「ノリユキを第3ライダー扱いするなんてオレくらいだろうな」
37回目の鈴鹿8時間耐久ロードレースは波乱に次ぐ波乱の末に終了した。2年連続で3位表彰台に立ったTeam KAGAYAMA & Verity。チーム代表であり、現役のライダーである加賀山就臣選手は記者会見が終わった後にポツリとつぶやいた。
「世界戦43勝のノリユキを第3ライダー扱いするなんてオレくらいだろうな」
その場にいたプレスの人達は驚いた。「何?」「芳賀選手を第3ライダー扱いとはどう言うこと?」
確かに芳賀選手も記者会見で「朝、チームスイートに行くと、自分の走行は1スティントだと言われた」とコメントしていた。雨により波乱の展開となったとは言え芳賀選手の実力と経験からして1スティントというのは少ない。加賀山選手はさらに続ける。
「ドミニク(エガーター選手)の走りを魅せたかったんだ」と。さらに「後半は俺がバテる可能性があったので、俺と紀行を入れ替える案もあったんだ。だからこそセーブする事無く全力で走り切る覚悟があった」と。
ケビン・シュワンツ選手に「My Big BOSS」と言わせたオトコ
昨年はレジェンドとして誰もが尊敬するケビン・シュワンツ選手を招聘して日本中のド肝を抜いた。そして、表彰台を獲得。加賀山選手の勝ちに行く強い意志・姿勢がケビン・シュワンツ選手に「My Big BOSS」と言わせた。さらには日本のモータースポーツ振興のひとつの方向性を示すどデカイ花火を打ち上げた。今年は何をするのか、期待が膨らむ中で発表したのが昨年とは全く逆の方向性・現役Moto2ライダー・ドミニク・エガーター選手の起用であった。
何もかもが初体験なのに走るのが楽しみで仕方ないドミニク・エガーター選手
そのドミニク選手は、初めての鈴鹿、初めての1,000cc耐久マシン、初めてのチーム、何もかもが初体験の中で参加した鈴鹿8耐事前合同テストで周囲をあっと驚かせる速さをみせつけた。加賀山選手と全く同じ2分10秒2をたたき出したのである。
マシンはシェークダウンの為、良い状況では無かったが、とにかく走りに対して貪欲、速くなるためにどんなことでも聞いてくるらしいのだ。
「ユキオと比べてこの区間は速いけどここが遅い。どんな風に走っているの?」とデータを見比べては質問。
コース上で速いライダーがいたら「あの速いライダーは誰?」と聞いてきてはそのライダーの後ろについて走りを勉強する。
走ることが楽しくて仕方ないらしい。もちろん、ドミニク選手が馴染みやすいように、走りやすいように、加賀山選手がチームの雰囲気、マシンセット作りをしているからこそである。結局最後までマシンのセットや性能を、一度も言い訳する事無く、自身の応用力で速く走り続けた。レース中のベストラップもドミニク選手だった。この技量と戦略を国内の若手に伝えて行きたいからドミニク選手の走行時には優先的に良い状況を作ったと言う。「この鈴鹿の経験でもう一歩上に行って欲しかったしね」と加賀山選手。
続く
photo & text : koma