。」

ビンゴゲームでは豪華賞品が多数提供され大いに盛り上がったところで本田光太郎社長から中締めの挨拶。「今シーズンも無事にレース活動を終えられたのもひとえにみなさまからのご協力があったからこそだと心より御礼申し上げます。ありがとうございました。来シーズンもこの体制でシリーズチャンピオンを獲得すべく邁進していきますのでご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」

ハルク・プロのますますの活躍に期待がかかる。

Photo & text : Toshiyuki KOMAI

 

MFJ MOTO AWARDS 2024 ランキング表彰式

「2024 MFJ MOTOAWARDS 授賞式」が東京都千代田区・日経ホールで開催された。全日本ロードレース、全日本モトクロス、全日本トライアル、全日本スノーモビル、全日本スーパーモト、全日本エンデューロ、各選手権シリーズの各カテゴリー上位3名が表彰された。

冒頭MFJ会長:鈴木哲夫氏から今年度の報告があった。全日本ロードレースのトピックスとして4年ぶりに新チャンピオンの誕生を挙げた。「岡本裕生選手が新チャンピオンに輝き文部科学大臣杯を授与されました。また、外国車メーカのドゥカティのワークスマシンを駆って参戦した水野涼選手も、シリーズを大きく盛り上げてくれました」と若いライダーの台頭を歓迎していた。

また「環境へのチャレンジとしてモーターサイクルスポーツの国内最高峰クラスJSB1000クラスにハルターマン・カーレスジャパン合同株式会社様の、100%非化石由来の燃料ハルターマンR100を年間で約1万6000リッターほど使用しました。カーボンニュートラル100%の燃料を使用したレースは、グローバルに見てもまだまだ少ない中、安定して使用できたのは、エントラントの皆様、国内外の車両メーカーの皆様、またタイヤメーカーの皆様、そして開催施設の皆様のご理解とご尽力のおかげです」

その他にもモトクロスやトライアルで電動バイク参戦を導入するなど持続可能なモータースポーツに向けた活動を本格化させている。

全日本ロードレースの表彰。

J-GP3クラスのチャンピオンは4年連続の尾野弘樹。ランキング2位:若松怜、3位:木内尚汰。

ST600クラスのチャンピオンは阿部恵斗が2年連続で獲得、来季はアジアロードのAST1000に挑む。ランキング2位:長尾健吾。3位:伊達悠太。

ST1000クラスは5戦中4勝を挙げた國井勇輝がチャンピオン。来季は世界の舞台:Moto2にステップアップ。全日本から世界へ、の新たな道を切り拓いた。ランキング2位:岩戸涼介、3位:羽田太河。

そして最高峰 JSB1000クラスは絶対王者中須賀克行を追い詰めた岡本裕生。中須賀はランキング2位。今年一番の話題をさらった水野涼が3位。

4年ぶりの新チャンピオン岡本の挨拶。「最終戦の最終レースまで同ポイントという非常に白熱したレース展開を見せられたと思っています。その中で自分がチャンピオンを獲得できて来年に繋がるとても良いシーズンでした。自分は来年から世界選手権のワールドスーパースポーツクラスに参戦することになりました。心機一転、全日本の最高峰クラスのチャンピオンとして胸を張って頑張っていきたいと思います」

「2016年から全日本に参戦し続けてきて初めて海外参戦になるので非常に不安な思いと楽しみな思いが半々です。と同時に(日本で走れないのは)非常に寂しい思いもあります。自分が言うのはちょっとおこがましいのですがロードレースと、そして日本のモータースポーツのご支援とご声援のほど、何卒よろしくお願いいたします。」と日本のロードレース発展を祈念したコメント。岡本の成長ぶりを感じた。

岡本はここ数年で本当に速く・強くなった。特に今シーズン後半戦オートポリスから4連勝。一発の速さに加えてアベレージの速さが加わった。さらにスムーズなコーナリング。

中須賀が得意とする“ガツン!とブレーキングして小回りで一気に立ち上がる”スタイルとは違い、ブレーキングこそ中須賀ほど強くないがコーナリングスピードを落とさず滑らかに周り立ち上がるスタイル。ワークスチームに入った頃は「中須賀さんほど強いブレーキングができないのです」と中須賀スタイルのブレーキングを模索していた。

しかし今は岡本流の“スムーズなコーナリング”を身につけた。それが中須賀の焦りを生む。中須賀も今までと同じコーナリングでは勝てない、と感じていた。そして今、岡本流のコーナリングスタイルを取り入れようとしている。オートポリス、岡山での転倒はその最中に起きた。「焦りがミスを生み転倒に繋がりました」中須賀から“焦り”と言う単語が出てくるとは思わなかったので驚いた。

“STOP THE YUKI“と言う言葉が出てきそうなほどの勢いに乗る岡本は後半戦で中須賀に追いつき最終戦の第2レース時点では岡本・中須賀共に211ポイント。セーフティカー(SC)が入る荒れたレースでSC明けの一瞬に勝負を仕掛けた中須賀。一発のタイムもアベレージも先をいく岡本に勝つには前に出て抑えるしかない。しかし1コーナーで転倒、その瞬間に岡本のチャンピオンが決まった。中須賀に悔いはない。岡本も仕掛けてくるのはわかっていて防いだ。新世代のチャンピオンの誕生だ。岡本は来季ワールドスーパースポーツに参戦する。全日本から世界へ、を実力で掴んだ。スペインのバレンシアに拠点を構えるそうだ。

もう一人の立役者は水野涼。ドゥカティの世界チャンピオンワークスマシンを日本に持ち込み“黒船来襲”と名打ち国内に殴り込みをかけて来た。その勢いは伊達ではなく本物だった。開幕戦でいきなり2位表彰台。その後も連続表彰台に昇り、鈴鹿8耐ではあと一歩で表彰台という4位入賞。そして後半戦初っ端のもてぎで優勝。最高峰クラスでは史上初の外国車優勝の快挙を達成。最終戦では岡本・中須賀を抑え切り2連勝で締めた。

来シーズン、中須賀を苦しめる存在になることは間違いないだろう。

ロードレース以外の表彰は以下の通り。

全日本モトクロス:IA-1クラスチャンピオン Jay Wilson

全日本トライアル:国際A級スーパークラスチャンピオン:小川友幸

スーパーモト:S1 PRO チャンピオン 小原堅斗

全日本エンデューロ:インターナショナルAクラスチャンピオン 馬場亮太

全日本スノーモービル:SX-Proクラスチャンピオン 郷瞬希

2025年シーズンもライダーたちが織りなす人間ドラマをぜひサーキットの現場で観て欲しいと思う。

Photo & text : Toshiyuki KOMAI

ヘルメット交換の儀 水野涼×岡本裕生

MFJ MOTOAWARDS 2024 授賞式が開催された。式典後水野涼(DUCATI Team KAGAYAMA)と岡本裕生(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)がお互いのヘルメットを交換する場に立ち会えた。

昨年2023年、水野涼が海外参戦から全日本ロードレースに復帰してから若い二人のバトルは始まり、お互いに意識し始めていた。今年2024年シーズン、水野はドゥカティにスイッチ、世界チャンピオンのワークスマシンを持ち込んで全日本に殴り込みをかけた。対する岡本はヤマハファクトリーの若きエースとして迎え撃つ。

最終戦鈴鹿。水野涼はチャンピオン争いに残っていたが眼中になく、とにかく目の前の1勝に拘って勝負に挑み見事2連勝!岡本は絶対王者:中須賀克行と同ポイントでレース2を迎え、競り勝って逆転でシリーズチャンピオンを決めた。

激闘を終えた後に水野から岡本に「ヘルメット交換しない?」と声をかけた。レース後のバタバタで交換することができず本日交換の儀を執り行った。
サッカーではユニフォームを交換してお互いの健闘を称え合う。この2年間、ライバルとして戦い抜き、リスペクトし合っているからこそのヘルメット交換。スポーツマンシップに溢れる清々しいシーンを見せてもらった。

