今年の鈴鹿8時間耐久ロードレース(以下:鈴鹿8耐)の主役はTeam KAGAYAMAだった、と言って誰も異論を唱える人はいないだろう。
そのチームを引っ張ってきたのは加賀山就臣選手。2011年、自らチームを設立、チームオーナーとして、ライダーとして闘い続けてきた。その加賀山選手が今年の鈴鹿8耐でどデカイ花火を打ち上げた。
序章は鈴鹿8耐記者発表会。芳賀紀行選手がペアライダーだと発表。会場からは響めきが起こる。それは当然だ。芳賀選手と言えば全日本ロードレース、ワールドスーパーバイクを含めてYAMAHAの印象が強いライダーだがTeam KAGAYAMAからの参戦はSUZUKIに乗ると言うことを意味する。マスコミからの質問に「SUZUKIのバイクに乗るんじゃなくて「カガヤマのバイクに乗る」と言って欲しい」と答えた加賀山選手。そこには芳賀選手への思いと自身への強い決意が感じられた。
そして加賀山選手はもうひとつ、大ニュースを提供する。Team KAGAYAMAからケビン・シュワンツ選手参戦!これは世界中の二輪レースファンを震撼させた。あのケビン・シュワンツ選手が8耐を走る!誰もが驚き、喜んだ。反面、本当に走るのか?走れるのか?という不安も。。
でもすぐに杞憂に終わることになる。ケビン・シュワンツ選手は8耐合同テスト初日から2分14秒台をたたき出して周囲を驚かせる。そして、その後の活躍は鈴鹿8耐レース結果が物語っている。
芳賀紀行選手、ケビン・シュワンツ選手、この超ビッグスター2人が8耐に参戦した理由は「ユキオだから」と語っている。そう、加賀山就臣というオトコだからこの二人がタッグを組み、共に闘うことを決意したのだ。
加賀山選手自身、昨年の全日本ロードレースオートポリスで負った怪我が完治せず未だに松葉杖で歩く状態。でも自らがトップタイムを出さないとチームの士気が下がる、と傷ついた身体にムチ打ちながらのタイム更新。並大抵の精神力ではできないことだ。その懸命な姿は誰の眼にも勇姿として映り、自然とチームの士気は上がる。
また加賀山選手はチームオーナーとして山のようなチーム運営の仕事もしなくてはならない。レースに集中しなくてはならないのにチームのことやスタッフのことを考えて自ら動く。そんな加賀山選手だから廻りの人たちも「加賀山選手のために」「加賀山選手が走りに集中できるように」懸命に動き回る、協力を申し出る。その一例が、意外と知られていないがTeam KAGAYAMAのガラス張りの立派なホスピタリティブース。実は友人である脇阪薫一選手が所属するチームのホスピタリティブースを貸与してくれた。装飾関連も仲間が無料でカッティングシートを作る、特注のエアコンシステムを持ち込む、と全て仲間が手作りで仕上げた。ものすごいホスピタリティブースの出現に「Team KAGAYAMA、カネあるなぁ。。」などと思った人もいたかもしれないが実は全て廻りの人たちが加賀山選手のために協力して築き上げたモノなのだ。
加賀山就臣というオトコはとにかく廻りの人たちを惹きつける。「日本の二輪モータースポーツを盛り上げたい」その一途な想いが彼を動かしている。その侠気に感銘した仲間たちが集まり、彼を支える。そして強靱なチームワークが生まれる。そんなTeam KAGAYAMAの鈴鹿8耐挑戦は3位表彰台という結果を残した。これは驚くべき快挙だ。わずか半年、しかも、全日本ロードレース参戦と平行しての8耐挑戦。Team KAGAYAMAが まさに一体となって闘ったことの証である。
さらに加賀山選手は二輪レースを盛り上げるための一石を投じた。今年の鈴鹿8耐は明らかに観客の数が増えた。これでハッキリした。「二輪レースの集客増には二輪レースで魅せるしかない」と。。そして忘れてはならないのは、その中心となったのが、メーカーでもなく、ワークスチームでもない「いちプライベーター」であったと言うことだ。規模としては全然小さなプライベーターがここまで鈴鹿8耐を盛り上げた、感動を呼んだ。それは何を意味するのか。日本の二輪モータースポーツ界に問題提起すると同時に、魅力あるレースをすればお客様は観に来る、と言う事を証明した。それを加賀山就臣と仲間たちが見事にやってのけたのだ。
photo & text : koma