岡崎静夏(Kohara Racing Team)がMotoGP日本グランプリのMoto3クラスへワイルドカード参戦を行った。2度目の世界への挑戦。
初めての挑戦は2年前。何もできなかった。世界の走りに圧倒された。でも転んでもただでは起きない岡崎、世界の走りを目の当たりにした経験を全日本ロードレースに活かしてきた。フィジカルもメンタルも鍛えた。
飛躍的とは言えないが岡崎の戦績は向上している。予選では上位に位置し、決勝レースでもトップグループの一角を走るようになった。今年ベストリザルトの5位入賞を果たした。
男女のクラス分けが無いロードレースに敢えて挑む岡崎のファイティングスピリット
たいていのスポーツは男女別である。女子マラソン、女子テニス、女子陸上。。。しかし、モータースポーツは男女の区分けがなく同じ土俵で闘う唯一のスポーツではないだろうか。男性ライダーに混じって体格的、身体的に不利な女性が挑む。でも岡崎は意に介さない。「だからやりがいがある」「不利なのはわかっている。それを言い訳とせずどこまで挑めるか、を試したい」と力強いコメントを残している。可愛らしい外見からは想像できない闘志を内に秘めている。
単独でもタイムを出せるようになった。
誰かに引っ張ってもらう、速い人の後ろにつくことでタイムを出すことが多かった岡崎、しかし今年、単独で走ってもタイムを出せるようになった。「自分一人で走るとタイムを出せなかったのですが、単独でもペースを作れて、自分の走りを細かく理解してどうやってタイムを出せるか、という事を考えて走れるようになりました」ただがむしゃらに走っていた昔とは違う。
「去年は自分の手数が増えたと言う実感がなかったのでワイルドカードにエントリーしませんでした。今年は自分が成長したかな、と思ったのでもう一度チャレンジしました」
「そこ?」というところでつまずいた初日
迎えた初日。デジタルメーターに手こずった。モード表示にいろいろな設定があり、なにより回転数を体感で掴めずデジタルメーターに神経が行ってしまい本来の走りができなかった。「自分のやりたいブレーキング、コーナリング、アクセルワークが全然できずに攻められませんでした。モテギ入りする前はもっと走れるはず、と思っていたのに走りに慣れるための初日となってしまいました。」
2回目の挑戦は23位で終わった
ウィーク2日目:公式予選。目標タイムに届かない焦りから落ち着いて走ることができず予選29番手。「走りに集中するというより焦りからあれこれも考えなくちゃ、という強迫観念に近い思いで走っていたので走りを楽しむ余裕が全くなかったです。視野が狭かったと思います。」2分1秒台を目標タイムにていたが本来の自分の走りができなかった。
ウィーク3日目:決勝レース。29番手からスタートした岡崎はなんとか先行するグループに追いつこうとするも届かず単独走行を強いられ、2回目の挑戦は23位で終わった。
「率直に悔しいです。全然ついて行けませんでした。スタートしてからの1コーナーでも絡めず、狙っていたタイムも出せず、アベレージタイムも悪くて、なによりもミスが多かったです。理想とするライントレースだったり、アクセルワークができず、ブレーキングのミスが多かった。突っ込み過ぎて止まりきれず安定感が全然無かったです」と悔しがる。
普段乗り慣れている全日本とは違うMoto3マシンにレースウィークに入って初めて乗り込む。一方レギュラー参戦しているチームは開幕からここまでマシンの熟成を重ねており、ハンデは否めない。最高速度もトップライダーとは約20km/hも違う。それでも世界のライダー達と一緒に走ることで何かを掴もうとする岡崎の前向きな気持ちがある。
世界の舞台で学んだ事を全日本ロードレースに活かす
今回の参戦で得たものもある。「前回はブレーキングから立ち上がりまでを一連の流れの中ですることを習得しました。今回は、そのスムーズな一連の流れの中にも短い時間で止まって、短い時間でアクセルを全開にする、とメリハリをつけることがタイムに繋がり、そのためのセッティングが必要だということを実感しました」
小原監督も気づきを見つけたことに参戦の意味を感じている。
「正直、真っ当に闘えないことはわかっていました。2年前は初めてだったので衝撃が大きかったようですが、今回は「わぁ、凄い」と驚くだけではなく、自分に何が足りない、いまより一歩前に進むためには何をすべきなのか、をこのウィーク中に考え、今のままではいけない、という気づきになったので参戦した意味があったのかなと思います」
「その気づいたことを今後の全日本ロードレースにどう活かして行くのか、は本人次第です」
と今後の岡崎に期待を寄せている。
「全日本ロードレースに活かしたい。そのためには自分の意識も乗り方も変えなくてはいけないと思います。今回世界のライダー達と走ってみて、“あぁ、こうすればいいのか”というところを掴めたような気がします。」
2回目の世界への挑戦は決して満足のいく結果ではなかった。しかし、世界の猛者どもを相手に女性一人で挑む岡崎の姿は多くの女性ライダーに共感と勇気を与えたと思う。そして最終戦鈴鹿に向けて新たな気持ちで臨む岡崎の勇姿に期待したい。
photo & text : Toshiyuki KOMAI
(走行写真は全て全日本ロードレース)