岡本は来季ワールドスーパースポーツに参戦して日本から離れる。岡本と水野のバトルが見られなくなるのは寂しいが、水野が中須賀に真っ向勝負を挑む姿が見られるだろう。

Photo & text:Toshiyuki KOMAI

有言実行の水野凉、ヤマハワークスに競り勝って今季2勝目! チャンピオン争いは同ポイントで中須賀VS岡本。

 

水野涼(DUCATI Team KAGAYAMA)が今季2勝目を挙げた。しかもヤマハワークスの2台に競り勝った!「今年のレースで一番充実していたし、楽しかったです」。クリーンで激しいバトルは場内を沸かせた。中須賀も岡本も「楽しいバトルでした」と口を揃える。

シリーズタイトル争いは中須賀と岡本が同ポイントで並び、明日のレース2で前でゴールした方に決まる。

ウィークに入ってから「勝つ」とコメントしていた水野。「有言実行」と言う言葉は優勝してから使う、と二人で決めていたので本日タイトルに起用することができた。

午前中に行われた公式予選は2分4秒台のバトルかと思いきや、最後に岡本裕生(YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2)が3秒台に入れるハイレベルなタイム合戦となった。

3周目に岡本がいきなり2’04.738。このウィークで初めて見る4秒台。だが水野が黙っているわけがなく、すぐさま2’04.932と4秒台に入れる。さらに2’04.135までタイムを詰めてトップに立つ。驚いたのが、水野の背後にピタリとつけていた岩田悟(Team ATJ)が4秒台の2’04.513に入れてその時点で2番手に浮上する。引っ張られればタイムが出るわけではない。これは岩田の実力だ。

もがきながらも新しい走りのスタイルにチャレンジしている中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)も4秒台の2’04.768に入れる。

予選終盤、各車最後のアタック。ニュータイヤで出て行った野左根航汰(Astemo Honda Dream SI Racing)が2’04.186をマーク。そして終盤、岡本が驚きのタイムを叩き出す。2’03.856。これには場内騒然。岡本がポールポジションを獲得。

2番グリッド:水野、3番グリッド:野左根、4番グリッド:岩田、5番グリッド:中須賀の上位5台。

上位5台までが2分4秒台というハイレベルなタイム合戦であった。

迎えたレース1。ホールショットは岡本が奪い、野左根、岩田、中須賀の順に第1コーナーに侵入する。2コーナー立ち上がりで中須賀が岩田をパス、4番手に浮上する。シケイン進入で野左根が岡本のインを突いてトップに浮上してオープニングラップを制するが、ホームストレートで岡本がトップを奪い返す。

以下、水野、中須賀、岩田、渥美心(Yoshimura SERT Motul)、長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)、高橋巧(日本郵便Honda Dream TP)、名越哲平(SDG Honda Racing)、伊藤和樹(Honda Dream RT桜井ホンダ)の上位10台

岡本、野左根、水野、中須賀、岩田までの5台がトップグループを形成し、渥美・長島・高橋・名越のセカンドグループとの差を広げ始める。2周目のシケインで野左根のインを突いて岡本がトップを奪い返す。さらにホームストレートで水野が野左根をパスして2番手に浮上する。しかしここで中須賀が来る。2コーナーで野左根を料理するとその先のS字で水野を捉えて2番手に浮上!ヤマハのワン・ツーとなる。この時中須賀はなんと2’04.998と4秒台に入れていた。「(岡本)裕生との差が開いていたのでプッシュしただけです」と飄々としている。

このプッシュで岡本と1秒近く開いていた差を縮めて5周目にはアウトから仕掛けられるほど接近、テール・トゥ・ノーズのバトルとなる。そして6周目の1コーナーで岡本をパスしてトップに浮上する!

3番手水野、4番手野左根もこの2台から離されずに付いていく。「自分には持ちタイムがあるので3番手に落ちても焦りはありませんでした」と水野は落ち着いてレース展開を見守る。5番手の岩田が遅れ始めトップグループはこの4台となる。この4台のラップタイムペースは2分5秒台中盤から後半と信じられないペースで走行を続ける。昨年のレース1のファステストラップが2’05.968、今年は2’04.998と1秒も速い。当然アベレージタイムも1秒近く速くなっている。今年全日本のレベルが上がっている、と言われているがここにもその一端が見える。

6周目のバックストレート、岡本がトップを奪い返す。しかし8周目のホームストレートで中須賀が再び前に出る。チャンピオン争いをしている二人の抜きつ抜かれつのバトル。「中須賀さんは最終コーナーの立ち上がり加速が速いのでホームストレートで抜かれます」と岡本が言えば、「自分の課題はスプーン二つ目。ここが上手く曲がれずスピードに乗れないのでバックストレートで裕生に抜かれます」と中須賀。お互い速いところ・遅いところが違い、自分の得意とするところで勝負を仕掛ける。その言葉通り8周目のバックストレートで岡本が再びパスする。やはり岡本はスプーン立ち上がりの加速が速い。9周目の1コーナーで岡本がわずかに膨らんだ隙を突いて中須賀が再びトップ浮上。

岡本の方がアベレージが速いことを知っている中須賀は積極的に前に出て自分のペースに持ち込もうと考えている。しかし岡本はそうはさせない。この二人のガチバトルは見応えがある。今度は岡本が得意とするバックストレートで中須賀を処理すると再度トップに浮上する。

中須賀は決勝レースを使って自分の走り方を変えるチャレンジを行なっていた。「テストではなく本番でトライして成功するのが一番身につきます。このレース1ではかなり手応えがありました。“強いブレーキング”から“まっすぐに向きを変えて一気に加速する”のが自分の持ち味でここまで勝ってきましたが、それではタイムが出ないし勝てない、と最近痛感しています。だからスムーズなブレーキングからコーナリングスピードを上げて曲がることにトライしています」長年身体に染み付いてきたものを変えるのは容易ではない。だがそれを身につけた時中須賀はさらなる飛躍を遂げるだろう。

岡本は予選で2分3秒のスーパーラップを叩き出した後にセットを変えていた。

「自分のベストラップ2分5秒2でラップできれば前に出て後続を突き放せたと思うのですが、路面コンディションの変化(ST1000の後のラバー)を見越して予選の後にセットを変えました。それが上手くハマらなかった点は明日に向けての課題です」

岡本・中須賀の後方で様子を見ていた水野が動き出す。「自分には持ちタイムとトップスピードの速さでアドバンテージがあるので焦りはありませんでした。さらにタイヤをハード目の方向性をチョイスしたのでレース後半でもタイヤがタレない自信がありました」

「前半のラップタイムが2分5秒中盤でした。それはこのタイヤで想定していたタイムだったので、前に出て5秒前半まで持っていくのはリスキーでした。だから前に出るタイミングだけを考えていました。」

ここだ、と決めた11周目のホームストレート、中須賀のインを突いて2番手に浮上する。さらにストレートの速さを武器にスプーン立ち上がりで加速に乗せるとあっという間に岡本をパス、トップに浮上する!

