「まず完走ありき」本田重樹監督の鈴鹿8耐に対する想い Part 2

2014/08/20

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8耐は強くて速いチームが勝てるのではなく、勝ったチームが強くて速い

確かに完走なくして勝利は無い。でもハルクプロが勝利を強く意識していなかったことが少し意外だった。すると「スプリントなら別だが“勝ち”だけを狙っていくと、落とし穴がある。8耐は強くて速いチームが勝てるのではなく、勝ったチームが強くて速いのである。そこは似て非なるものである。我々は自分たちの目標達成だけに集中していく」と本田監督。

 もちろん、コース状況や天候によって立てた目標が達成できなくなりそうになったときに戦略を臨機応変に組み立て直す事も重要なことである。

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その一例が今年の第1スティントを26周でピットインさせたことだろう。スタート前の荒天で6時間55分に短縮された今年の8耐。本田監督は「5分短いと言う事は約2.5周分。さらに序盤は雨でラップタイムが(ドライに比べて)遅いので26周から27周は保つだろう」「第1スティントで引っ張れるだけ引っ張れば約4周分の貯金を稼ぐことができる。その貯金はその後のレース展開で使おう」と考えて(ルーティンの25周より)1周遅くピットインさせたそうである。結果的に1周遅らせたことでその後のセーフティーカー(SC)導入時に引っかかることなくルーティンのピットインができた。

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この3人のライダーならばチームワークも強固なものとなると確信していた

今年のマシンは基本的に高橋選手のセッティングを基本にしていると言う。チームで一番速いライダーにセッティングを合わせるのが常套手段だという。ハルクプロの場合マイケル・ファンデル・マーク選手だ。しかし、「オレが!オレが!」「オレのセッティングに合わせてくれれば」と自己主張が強い外国人選手が多い中、マイケル選手はそれを言わないそうである。本当は「もっとこうして欲しい」という希望はあるのだが、でもそうするとレオン選手が走りにくくなることもわかっていたそうである。だから現状のセットでOKだと。それをレオン・ハスラム選手も高橋選手も見ている。その気持ちが好きだと本田監督。この3人のライダーならばチームワークも強固なものとなる。そう確信していたそうである。

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また、高橋選手にとってマイケル選手は刺激になっただろう、とも言う。高橋選手のセットのマシンで本人よりマイケル選手の方が速かったのだから。高橋選手もマイケル選手の速さを認めている。「ライバルではなくチームメイトで良かった(笑)」などとジョーク交じりに話しているが、高橋選手の中で「より速く」への意識は格段に高まったのではないか。

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先ずは完走ありき。一見すると(言葉は悪いが)地味にも見えるこの言葉。しかし、8耐で勝つことの厳しさを知っているハルクプロだからこそ、その言葉の意味は重いと思う。「8耐で勝つと言う事はミス無く8時間走り切ったということ。それってできそうでなかなかできない難しいこと」だと本田監督は言う。

「2連覇達成と言うことは16時間、今年は雨の影響で時間短縮となってしまったが、ミスなく仕事をしたと言うことでレース屋冥利に尽きる」と嬉しそうに話していた本田監督の笑顔が印象的であった。

photo & text : koma

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