ファクトリー相手に真っ向勝負を挑む。加賀山就臣選手の本気

2015/08/16

AI2Q1548悔しさ半分、嬉しさ半分

2015年鈴鹿8時間耐久ロードレース、Team KAGAYAMAは、3年連続の3位表彰台獲得で幕を閉じた。ゴール後、チェッカーライダーの芳賀紀行選手を迎えた加賀山就臣選手は泣いていた。嬉しさ半分、悔しさ半分だったという。悔しい?。。「あの」鈴鹿8耐で表彰台に上がることは並大抵の事ではない。ましてや3年連続表彰台は傍から見れば快挙でしかない。しかし、加賀山選手は今年、ファクトリー相手に本気で優勝を狙っていた。だからこそ、勝てるマシンを造ってあげられなかった自分に悔しさを感じていた。

AI2Q3329人がやっていないことを成し遂げるのが自分の目標

初年度、ケビン・シュワンツ選手を招聘して「鈴鹿8耐の盛り上げ」に大きな一石を投じた。その後の8耐プロモーションを見れば誰の目にも明らかである。2年目、現役Moto2ライダーのドミニク・アガータ—選手を招聘。3位表彰台の活躍はMotoGP界でも有名となり、若手ライダーの中で8耐への興味・関心に大きく寄与した。そして今年、誰もが注目する中で発表された清成龍一選手の加入。大きな話題となった。「本気で勝ちたいと思ったら清成しかいなかった」と加賀山選手。「プライベーターとして喜ぶ成績は狙っていない。ファクトリーに勝つことがゴール。人がやっていないことを成し遂げるのが自分の目標」

AI2Q2023AI2Q5083_1予選タイムはあの二人がいたからこそ出すことができた

芳賀紀行選手と清成龍一選手、この経験豊かな二人のライダー加入は加賀山選手に大きな安心と共に競争心を与えた。「紀行と清成がいるから自分は安心してレースに集中できる。この安心感は大きい」と絶大なる信頼を寄せている。反面「うかうかしていると自分が(二人に)抜かれてしまう。レーシングライダーとしてそれはイヤだ」。予選でたたき出したタイムはレースウィーク最速の2分7秒594。「あの二人がいたからこのタイムを出すことができた」と加賀山選手。負けず嫌いの加賀山選手の底力を引き出した芳賀選手と清成選手の存在。

AI2Q1546_1ライダーの判断から導き出された6回ピット戦略

迎えた決勝レース。SCが6回も入る波乱のレース展開を逆手に取り、臨機応変に戦略を変えていく。ここでも経験豊富な3人のライダーだからこその判断が活かされた。「何がどうなったら有利に働くのかを、わかっていた」「清成はSCが入った時点で(1スティントの)距離を延ばせば延ばすほど有利になる、との判断で自分の周回数を延ばした」と加賀山選手。加賀山選手自身も苦しい走行状態ながら「6回ピットでいける」と、ピットインのサインボードを無視しながらなんと33周まで周回を引っ張った。すると斉藤雅彦監督以下スタッフ総出で6回ピットの場合の戦略を立て直す。事前テストから2分11秒で走った場合、12秒の場合、13秒の場合、と各ラップ毎の燃費計算データをしっかりと蓄積していたので臨機応変に戦略を立てられたという。「耐久レースは事前準備が全て」と加賀山選手。

IMG_8474無給水で走り切った33

マシンは途中からトラブルを抱えていた。それでも各ライダーは走行を続ける。ここで加賀山選手は驚愕の行動に出る。なんと走行中の給水を止めたのである。「自分は不器用だから、シフトアップすると水が飲めない、水を飲むとシフトアップができない。ラップタイムが落ちるくらいだったら水を飲むのを止めよう」と。。しかもその状態で「6回ピットが可能かも」と判断して33周まで引っ張った。当然脱水症状となり、ラスト5周は腕に全くチカラが入らず景色が白黒であったそうである。そこまでやるのは、チームのため、二人のライダーのためである。「例えここで自分が潰れても全力で走り切ればポジションは落ちないし、あとは紀行と清成が何とかしてくれる、という心の支えがあった」と、ここでも芳賀選手と清成選手への絶大なる信頼感が加賀山選手の懸命の走りを支えた。

AI2Q4454最強のオールジャパン体制

「就臣から声がかかる限りこのチームで走る」と芳賀選手。「自分はつなぎ役」と控えめのコメントだが「就臣を立てて、もしも(加賀山選手が)ダメになった時は清成と二人で全力でバックアップする」「引き受けた以上、就臣をオトコにしたい。目指すのは優勝」と、芳賀選手と加賀山選手の友情は固い。清成選手への信頼も厚い「清成はすごい。勢いがあるし、燃費を稼ぎながら速く走れるのは彼の才能。1スティント29周というのは清成だからこそできたこと」。斉藤監督も「チーム力は3年前と比べて格段に進歩・向上している」と言う。「ライダーパッケージでは今年が最強のチーム」。

IMG_8367加賀山選手が築き上げてきたTeam KAGAYAMA。加賀山選手だからこそみんなが集まり、加賀山選手のためだからこそみんながチカラを出し切ってまとまる。このチームの今後の活躍、そして来年の鈴鹿8耐が今から楽しみである。

photo & text : koma

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