「自分がチョイスしたタイヤはスプーンの立ち上がりが速いのでその分加速が乗ります。後半タレないこととスプーン立ち上がりの速さがこのタイヤを選んだ理由です」

ここから三つ巴のバトルが始まる。水野・岡本・中須賀は団子状態で各コーナーを回っていく。12周目のNIPPOコーナー、わずかに膨らんだ水野のインを突いてトップに浮上する。だが水野には最終セクションの速さがある。その通りスプーン立ち上がりで岡本の背後に付けるとバックストレートで一気にパス。トップを奪い返す。中須賀は3番手。

そして迎えたファイナルラップ、水野・岡本・中須賀の順に1コーナーに進入。逆バンクで中須賀が岡本のインに鼻先を入れるが岡本は抑える。しかしNIPPOコーナー上りでわずかに膨らむとそれを逃さない中須賀がすり抜けて2番手に浮上、水野を追う。

「ここで来るか?」と言うスプーン進入で水野を刺した中須賀、トップで鬼門のスプーン出口に向かう。やはり水野が来る。中須賀の背後にピタリと付けると一気に加速、3ワイドでバックストレートから130Rに向かう。岡本がアウト側に振って中須賀をパス、水野・岡本・中須賀の順にシケインへ進入するが、岡本が外に膨らみ中須賀と交錯、ほぼ同時に最終コーナーを駆け降りる。

水野がトップチェッカー!8月のもてぎ以来今季2勝目を挙げる。2位は抑え切った岡本、3位に中須賀。

これで中須賀211ポイント、岡本211ポイント。なんと同ポイントで明日のレース2を迎える。どちらか前でゴールした方がシリーズチャンピオン。こんな熾烈なタイトル争いはJSBクラスでは初ではないだろうか。

明日は雨が降るのか降らないのか、、、できればドライで最後のレースを迎えたい。

全日本ロードレース第8戦鈴鹿 決勝レース1 上位10位の結果は以下の通り

1:#3 水野 涼 DUCATI Team KAGAYAMA
2:#2 岡本 裕生 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2
3:#1 中須賀 克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
4:#32 野左根 航汰 Astemo HondaDream SI Racing
5:#10 岩田 悟 Team ATJ
6:#33 高橋 巧 JAPAN POST HondaDream TP
7:#9 伊藤 和輝 Honda Dream RT SAKURAI HONDA
8:#13 渥美 心 YOSHIMURA SERT MOTUL
9:#4 名越 哲平 SDG Honda Racing
10:#20 日浦 大治朗 Honda Dream RT SAKURAI HONDA

Photo & text:Toshiyuki KOMAI

絶好調の水野涼、ただひとり4秒台に入れた!ART合同走行

水野涼が絶好調だ。金曜日に行われたART合同走行でただひとり2分4秒台に入れる2’04.856をマークした。昨日の走行で”2分4秒台も行けるかも“と感じていたのが現実となった。

水野涼:「一発もアベレージも刻めているので自信を持って明日の予選と決勝に臨めます」

「昨日に比べてコンディションが良くなったことも要因のひとつですが、このウィークは調子良く走れています。1本目の走行を終えてこれならいける、と確信したので2本目に新品タイヤを入れたら4秒台に入りました。アベレージも5秒後半で走れていたので、自信を持ってこの二日間を終えられたかなと思います。」

「今回ハード方向のタイヤを選択したのですがそのタイヤで4秒台をマークできたことが非常にポジティブに捉えています。明日からはコンディションが悪くなる予報です。ソフト方向のタイヤに切り替えたとしてもハードで出せた実績と自信を持てたので明日の予選とレース1をしっかりと戦えると思います」

リラックスしたムードに自信を備えた水野。「自分はチャンピオン争いは無いと思っているので気負いもありません」とのびのびとウィークを過ごしているように見える。

総合2番手は岡本裕生。2’05.009、4秒台まで1,000分の9秒。だが岡本は焦っていない。ロングランを実施している中でこのタイムをマークした。しかも2回ミスしたコーナーがあったそうだ。

岡本裕生:「勝って鈴鹿の苦手意識を克服したいです」

「既に去年の予選タイムを超えていますし、ロングの最中に出したタイムなので調子は悪く無いと思っています。昨日・今日の4本の走行時間でセットを進められたので、あとは予選を使って決勝を見据えたセッティングを決めて自分のコンディションを整えるだけかな、と思っています」

「鈴鹿は相変わらず苦手です。今日はレースディスタンスと同じ15周を走りましたが他のサーキットに比べて疲れますね。ですが自分は鈴鹿8耐を走っていない分、鈴鹿を楽しめていると思います。まだ鈴鹿で勝った経験がないので最終戦で勝てれば苦手意識が克服できるでしょうね」

オートポリスから流れは岡本に来ている。その勢いに乗って鈴鹿初優勝を飾れるか、注目される。

3番手は野左根航汰:2’05.427。

野左根航汰:「ここが正念場だと思っています」

「2本目のタイムは想定通りでした。一発のタイムは出せたのですがレースのアベレージタイムが足りていません。そこが今年の課題です。明日の予選はもちろん一発は狙いますが、レースでもしっかりと粘れるような対策も講じて行きたいと思います」

「岡山は自分のライディングスタイルにマッチしていたのですが鈴鹿はやはり難しいですね。この二日間いろいろ考えながら走っていたのですがここが正念場だと思っています。日曜日のコンディションが微妙ですが、もしかすると自分にとってチャンスに変わるかもしれない。そんな時にしっかりとモノにするのもライダーの仕事ですのでしっかりと準備したいと思います」

4番手は中須賀克行、2’06.356。前人未到の記録を持つ絶対王者だが、さらに上のステージ上がろうともがいている。

中須賀克行:「イメージと走りがリンクできずタイムが伸びません」

「今、バイクの走らせ方を変えようとしています。イメージはできているのですが考えながら走っているのでどうしてもワンテンポ遅れてしまうのです。だからリズムが合わず上手く乗れていません。考えなくても身体が動くようになればリズムを取り戻せるのですが。でも、その走らせ方がだんだん見えてきました」

「同じパッケージのマシンで(岡本)裕生がコースレコードを更新しているのに自分のタイムが伸びないのは今までの走り方にある。だから新しい走り方をマスターする必要があるのです。それをクリアできれば次のステップに進むことができます」

岡本裕生の成長、水野涼の躍進など、中須賀を取り巻く環境は変わり追い詰められるようになってきた。だがそこで負けないのが中須賀だ。さらに上のステージに登ろうとしている。新しい走りをマスターしてシリーズチャンピオンを獲得できるか、明日・明後日の決勝が注目される。

明日の決勝・レース1、天候が気になるところだがなんとかドライでレースをしてほしい。

全日本ロードレース第8戦鈴鹿 ART合同走行 上位10位の結果は以下の通り

1:#3 水野 涼 DUCATI Team KAGAYAMA 2’04.856
2:#2 岡本 裕生 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2 2’05.009
3:#32 野左根 航汰 Astemo HondaDream SI Racing 2’05.427
4:#1 中須賀 克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2’06.356
5:#4 名越 哲平 SDG Honda Racing 2’06.437
6:#10 岩田 悟 Team ATJ 2’06.526
7:#13 渥美 心 YOSHIMURA SERT MOTUL 2’06.560
8:#6 津田 拓也 AutoRace Ube Racing Team 2’06.744
9:#33 高橋 巧 JAPAN POST HondaDream TP 2’06.921
10:#9 伊藤 和輝 Honda Dream RT SAKURAI HONDA 2’06.952

Photo & text:Toshiyuki KOMAI

史上初!外国大使館公邸でDUCATI Team KAGAYAMA参戦体制発表会

前代未聞のニュースで我々の度肝を抜いてくれる加賀山就臣がまたやってくれた。恐らく国内では初、外国大使館公邸:イタリア大使館で参戦発表会を開いた。しかも、マシンは2023年ワールドスーパーバイク(WSBK)世界チャンピオン:アルバロ・バウティスタのDUCATI パニガーレVR4、そう、正真正銘のワークスマシンである。ライダーは水野涼。チーム名はDUCATI Team KAGAYAMA。全日本ロードレースと鈴鹿8耐を戦うと発表した。

パオロ・チャバッティ氏へ想いを伝える

自身のレースデビューから33年間ずっとスズキ一筋で戦ってきた加賀山だが意を決してDUCATIを選んだ。理由はただ一つ「勝つため」。この話が決まったのにも加賀山の過去の活動・活躍があったからであった。

