『成長ではなく成果を求められている』渡辺一馬選手が掴んだ栄光

2014/01/13

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2013年全日本ロードレースST600クラスチャンピオン・渡辺一馬選手。端正な顔立ちは二輪レースを闘うライダーというよりエリートビジネスマンのようである。そのハンサムなルックスに女性ファンも多い。しかし、上品な顔立ちからは想像もできないアグレッシブな走りで2013年シーズンのチャンピオンを勝ち獲った。全日本ロードレースST600クラス参戦5年目で頂点に立った渡辺選手は意外にも遅咲きである。名門コハラレーシングに移籍して3シーズン目の念願のチャンピオンである。

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渡辺選手は今シーズン当初から「勝てる体制、勝てるチームを整えてくれた。チームへの、小原監督への恩返しも込めて今年は絶対にチャンピオンを獲らなくてはいけない」と常に言ってきた。予選(一発)の速さには定評がある、しかし決勝レースでなかなか結果を出せない自分に苛立つ時期もあった。しかし今年の渡辺選手は今までとは違っていた。勝つためにどうすれば良いのか、を冷静に考えていたように見える。今シーズンからタイヤをスイッチし、シーズン前のテストからずば抜けた速さを見せていたが開幕戦から2レースは不振に苦しめられた。転機は第3戦目の筑波で訪れた。コースレコードを狙っていたという予選でポールポジションを獲得、決勝に向けて手応えを掴んでいた。そして迎えた決勝レース。中富選手とのデッドヒートを抑えて初優勝を果たす。
「もう成長ではなく、成果を求められている」と語った渡辺選手のコメントに変化を感じた人も多かったことと思う。この優勝で渡辺選手は焦りやプレッシャーから解放され、冷静にレース展開を考えられるようになったように感じる。

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C06D3849 筑波の優勝で流れを変えた渡辺選手は鈴鹿8時間耐久ロードレースにも参戦、そして迎えた後半戦SUGOではコースレコードを更新するタイムでポールポジションを獲得。決勝レースでも圧倒的な速さを見せつけポール・トゥ・ウィンを飾る。冷静なレース展開を考えられるようになった渡辺選手だが、速さを追求するアグレッシブさは失っていない。岡山大会の予選でポールポジションを獲得したが、前日のARTスポーツ走行で自らが出した非公式コースレコードタイムを更新できなかったことを非常に悔しがっていた。(スポーツ走行のタイムは公式記録にはならない)
この飽くなき速さの追求に、必ず勝つことを意識したクレバーな走りを上手くバランスさせることができた渡辺選手は、岡山大会でも優勝を飾り3連勝。この時点でランキングトップに立った。

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そして迎えた最終戦。渡辺選手はかつてないほどのプレッシャーに苛まれていた。それは当然であろう。ST600クラス初優勝を果たしたその年の最終戦にチャンピオンがかかっているのである。しかし渡辺選手はそのプレッシャーを見事にはねのけ、チャンピオンを獲得したのである。決勝レースではチャンピオンを獲ることにこだわり2位でフィニッシュ。もちろんレーシングライダーだから勝ちたかったはずだが一番やってはいけないことは転倒。慎重に、と言うと弱気に聞こえるかもしれないがシリーズで闘う以上はチャンピオン獲得が第一命題となる。そのための走りを誰が責められようか。チームは渡辺選手にチャンピオンを獲らせる体制を整えた。渡辺選手はその小原監督、アドバイザーの伊藤真一選手、そしてチームスタッフへの感謝の気持ちを伝えるためにチャンピオンを獲得した。この一年で渡辺選手は速さと勝ち獲るための走りと自信を身につけた。それは成長ではなく、紛れもなく「結果」である。

結果を残した渡辺選手は2014年シーズン、どのような活躍を見せてくれるのだろうか。多くの全日本ロードレースファンが注目誌、期待している。

photo & text : koma

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