単なる今季初優勝ではない。玉田誠選手の優勝が意味するものとは

2014/08/21

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ライダーとしてではなく監督として臨んだ今年の鈴鹿8耐

アジアロードレース選手権オートポリス。玉田誠選手は優勝の喜びに浸っていた。しかし一方でその姿に少し変化を感じた。

 今年の鈴鹿8耐は選手としてではなく、監督として臨んだ。レース人生で初のことである。玉田選手は2012年からHondaがアジアの有望なライダーを育成することを目標に創った「Team Honda Asia」の第1ライダーとして活躍してきたが今年は監督としてアジア人ライダーの育成に努めた。

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結果は総合7位。ワークスチーム、優勝常連の有力チームがひしめく中でこの7位という成績は驚くべき順位だ。そこに玉田監督の采配が功を奏したことに疑いの余地は無い。

今年の8耐はスタートディレイに始まり、4度のセーフティーカー導入と波乱に次ぐ波乱のレースとなったが、玉田監督は冷静に、且つ的確に指示を出した。ライダーとして何度も鈴鹿8耐を走った経験があったからこそだと思う。選手達も玉田監督を信じて懸命の走りで期待に応える。この信頼関係こそが玉田監督が目指したチームの姿ではないだろうか。その玉田監督「ライダーとして参戦するより緊張した」。しかし、「現役ライダーの時に監督を経験できた良かった。監督を経験してライダーの時には見えなかった事が見えてきた」とも話している。

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ぶっつけ本番で臨んだ予選で5位獲得も全く納得していない

ライダー・玉田誠に戻って臨んだアジアロード選手権オートポリス。しかし玉田選手は困難に直面していた。昨年のアジアロード選手権オートポリスは鈴鹿8耐で負ったケガのためやむなく欠場。アジアロード選手権のSS600マシンでは走っていなかったのだ。加えてこの週末の天候は季節外れの秋雨前線が停滞し、雨と霧のウェット路面。マシンのセッティングを詰められないでいた。ストレートや下りセクションでは速いのだが上りセクションでライバル達に追いつけない。たまたま居合わせた伊藤勇樹選手に「ここ(オートポリス)のレインセッティングはどうやるの?」と冗談交じりに聞くほど走行経験が少なかった。

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迎えた公式予選。それまでのウェット路面から予選日は時々日射しが入る天候でこのレースウィーク初のドライ路面。ぶっつけ本番で臨んだ。しかしここからが玉田選手の本領発揮。微妙な天候と路面状況を読みながらなんと予選5番手を獲得した。だが玉田選手は「ポールポジションの藤原(克昭)選手から1.38秒も遅れている。この差は歴然」と全く納得していない。

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冷静なレース状況分析と頭脳戦で勝ち取った今季初優勝

翌決勝日。朝のうちは小雨と霧が出ていたものの、レース1がスタートする頃には晴天となり路面は完全ドライ。朝のフリー走行でドライのセッティングを確認しようとしたがそれも叶わず決勝レースを迎えた。結果は10位。悔しい結果となった。しかし玉田選手は諦めない。言い訳もしない。レース2に向けてマシンのセッティングを変えて臨んだのだった。それは前後のバランスが崩れるかもしれないほど大きな変更だったという。

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決勝レース2。天候は晴れ。路面温度はレース1よりも高い。ホールショットは小山知良選手が奪う。玉田選手は藤原選手に次ぐ3番手について周回を重ねる。玉田選手はここで前を行く二人の走りをみて冷静にレース状況を分析していた。路面温度はかなり上がりタイヤに厳しい。その中でむやみにトップ争いをするのは得策では無い。タイヤを温存させる作戦に出た。そして、トップの小山選手の動きに照準を合わせてスパートをかけるつもりでいた。しかしここでJakkrit Sawangswat選手が玉田・藤原選手を抜いて2位にポジションを上げる。そこで玉田選手は藤原選手をパス、3番手でトップ2台の様子を伺う。そして2台がバトルをしている時に隙を見つけて一気にトップに浮上!その後はアクセルを緩めずトップチェッカーを切った!

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「ここはKawasakiのホームコース。藤原選手の2連勝は絶対に阻止したかった。ここで優勝を止めれば今後の流れが変わる。できればその(阻止する)役目を自分が担いたいが、Hondaのライダーであれば誰でも良いと思った。」と語っっていた玉田選手。Hondaのチャンピオン獲得のためにというチーム目線で語れるようになったのは鈴鹿8耐の監督を経験したからではないだろうか、と感じたオートポリスの玉田選手であった。

photo & text : koma

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