「ワールドスーパーバイクで世界を転戦している時にトロイ・ベイリス選手と仲良くなりました。その流れでパオロ・チャバッティ(ドゥカティ・コルセ:スポーティングディレクター)さんとも親しくなりずっと親交がありました。2023年の夏頃、パオロさんに我々の想い、ドゥカティで全日本と鈴鹿8耐で勝ちたい、と言うことを伝えました」

当初はサテライトチームとしてキット車・キットパーツを購入して参戦しようと考えていたという加賀山。しかしその後数ヶ月音沙汰がなく半ば諦めかけていたところMotoGP日本グランプリもてぎで大きく事態が動く。

ファクトリーマシンはドゥカティからの提案

「その間にパオロさんは加賀山就臣と言う人間を全部調べてくれていました。2010年、日本に戻り自らのチームを立ち上げて参戦したこと、鈴鹿8耐でケビン・シュワンツや現役Moto2ライダーを起用したり、様々なイベントをやっていたこと、など全部知っていました」

「(もてぎの)その場にはジジ・ダッリーニャ(MotoGPドゥカティ ゼネラルマネージャー)もいて“どうせやるなら一番を目指せ。我々のWSBKチャンピオンマシンを貸すぞ”と言ってくれました。その瞬間は“はぁ、何言ってるんだ?”と理解できませんでしたが(笑)まさに天にも昇る心地でした」

今回のファクトリーマシンはドゥカティからの提案であった。普通で考えればまずあり得ないこと。

機密情報の宝庫であるファクトリーマシンをしかも海外に持ち出すことは過去には無かった。それだけの信頼に値すると加賀山は評価されたのだ。

加賀山就臣の全てを調べた

加賀山は「今までの恩返しがしたい」との思いで世界から日本に戻ってきて自らのチームを立ち上げた。「勝ちたい」、それが一番の目的であるが、もうひとつ「日本のバイクレースを盛り上げたい」と常に考えている。

鈴鹿8耐にレジェンドライダー:ケビン・シュワンツを招いて3位表彰台に上がる、芳賀紀行や清成龍一、現役Moto2ライダー:ドミニク・エガーターを招いて参戦など常に話題を振りまいてきた。

その活動はレースだけに留まらない。プロ野球球場にレーシングマシンで登場、レーシングスーツで始球式をしたり、横浜元町をレーシングマシンでパレードしたり、最近では箱根ターンパイクを閉鎖してレーシングマシンを走らせたり、とバイクレースを一般の人たちに身近に感じてもらえる仕掛けをたくさん行ってきた。その加賀山の発想力・行動力がドゥカティ本体の心を動かし、門外不出と言われているファクトリーマシン提供に繋がった。

 

不安はありません。水野涼の力強いひとこと

ライダーは水野涼。ずっとホンダ一筋であった。移籍を決めた理由は加賀山と一緒、「勝ちたいから」

「2023年9月のオートポリスで初めて加賀山さんに“勝てる環境はないですか?“と相談しました。今、勝てる環境にあるのはヨシムラだと思ったのです。次に加賀山さんから連絡があったのは最終戦鈴鹿のレース2スタート20分くらい前でした。加賀山さんから電話がかかって来るなんて滅多にないから”怒られるのかなぁ、、嫌だなぁ、、“と思いながらチームスイートに行くと、今回のプロジェクトで一緒にやらないか、と話がありました。それがモチベーションの一つになり最終戦で2連勝を挙げることができました」

「不安はありません。勝たなくてはいけないマシン・メーカー、チーム体制と言うプレッシャーを背負いますが、自分の役割は勝つこと。それを果たしたいと思います。そしてそのためのマシン・体制を用意してくれた全ての人たちに感謝しています」

水野はイギリス選手権参戦で大きな自信をつけて戻ってきた。勝ちへの拘りは人一倍強い。2023年、アグレッシブな走りは水野の成長を感じさせたし多くのファンを魅了した。(水野涼の2023年の記事はこちら

“不安はありません”と言う言葉は今の水野を表していると感じた。

前代未聞、大使館公邸での発表会

もう一つ、異例なことがあった。それはイタリア大使館公邸で発表会を開いたことだ。このアイディアは加賀山が思いついた。最初は飛び込みで申し入れをしたそうである。その話を聞いたドゥカティ・ジャパンやイタリア本国がバックアップ、開催実施に漕ぎ着けた。

「イタリアをはじめとするヨーロッパではこういう公の場所でオートバイやレースの発表会を快く受け入れています。日本では考えられない。文化の違いはもちろんありますが日本のモータースポーツの認知度がまだまだ低い。イタリアで我々のやろうとしていることが認められたからここ(イタリア大使館)で発表できたことを広く発信したい。やればできると言うことを感じてほしいです。そしてバイクレースの社会的地位を少しでも上げて、野球やサッカーと同じくらい認知されるようにすることも目標としています」

日本で例えるなら国会議事堂や首相官邸で参戦発表会を開催するようなものだろうか。それをやってのけた加賀山の行動力と人間力に改めて驚かされた。

当日は在日イタリア大使館を代表してジャンルイジ・ベネデッティ駐日イタリア大使から「両国の友好関係を見事に象徴するこの大使館の公邸にて、DUCATI Team KAGAYAMAの発表会ができることを非常に嬉しく思っております」「世界チャンピオンを獲得したイタリアのDUCATIが日本のスーパーバイクと鈴鹿8耐に参加すると聞いて非常に興奮しています」とお祝いと期待に溢れた挨拶があった。

続いてドゥカティジャパンのマッツ・リンドストレーム代表取締役社長からの挨拶。

「ドゥカティにとってレースはDNA、アイデンティティです。MotoGPとWSBKで2年チャンピオンを獲ったパニガーレV4Rが日本を駆ける機会を作っていただきありがとうございます」「私の話よりもマシンを観たいですよね。それではみんなで移動しましょう」と早々に切り上げ、ファクトリーマシン:パニガーレV4Rのアンヴェールとなった。

鎖国した日本を開国させる

 世界チャンピオンのファクトリーマシンを日本に持ち込む。誰もが不可能だと思うことをやってのけた加賀山就臣。勝利の先に見据えているのは日本のバイクレースの盛り上がり。

「イタリアから来た黒船が日本国内を制覇する、それはマズイって思って欲しいのです。日本国内にもっと目を向けて本気(ワークス活動)を出してほしい。メーカーが本腰を入れれば絶対にまたバイクレースは盛り上がります」

「鎖国した日本を開国させる」加賀山の覚悟と情熱をぜひサーキットで見てほしい。全日本ロードレースは3月9日〜10日、鈴鹿サーキットで開幕する。

Photo & text:Toshiyuki KOMAI

 

2023 MFJ MOTO AWARDS

コロナ禍でオンライン配信のみであった年間ランキング表彰式が4年ぶりに対面で「2023 MFJ MOTO AWARDS」として東京都港区・竹芝ポートシティ ポートホールで開催された。全日本ロードレース、全日本モトクロス、全日本トライアル、全日本スノーモビル、全日本スーパーモト、全日本エンデューロ、各カテゴリー上位3名が表彰された。

冒頭MFJ会長:鈴木哲夫氏から今年度の報告と来年度の方針説明があった。来年のトピックスとして電動オフロードバイクによる「FIM E-XPLORER WORLD CUP」が大阪万博記念公園で開催される。「男女混合のチームで戦うFIM E-XPLORER WORLD CUPは、これまでの世界大会とは全く異なる新しいタイプのチーム戦であるため、新たなファンの開拓、新たなスターライダーやチームの誕生が期待されます。」と期待を寄せる。

今シーズンからJSB1000クラスで化石由来の原料を一切使用していないカーボンニュートラル燃料を世界で初めて導入したり、モトクロスで電動バイク参戦を導入するなど持続可能なモータースポーツに向けた活動を本格化させている。

