Mishina’s Eye Vol.7

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1985年夏。
1983年ワールド・グランプリ500ccクラスでフレディ・スペンサー選手とグランプリ史上最も激しい戦いを繰り広げ、その年を限りにグランプリを引退したケニー・ロバーツ選手。1978年にグランプリ500ccクラスにフル参戦開始。デビューイヤーから3年連続世界チャンピオンに輝やき「キング」と呼ばれた。そう、あの、ケニーが鈴鹿サーキットに優勝を狙うレーシングライダーとして帰ってきた。みんなが注目していた。同じ土俵で戦うライダー、筆頭は現役WGPライダーのワイン・ガードナー選手だが、日本人ライダーの中にも並々ならぬ闘志を燃やしているライダーはいた。その一人がモリワキからエントリーの八代俊二選手。当時ホンダやヤマハは水冷エンジン、スズキは油冷エンジン。そしてリアはシングルサスペンションが主流。対してモリワキはモリワキ・オリジナルのリブ付きアルミフレームにリア2本ショック(スイングアームを貫通して下側にマウント)にホンダの空冷CBX750のエンジン搭載のモリワキZERO-X7。茹だるような暑さの予選、さすがにケニーやワインには少し及ばなかったが、日本人最速、この時期としては空冷エンジン車として驚異的なタイムをたたき出して見る者を唸らせた。みなさんご存知の通り、レースはスタート時エンジンがかからず短パンにビーチサンダル、サングラス姿の平 忠彦選手がマシンのテールを暫く押して、ようやくエンジンスタート。ポールポジションから60位近くまでポジションを下げてしまった。そして予選3位だった八代選手もエンジン始動に手間取りかなり後方スタートとなってしまい、途中コンビを組む宮城 光選手が130Rで転倒し、大破したマシンを押して何とか帰ってきた。一方ケニーから平選手にライダー交代、スタートから約1時間半の時点でワインから交代した徳野政樹選手を平選手が抜いてついにトップへ。その後ヤマハFZRのケニー・ロバーツ/平 忠彦選手組がレースの主導権を握り続けたが最後の交代を済ませ、平選手が快調にトップ走行中、優勝まで残り約30分。エンジンがトラブルをおこし残念ながらホームストレートでストップ。この時から鈴鹿8耐悲願の優勝へ向けて平 忠彦選手の物語が始まったといっても良い。神様がファンのためにお膳立てしてくれた大きなプレゼントのプロローグ。それを人は「鈴鹿の魔物」と呼んでいると私は思う。結局このレースの勝者はワイン・ガードナー/徳野政樹選手組。ワインが最後2スティント連続走行、レギュレーションぎりぎり、レースの約2/3をライディングした。

鈴鹿8耐の初期において、最後2スティント連続走行での逆転優勝が3大会ある。
1980年カワサキのグレッグ・ハンスフォード/エディ・ローソン選手組をヨシムラのウェス・クーリー/グレーム・クロスビー選手組が追走。クロスビー選手が最後連続走行でハンスフォード選手を追い詰めて逆転優勝。そして2回目がこの1985年。3回目は1987年。残り5分、トップを走っていたヨシムラの高吉克朗/ギャリー・グッドフェロー選手組の高吉選手が2コーナーで周回遅れと接触し転倒。ヨシムラのブルーライトが天空を照らした。ヤマハのケビン・マギー選手が2スティント連続走行で約10秒後方まで迫っており、マシンに駆け寄る高吉選手の横を通過し逆転優勝、ヤマハに鈴鹿8耐初勝利をもたらした。逆転劇を見せた3人の共通点はクロスビー選手ニュージーランド、ワイン・ガードナー選手とケビン・マギー選手オーストラリアと南半球出身でタフネスぶりを見せつけてくれた。皮肉なもので1987年、平 忠彦選手は前週のフランスグランプリで負傷し、監督として鈴鹿での初勝利をライダーとしては複雑な気持ちで迎えた。

1985年に戻るが、鈴鹿8耐にケニー・ロバーツ選手が参戦するということで、サーキットへの来場者が飛躍的に増えた。15万人を超えたのではないかな。今に比べてまだまだコースサイドの観客席も整備されておらず、土手の上の狭い通路までびっしりとお客さんが入っていて、私はケニーの走りをS字で見たくて練習走行を見に行ったのだが、移動にかなり時間がかかってしまった。ケニーのS字の切り返しはフロントフォークが伸びる間もなくクイックで、スムーズで綺麗だったなぁ。
決勝日、放送席へサーキットホテルからの移動も早朝にもかかわらず園内は大勢のファンで溢れかえっていた。当時、グランドスタンド入口にスタンド券を販売する小さなチケットBOXが置かれていたが、チケットを買い求めようとするお客さんの勢いに押され、風に吹かれて水面を漂う落ち葉のごとくチケットBOXがあっちへ行ったり、こっちに来たり、中から販売員の悲鳴やお客さんの怒号が飛び交うシーンを目の当たりにしてしまった。

今回は手元に残っている写真が少なくてごめんなさい。。1985年はTBCビッグロードと筑波フェスティバルのエピソードがあります。それはまた次回・・^^;)