ゼッケン12を取られた悔しさはレースで晴らす?
第37回鈴鹿8時間耐久ロードレースの記者発表会でヨシムラ スズキ シェルアドバンスの加藤陽平監督はそうコメントした。これは並々ならぬライバル心、心中穏やかではないだろうと、レース後に冒頭のコメントの意味を聞いてみたところ、意外な答えが戻ってきた。「実は#12 をレジェンドチームに、と提案したのは自分なのです」「あれは会場を和ますためのコメントでした」と。いやはや赤面である。
今年創立60周年を迎えるヨシムラジャパン。2チーム体制は長年応援していただいてきたファンの皆さまへの恩返しであると言う。ファンの方々がまとまって応援できる場所=ヨシムラ応援席でみなさまに盛り上がって欲しいと言う願いだった。もちろん、参戦するからには#12と#34は真剣勝負、一歩も引くつもりはない。目指すは優勝。そのために倒すべき相手・ライバルはホンダ(F.C.C. TSR HondaとMuSASHi RT HARC-PRO.)であった。
2位というポジションが今の実力なのかな
今年の鈴鹿8耐、#34ヨシムラ スズキ シェルアドバンスは2位表彰台。しかも2年連続である。鈴鹿8耐で表彰台に昇ることの難しさはみんな知っている。もちろん優勝できなくて悔しいに違いないが「2位というポジションが今の実力なのかな」と言うコメントは控えめではないだろうか。そんな疑問を抱いて加藤監督に聞いてみた。
「去年の2位の方が嬉しかった。前年2012年はリタイアで終わっている。リザルトゼロからの2013年のスタート。もちろん勝ちを狙っていったのだが、まずは完走して自分たちの実力を見せることを念頭に闘った。今年は、昨年のリザルト2位をベースにしてどうやって1位と闘うの?を考えて闘った結果が2位だった」
では何故それが今の実力なのか?
雨セットと言う言葉がライダーに不安を与えてしまった
「ドライのセッティングでレインタイヤを履いたこと」がフィーチャーされていること自体が負けた原因だと言う。他のトップチームもドライセットにレインタイヤで出ているはず。ヨシムラも例年、雨だからといってセットは変えなかったと言う。では何故?
事前合同テストに遡る。今年はマシンのセッティングを大きく変えたこともあり雨の走行時に上手く乗れなかった。そこでセットを少し変えたがそこで「雨セット」と言う言葉が出てきてしまった。そして「雨セットでないと走れない」的な雰囲気になってしまった、と言う。
本来であればその(少し変えた)セットをベースにドライを走ってさらにセッティングを詰め、ドライの時でも雨の時の状況を考えてセットすべきであったがそれを行えなかったのは監督としての判断ミスがあったと。
結果的にそれがライダーの中に「雨セットにしてもらえましたか?」という心理的な不安を生ませてしまったのだと言う。乗った時も精神的な不安をぬぐいきれない中での「攻め」になるので自信を持って攻められなくなる。「雨には雨セット」。確かにそれは雨の時は不安もなく走れるかもしれないが、加藤監督の経験では「それでは勝てない」ことを知っているから「ドライ(セット)で雨でも乗れるセットを見つけるべきだった」と加藤監督。
続く
photo & text : koma