全日本ロードレースの表彰。

J-GP3クラスのチャンピオンは3年連続の尾野弘樹。ランキング2位:彌榮郡、3位:若松怜。

ST600クラスのチャンピオンは全戦表彰台を獲得した阿部恵斗。今年急成長した西村硝がランキング2位。3位:井手翔太。

最終戦まで混戦だったST1000クラスは渡辺一馬が3年連続でチャンピオン。ランキング2位:荒川晃大、3位:國峰啄磨。

そして最高峰 JSB1000クラスは12回目のチャンピオンを獲得した中須賀克行。絶対王者中須賀に唯一勝った岡本裕生がランキング2位、最終戦で2連勝を飾った水野涼が3位。

中須賀が「この場に戻ってこられて本当に光栄です。来年も、ライダー全員で、素晴らしいレースをして全日本ロードレース全体を盛り上げていきたいと思います。引き続き応援を何卒よろしくお願いいたします。」と挨拶。

中須賀は全12戦中9勝と圧倒的な強さを魅せて前人未到の12回目のチャンピオンを決めた。しかし今年はその絶対王者に牙を剥く若手ライダーが出現した。ひとりは中須賀のチームメイトの岡本裕生。

第3戦SUGOのレース1で中須賀に勝利して連勝記録を止めた。SUGO以外でも中須賀と接戦を演じ「自分には無い走らせ方、自分よりも速いところは裕生の走りを盗んでいる」と中須賀に言わした。岡本も変わった。昨年までは「中須賀さんは凄いです。自分はまだまだ足元にも及びません」と言っていたが今年に入り初めて「勝ちたいです」とコメントした。最終戦鈴鹿では中須賀を追い詰めた。

もう一人は水野涼。イギリス選手権(BSB)参戦を経て3年ぶりに全日本復帰。SUGOレース1で3位表彰台獲得。鈴鹿8耐後のもてぎでは一時中須賀の前を走る好走で2位表彰台、オートポリス、岡山でも表彰台に登る。そして最終戦では中須賀、岡本と三つ巴のバトルを演じて最高峰クラス初優勝、レース2も優勝と2連勝を飾った。

来シーズン、打倒中須賀で挑んでくる若手ライダーが増えてくることを期待したい。

ロードレース以外の表彰は以下の通り。

全日本モトクロス:IA-1クラスチャンピオン Jay Wilson

全日本トライアル:国際A級スーパークラスチャンピオン:小川友幸

全日本スーパーモト:S1 PRO チャンピオン 日浦大治朗

全日本エンデューロ:インターナショナルAクラスチャンピオン 馬場亮太

全日本スノーモビル:SX-Proクラスチャンピオン 佐々木雅規

世界選手権参戦功労賞としてFIM Grand Prix World Championship Moto3 classで世界ランキング2位の佐々木歩夢が受賞した。

2024年シーズンもライダーたちが織りなす人間ドラマをぜひサーキットの現場で観て欲しいと思う。

Photo & text : Toshiyuki KOMAI

2023年 T.Proサーキット走行会


手島雄介率いる株式会社ティー・プロ・イノベーションは全日本ロードレース参戦だけに留まらず、スポンサーである日本郵便とのコラボでバイクに乗る楽しさや交通安全の啓蒙に力を入れている。

その一環として11月22日にファンの方々が参加するサーキット走行会を開催した。そのレポートが届いたのでお届けする。

11月22日、株式会社ティー・プロ・イノベーションは、筑波サーキット コース1000で『2023T.Proサーキット走行会』を開催致しました。全日本ロードレース選手権に参戦するプロライダー達と一緒にサーキットでのバイクの乗りの方を体験しました。

イベントには日本郵便HondaDreramから参戦する、小山知良(ST600クラス)、高橋裕紀(ST1000クラス)、高橋巧(ST1000クラス)、岡崎静夏(J-GP3クラス)、若松怜(J-GP3クラス)が参加し、先導やライディングレッスンの講師を務めました。ライダー達からはプロの視点から安全に楽しくサーキットを走るコツや公道を走る時に注意したいポイントを伝授してもらい、サーキット走行だけではなく様々なコンテンツからも参加された方々は1日を通じてたっぷりとイベントを楽しんでいただけた様です。

【ライディングレッスン】

一人ずつ走ってもらい、ライダーが参加者それぞれに直接アドバイスをしました。急制動とスラロームの2種目を実施し、同じ種目を数回走ることで短時間ながら操作を変えることで生まれるバイクの挙動の変化を感じ取ってもらいました。

実施種目・・・急制動&スラローム

【激観ライダーデモ走行&コースウォーク解説】

お昼休みの時間に開催したコースウォークでは、午前中に自身が走ったコースを実際に歩きながら、手島雄介監督直々のコース解説を実施。コースを走る上での各ポイントについて参加者の皆さんは真剣に耳を傾けていました。

また日本郵便HondaDreamのライダーが2023年シーズン戦った本番車でコースを周回!参加された方は超至近距離からプロライダーの走りを見て、感じて、まさにサーキットサファリ化したプログラムに大興奮の模様でした。

【お昼はバイク弁当とコラボ】

今回、都合で出店はできませんでしたが、地方創生プログラムの一環として応援している「バイク弁当」とのコラボレーションが実現し、参加者の方へ小鹿野の「バイク弁当」のお弁当ケースを使用し昼食提供をしました。

また日本郵便HondaDreamのチーム限定ステッカーシートも付け、1日の思い出にお持ち帰りいただきました。

【T.Pro からのメッセージ】

2023T.Proサーキット走行会」にご参加くださった皆さま、ありがとうございました!

日本郵便HondaDreamのライダーと一緒に走るサーキット走行は楽しんでいただけましたでしょうか?一日を通じてバイクに乗る楽しさを堪能していただけたのなら幸いです。これからも皆さまが日常で安全にバイクライフを楽しめることを願っております。

またサーキットという場所でお会いできることを心待ちにしています。ありがとうございました!

T.Proファミリー一同より

【参加者の声】

・プロのレッスンと先導、一日中大満足でした!
・先導付きでライン取りも分かりやすく、ライダーの方から直接アドバイスもいただけてとても貴重な体験でした。
・レッスンやプロと走れる事が1番良かった!公道では安全にバイクを楽しみます!
・安全に楽しむ運転方法やサーキット走行の楽しみ方を教えて頂きました。全日本のライダーの方々も優しく対応して頂きありがとうございました。次回も是非参加させて頂きたいと思いました。これからも応援させて頂きますのでケガなく頑張ってください。事故ゼロ&ワンチームで!
・選手の方が車検からやっていただけ非常に驚きました。質問にも親切に対応いただき、コツが掴めた気がします。最高の走行会でした。ありがとうございました。
・ライダーの皆さまと一緒に走行したり、ワンポイントアドバイスをいただいたり、超至近距離での観戦!何よりライダー、スタッフの皆さまが気さくに話していただけたので、大興奮!わくわくな1日でした!また、必ず参加します!これからもよろしくお願いします!
・初めてとは思えない思考で大変素晴らしい走行会でした素晴らしいライダーと手島監督の優しさが伝わる大会でした。また来年も開催していただけると嬉しいです。
・現役のトップライダーの方々の華麗なライディング勇姿走行をコース内より直視体感させていただけた事は大満足!またスタッフの方々の繊細な進行と思いやりをとても感じました^_^
・プロライダーと同じクラスで一緒に走れる機会なんてないので、幸せでした。初めての筑波サーキットでしたが、安心して参加できとても満足しています。また次回も可能ならば、参加したいです。お世話になりありがとうございます。

【イベント概要】

◇開催日:2023年11月22日(水)

◇開催場所:筑波サーキット コース1000

◇参加人数:65名

◇プログラム
・サーキット走行
・プロライダーが教えるライディングレッスン(30分)
・激観ライダーデモ走行&コースウォーク解説
・全日本ピット再現なりきりPhoto & text:Toshiyuki KOMAIエリア
・プロカメラマンが貴方の走行写真を激写(データ提供/有料)

◇参加ライダー
日本郵便HondaDream
・小山知良(ST600クラス)
・高橋裕紀(ST1000クラス)
・高橋巧(ST1000クラス)
・岡崎静夏(J-GP3クラス)
・若松怜(J-GP3クラス)

◇ブース出店のご協力(敬称略):
・株式会社ダンロップモーターサイクルコーポレーション
・アールケージャパン株式会社(グリップ商事株式会社)
・株式会社G sense
・埼玉オートバイ事業共同組合(AJ埼玉)
・caféマウント(昼食提供)
・THE ONE(コーヒーetc飲料提供)

2023年ブリヂストンモータースポーツ活動発表会

ブリヂストンの2023年度モータースポーツ活動発表会が富士スピードウェイホテルで開催された。今年はブリヂストンのモータースポーツ活動60周年を迎える。四輪では「POTENZA」ブランド、二輪では「BATTLAX」ブランドでレース活動をサポートしている。

モータースポーツが技術力・ブランド力を磨く

1963年第1回日本グランプリ参戦からブリヂストンのモータースポーツ活動の歴史が始まる。1964年からレーシングタイヤの本格的な開発に着手、1976年にはF1日本グランプリに参戦するまでに至った。

石橋秀一 取締役 代表執行役グローバルCEOからモータースポーツ活動60年を振り返る講話の中で「タイヤメーカーとしてみなさんの「走りを支える」というパッション、高い技術力、総合力、そしてブランド力を磨いたのがモータースポーツです。ブリヂストンにとってモータースポーツは極限への挑戦。「タイヤは生命を乗せている」を大原則に車の動きを支える挑戦を続けてきたことが今日のブリヂストンに繋がっています」とモータースポーツがブリヂストンブランドの根幹となっていることを語った。そして極限の世界で鍛え上げられた技術と情熱は「品質へのこだわり」「現物現場」「お客さまに寄り添う」「挑戦」のブリヂストンDNAを磨き上げた。ブリヂストンのモータスポーツへの取り組み姿勢は60年間変わっていない。

石橋CEOはモータースポーツへの造詣が深く、モータースポーツを基軸としたブリヂストンのブランディング強化に力を入れている。この業界に身を置く我々にとって嬉しい限りである。

二輪ブランドBATTLAXは今年40周年

ブリヂストンの二輪タイヤの歴史は意外と浅く1983年に「BATTLAX」ブランド立ち上げから始まる。1985年に鈴鹿4耐初参戦にして2位表彰台を獲得、翌1986年にはミラージュ関東:高石/石上組が初優勝を飾る。

「BATTLAXブランド立ち上げ当時、鈴鹿4耐の練習走行では誰も相手にしてくれず悔しい思いをしました。BATTLAXを絶対にグローバルプレミアムブランドにしてみせる、という思いを強く持ちました」との石橋CEOの思い通り、MotoGPで世界を制し、鈴鹿8耐では15連覇、全日本の最高峰JSB1000クラスでは13連覇を達成、今では「ブリヂストンでないと勝てない」とまで言われている。

BATTLAXブランド立ち上げ当時に商品開発として携わっていたという石橋CEO、二輪ブランドにも強い思い入れを持っている。

 

サスティナブルなレース用コンセプトタイヤを発表

続いて坂野真人執行役専務 技術・品質経営分掌・グローバルCTOから「極限の技術」に関する講話があった。

「ブリヂストンにとってモータースポーツは極限への挑戦です。モータースポーツの文化を支え、モータースポーツファンの感動に貢献する。そこで培った知識経験をイノベーションの起爆剤としてサスティナブルな技術、ダントツのプレミアム商品の開発に繋げる。ブリヂストンにとってレーシングタイヤを作るということは人を育て、技術を磨くことです。「タイヤは命を乗せている」これを絶対基盤としてモータースポーツという極限の場でとことん走り倒す。そんな現場の緊張感の中で人が育まれ、技術が磨かれ研ぎ澄まされています。」

「さらにモータースポーツを通じた新たな挑戦としてサスティナブル技術も磨いていきます。最先端の技術を投入することで、より豊かなモビリティ社会に貢献していきます」

会場にはコンセプトタイヤ:MCN(再生資源・再生可能資源の比率)50%の二輪レース用タイヤが展示されていた。通常はレース後のタイヤは裁断されて焼却されるが、このタイヤの構成部材の半分は次のタイヤ製造に活用される。現在はまだ50%であるがこれが100%になれば「使用済みレースタイヤが次のレースタイヤになる」のである。

レースで勝つことはもちろんだが、環境問題に取り組みレースタイヤの新しい形に取り組む姿勢はさすがブリヂストンである。後発参入ながら25年後には二輪で世界を制した技術力と人材を持つブリヂストンならサスティナブルなタイヤでありながらグリップ力と耐久性を兼ね備えたタイヤを作ることができることを期待したい。

最後に日本一速い男:星野一義Team IMPUL総監督、INDY500制覇した唯一の日本人ドライバー佐藤琢磨選手、TOYOTA GAZOO RACING 86カップに参戦する「POTENZA」ブランド商品開発を担当する佐々木雅弘選手によるトークショーが開催された。軽快な星野総監督のトークに会場は和やかな雰囲気に包まれた。

二輪四輪のモータースポーツを足元から支えるブリヂストン。サスティナビリティという世界規模の課題にも果敢に取り組み挑戦する姿勢は60年前にモータースポーツへ足を踏み入れた当時から変わっていない。

Photo & text:Toshiyuki KOMAI

2023年鈴鹿サーキットモータースポーツファン感謝デー

2023年鈴鹿サーキットモータースポーツファン感謝デー

レースシーズン開幕を告げる毎年恒例の「鈴鹿サーキットモータースポーツファン感謝デー」が3月4日、5日に開催された。四輪・二輪のトップ選手が集うイベントで大勢のお客様が詰めかけた。

鈴鹿8耐のデモランでは2022年EWCチャンピオンチーム:F.C.C. TSR Honda Franceのジョシュ・フック、高橋巧、亀井雄大、水野涼、名越哲平、渡辺一樹、作本輝介、児玉勇太、伊藤和輝、日浦大治朗が参加した。ルマン式スタートで一斉にスタート。東コースを3周ラップした。

グランドスタンド前では亀井、水野、名越によるトークショーを開催。

ファン感謝デーらしいイベントが二輪・四輪の混走「WEC&EWC2022耐久チャンピオン」と題したデモラン。平川亮選手がドライブするTOYOTA GAZOO Racing(GR010)とジョシュ・フックが乗るF.C.C. TSR Honda Franceが走行した。

この日は気温が低く、ジョシュ・フックがマフラーからの排気で手を温めると言う普段では見られない光景があった。

午後には長島哲太が開発を手がけるMotoGPマシン:RC213Vのデモランが行われた。長島は昨年の鈴鹿8耐では圧倒的な強さを見せつけて優勝。そしてMotoGPにスポット参戦するなど活躍をした一年であった。若手育成にも力を入れ、自らチームを立ち上げST600クラスに参戦している。鈴鹿サーキットをMotoGPマシンが走るのはこのモータースポーツファン感謝デーでしか見ることができない貴重な機会である。

 

グランプリスクエアの特設ステージでは「トップライダートークライブ」が開催された。前人未到の最高峰クラス11度のチャンピオンを獲得した中須賀克行、チームメイトでJSB1000クラス2年目の岡本裕生、WEBK,BSBと世界を転戦して4年ぶりに全日本に復帰する高橋巧、F.C.C. TSR Honda Franceジョシュ・フック、そして高橋と共にBSBで2年間戦った水野涼が参加した。

話題はやはり中須賀の強さ。岡本は一年前の鈴鹿テストで初めて中須賀と一緒に走り「今までに経験したことのない速さで抜かれてビビった」とコメント。高橋と水野もイギリスで欠かさずチェック。月曜日朝の会話は「昨日観ました?また中須賀選手勝ちましたね」その後は暗黙の了解で頷いてたという。ジョシュ・フックも中須賀の強さを知っていて「できればJSB1000クラスに参戦して打ち破りたい。でも難しいけどね」とコメント。会場を沸かせた。

 

ブリヂストンブースではF.C.C. TSR Honda Franceの闘将:藤井正和総監督を迎えたステージを展開。二輪タイヤブランド「BATTLAX」が今年40周年を迎える。藤井監督もブリヂストンとは40年の付き合いがあると言う。その歴史について語った。
ある日タイヤを持った3人のブリヂストンの社員が「軽いタイヤを作ったのでぜひ履いて欲しい」と尋ねてきたのが始まり。「だけど軽いだけでグリップはしなかったね(笑)」。

しかしそれから開発が進み2006年の鈴鹿8耐で初優勝。これまでに3回の優勝を果たす。2016年からEWC参戦。この時も「ブリヂストンのタイヤ開発者が“藤井さん、EWCやってみない?”って急に言ってきたもんだからつい“うん、いいよ”って言っちゃった」。最初のレースも、EWC参戦も『人として付き合えるか、喧嘩できる相手か』でブリヂストンに決めたと言う。人と人との繋がりを大切にする藤井監督らしい話であった。

四輪では、ルマン24時間100周年を記念して往年の耐久マシンが勢揃いした。また、フェラーリのF1マシンF2012とF189が懐かしの甲高いF1サウンドを奏でていた。

二輪ファンも四輪ファンも思い切り楽しめる盛りだくさんのイベントを楽しんだお客様は今シーズンの開幕を楽しみにしていることだろう。全日本ロードレースの開幕戦は4月1日(土)モビリティリゾートもてぎで開幕する。

Photo & text:Toshiyuki KOMAI

日本郵便Honda Dream TP2023年参戦体制発表会

手島雄介率いる「日本郵便Honda Dream TP」の2023年参戦体制発表があった。場所はメインスポンサーである日本郵便株式会社の新宿郵便局。手島と日本郵便の良好な関係を伺わせる場所で開催された。

昨年までの3台体制から一気に2台増えて5台体制となる。中でも大きな話題は高橋巧の加入だろう。

ワールドスーパーバイク(WSBK)、ブリティッシュ・スーパーバイク(BSB)参戦から4年ぶりに帰国、手島の元でST1000クラスに参戦する。チームメイトは初代ST1000クラスチャンピオン:高橋裕紀。

もう一人、若松怜がJ-GP3クラスに加入。岡崎静夏と2人で臨む。ST600クラスはチームの要:小山知良がチャンピオン奪回を目指す。

モータースポーツを国技化したい

日本郵便Honda Dream TPは2013年に手島雄介が創立、「モータースポーツを国技化したい」という思いで活動を続け今年で10年目を迎える。「社会に貢献すること」を掲げて2018年から日本郵便とパートナーシップを結んでいる。レースの観点から安全運転とはどういうことかを語る「安全講和」を全国の郵便局で展開している。さらに、レーシングライダーが配達員に技術的なアドバイスを行う「技術講習」も開催している。「全国の郵便配達員さんの安全を守るためにレース活動でもできることがある」。それが手島の信念であり、チームスタッフ・ライダーも全員その意識を共有している。

日本郵便株式会社 衣川社長から激励メッセージ

日本郵便株式会社 衣川和秀 代表取締役社長から激励のビデオメッセージが届けられた。ここでも手島と日本郵便との強い信頼関係が伺われる。

「日本郵便Honda Dreamの皆さんはサーキットでは日本郵便の看板を背負い、ベストパフォーマンスを目指して常に全力でレースに挑み、多くの感動や興奮を届けてくれています。サーキットを離れても我々の社員や家族のために交通安全を全国に広める活動に力を入れています。このような活動を長年続けてくださっていることに対し、日本郵便を代表して感謝申し上げます。

いよいよ4月の開幕を迎える2023年シーズンでは新たなメンバーを加え5名のライダー全員が全国各地のレースで大いに活躍していただき、サーキットを盛り上げ、また日本郵便を盛り上げてくれることを期待しております。」

 

今シーズンのST1000クラスはステップアップ組、JSBからのスイッチ組など有力ライダーがひしめく混戦が予想される。その激戦クラスに“二人の高橋”が参戦する。

ST1000クラス:高橋裕紀 激戦を最後に制してチャンピオン奪回を狙いたい

「日本郵便Honda Dream TPから4シーズン目の参戦を迎えることができたことに感謝しています。今年は強力なチームメイトが加入してきました。二人でチャンピオンを目指すシーズンにしていきたいと思いますので、応援よろしくお願いいたします。」

「今シーズンのST1000クラスは昨年のチャンピオン渡辺一馬選手や國峰啄磨選手、他のカテゴリーからも有力選手がエントリーする激戦になると思います。その中で皆さんが大注目している高橋巧選手がチームメイトとなり、どっちが前に出るのか、お互い絶対に負けられない戦いになると思います。その中で最後は自分が制してチャンピオン奪回を狙いたいと思います。」

チームメイトとライバル関係にあると言うのは、モリワキ時代に清成龍一との関係に似ていると言う。その時は高橋が後輩だったが今回は逆の立場。初代チャンピオンの実力とプライドを持って高橋巧、そして渡辺一馬との勝負に挑む。

ST1000クラス:高橋巧 海外で闘ってきた3年間の成長を見てほしい

「2023年シーズンより日本郵便Honda Dreamに加入させて頂くことになりました。手島監督をはじめチームの皆様、各スポンサーの皆様に、このチームで走る機会をいただき感謝致します。

2年間BSBに参戦していました。BSBもタイヤワンメイク、コンピュータも共通だったのでST1000に近い環境でした。

一昨年、コースを全然知らない中で参戦してすごく苦労はしたのですが、そこで戦い方やJSBは気づかなかったことを勉強しました。3シーズン海外のレースで闘ってきてそれなりのテクニック・フィジカル面は鍛えられてきたと思っています。そんな自分の成長ぶりを見てほしいと思います。出るからにはチャンピオンを目指して戦います。」

「高橋裕紀選手と毎戦ワンツーフィニッシュできるように頑張りたいです。どっちが1位かは問いません。チームとして勝てれば良いと思います。」

高橋巧が参戦することで間違いなくこのクラスのトップ争いは熾烈になるだろう。高橋と手島は古くから交流があり、3〜4年くらい前から日本郵便のワッペンをつけてT・PROファミリーとして走っていた。酒の席で「いつかは一緒に走りたいね!」と話していたそうである。高橋が帰国した際に手島に相談してチーム加入に至った。

イギリスでは「他にすることがなかったので(笑)ひたすらトレーニングをしました」との言葉通り、身体は引き締まり、筋骨隆々である。「開幕までにあと3kg落としたいですね」と、小柄な高橋裕紀を意識したコメント。ワン・ツーならどっちが前でも良いと言っていたが、自分が前、と言う気持ちの表れだろう。表向きはクールだが内に秘めている闘争心は人一倍強い。

ST600クラス:小山知良 今年は予選から飛ばします。セカンドコレクターは卒業

チームの要でありムードメーカーの小山。挨拶の冒頭で「セカンドコレクターの小山知良です」と会場を沸かせた。昨年、一昨年とランキング2位。もう2位は要らないとの思いを込めたコメントだ。

「昨年はバッドラックがたくさんありましてランキング2位と2年連続の2位。セカンドコレクターになっています(笑)。しかし今年は、自分の使命でもある「負けたら終わりではなくレースを辞めたら終わり」を信じて攻め続けるKoyaMAXらしい走りでタイトル奪還を目指して頑張りますので、応援をよろしくお願いします。

「今年は若者に負けず、一発アタックも必死に頑張ります!去年は予選は2列目まで入って決勝は序盤にトップ集団に混じり、その中で自分のベテランの引き出しをいっぱい出しながら周りを抑えて勝てれば良いなと思っていました。しかし今年は予選でフロントローを狙いたいと思います。予選で必死に走る姿も見てほしいです。」

ベテランの引き出しの多さに加え一発の速さも狙っていく今年の走りに注目したい。

J-GP3クラス:岡崎静夏 ワクワクなレースを魅せていきたい

昨年Racing Heroesで1年間追いかけた岡崎静夏(岡崎静夏の新たなる挑戦はこちら)。前半戦はマシンセットに苦しんだが後半からセットを見つけて、さぁ、ここから、と言う矢先に転倒・骨折。本来の力を発揮できずに悔しいシーズンを過ごした。

「今年もこのチームで参戦させていただけると大変嬉しく思っております。昨年、小山知良選手や高橋裕紀選手から教わったことをしっかりと結果に繋げたいと思います。そして応援してくださる皆様にワクワクなレースを見ていただけるよう、全力で優勝を目指して挑戦していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。」

「今年は若松怜選手が加入しました。自分よりずっと若いですが昨年のランキングは自分より上。正直自分より下の選手が加入したのでは意味が無いと思っていました。若松選手の後ろから付いて行き最後に勝負を仕掛けて抜き去りたいと思っています。」

男子顔負けの負けん気の強さをもつ岡崎。男性に混じって女性が勝負を仕掛ける数少ないロードレースでひたむきに頑張る姿に共感するファンも多い。その岡崎も今年30歳。「若手ばかりのJ-GP3クラスの中で若さに負けないように開幕戦から全力でバトルを仕掛けたい」と言う今シーズンに期待したい。

J-GP3クラス:若松怜 昨年の自分をさらに超えるような走りをしたい

昨シーズンランキング7位の若松怜が新規加入した。小山知良が講師を務めるMFJレースアカデミー出身の16歳。

「今年から日本郵便Honda Dream に新たに加入しました若松怜です。小山知良選手がチャンピオンを獲り、翌年には高橋裕紀選手がST1000クラス初代チャンピオンを獲得、このチームは“チャンピオンチーム”だと思っていました。そのチームに加入できたことを本当に嬉しく思います。

2023年は、昨年の自分をさらに超えるような走りをして、最終的にチャンピオンを目指して頑張っていきます。

「昨年はレース前半にトップ争いに絡めていても後半にペースが落ちて付いていけない展開が多かったので、今年は後半でもしっかりトップ争いをして最後に勝てるレースをしたいと思います。」

小山からも「後半落ちるのは課題だよな」と既に指摘を受けている若松。アカデミーの先生:小山、同クラス先輩の岡崎に囲まれ、吸収しながら成長する若松怜の走りに期待したい。

攻めのシーズン

最後に手島が挨拶。

「弊社にとって創立10年目となる2023年シーズンは一言に『攻』をテーマとして活動して参りたいと思います。人は厳しい環境に置かれるとネガティブになりやすい生き物です。実際にこれまでの10年間も幾度となく自分の弱さと小ささを感じることがありました。それでもそれを乗り越え今日この場に立たせていただいているということは、皆様に支えていただき、生かされているからです。

「最近改めてモータースポーツは人生にいろいろな気づきを与えてくれる素晴らしいスポーツだと実感しております。レースのシーンで例えると、コース上では一人のライダーが戦う中で、ピットで待つスタッフはモニター越しに真剣なまなざしで選手を心の底から応援しています。大きな視点で見れば、社会も誰かを思う気持ちで成り立ち、レースシーンはその象徴のように見えます。
今年は過去最大のエントリー数で挑みます。参戦台数が増えただけでなく、一人一人の選手が応援くださる皆様にとっての“ヒーロー”となれるような活動をシーズンを通して行っていきたい所存です。」

2023年も『One Team』を合言葉にたくさんの笑顔を作っていきましょう!今年も日本郵便HondaDreamを宜しくお願い致します!」

過去最大5台のエントリーで参戦する日本郵便Honda Dream TP。

縮小や撤退の話が多いレースの世界で攻めの姿勢を見せることで取り巻く世界を変えることができれば、と言う願いも込めた手島の決断。今シーズンの日本郵便Honda Dream TPの活躍に注目したい。

Photo & text:Toshiyuki KOMAI

亀井雄大が電撃移籍!ヨシムラ2023年参戦体制発表

ヨシムラの2023年参戦体制が発表された。起用ライダーに衝撃が走る。亀井雄大。そう、Honda Suzuka Racing Teamの部長としてチームを率い、マシン造りをしながら自ら走っていた生粋のホンダライダーがヨシムラに移籍した。

プライベーターのチームでHRCからのサポートも無く自分たちでパーツを考え、造り、マシンを仕上げていく。「オートバイ部」の活動の一環として参戦しているので本業はホンダ鈴鹿製作所での業務。レースの現場に出られる人間も限らている少人数のチーム。(Racing Heroesでは2021年にSuzuka Racing Teamについて密着取材した記事を公開している)2022年亀井は中須賀克行を押さえて3度のポールポジションを獲得、3位表彰台に5回登りシリーズランキング5位と躍進した。

亀井の速さと負けん気の強さに目を付けて引っ張ってきたのは加賀山就臣。この辺りのセンスはやはり加賀山と感心する。そして昨年に引き続き加藤陽平をチームディレクター、加賀山をチームマネージャーに起用して『YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN』として全日本ロードレースを闘う。

「オートバイに対する造詣の深さ、セッティング能力の高さはここ数年のHonda Suzuka Racing Teamの活躍を見れば明らか。その亀井選手が”走りだけに集中”できる環境を与えればもっと速くなると確信しました」と加賀山。

年明けからビッグなサプライズ発表となったYOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN。今シーズンの動向から目が離せなくなりそうだ。

発表されたライダー・スタッフのコメントは以下の通り。

亀井雄大(レーシングライダー)

「まず今回の移籍は、加賀山チームマネージャーをはじめ、スズキ株式会社様、株式会社ヨシムラジャパン様、そして多くのスポンサーの皆様のご理解とご協力があり実現することができました。本当にありがとうございます。
また快く送り出してくれた鈴鹿レーシングや、お世話になった関係者の皆様にも心から感謝いたします。
優勝を確実に狙える体制でチャレンジできることが今から楽しみで仕方がありません。
初めてのマシンで学ぶことが沢山あると思いますが、早くGSX-R1000Rに慣れてチームのみんなで一丸となって優勝を目指し、全力で頑張ります!」

加賀山就臣(チームマネージャー)

「2023年シーズンに向けてスタートできることを、スポンサー様、関係者様に感謝いたします。
そして新規ライダーとして亀井選手を迎える事ができ、とてもうれしく思います。

亀井選手のチーム移籍を快諾していただいた、鈴鹿レーシング様、関係者の皆様に御礼申し上げます。亀井選手は独自のレース経験から、マシンの作り込みからセットアップまでを主体となってレースに取り組んできました。

今の時代には数少ない選手と言えるでしょう。私は亀井選手のライディングセンスとマシン技術力に魅力を感じ“共にレースをしたい”と思いました。彼の可能性を最大限に発揮できるように体制を整え、結果を求めていきます。」

加藤陽平(チームディレクター)

「亀井選手、YOSHIMURA SUZUKI RIDEWINを信頼し、共に前に進んでいく決断をしてくれて有難う。そして、この活動を継続するため尽力している加賀山チームマネージャーに感謝の意を表します。

新チーム立ち上げ初年度となる2022年チームランキング2位は満足できる結果だったと感じておりますが、今年は抜群のスピードを持つ亀井選手と共にチャレンジし、あと一歩届かなかった優勝を勝ち取りたいと考えております。
今シーズンも加賀山TMと共に、ファンの皆様に熱い戦いを届けたいと思いますので、YOSHIMURA SUZUKI RIDEWINへのこれまで以上のご声援を宜しくお願い致します。」

Photo :株式会社ヨシムラジャパン text:Toshiyuki KOMAI