全日本ロードレース第1戦NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース:決勝レース日の朝フリー。予選が中止となった昨日と同じようなコンディションの場合、走るのかどうか不安だったがほぼ全車出走した。
アウトラップから尋常でない速度で飛ばしていたのが長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)。ダンロップのウォームアップ性の高さを活かして積極的に走り込む。この寒い時期の朝フリーでなんと5秒台に入れてきた。2’05.935。2番手は中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)2’06.468、3番手は渥美心(YOSHIMURA SERT Motul)2’07.231、4番手:水野涼(DUCATI Team KAGAYAMA)2’07.575、5番手に岩田悟(Team ATJ)が入ってきた2’08.745。
決勝レースは12:20から14周で行われた。ホールショットは水野が奪う。序盤から攻められる長島が逆バンクで水野のインをズバッと刺すとそのままオープニングラップを制する。しかしストレートスピードが速い水野が翌周のホームストレートでトップを奪う。3周終了時の最終コーナーで渡辺一樹(TOHO Racing)がタイヤバリアに食い込む転倒で赤旗中断となる。
減算無しの14周で12:50サイティングラップ開始とアナウンスされた。仕切り直しの決勝スタート。またもや長島がホールショットを奪う。中須賀、岡本、水野の順に2コーナーを立ち上がる。西ストレートで水野がなんと3台ごぼう抜きでトップに立つ。スリップを使ったとは言え309km/hを叩き出したドゥカティのストレートの速さはえげつない。そのまま水野がオープニングラップを制する。以下、中須賀、長島、岡本、渥美心(YOSHIMURA SERT Motul)、野左根航汰(Astemo Honda Dream SI Racing)、岩田悟(Team ATJ)、津田拓也(AutoRace Ube Racing Team)、亀井雄大(Honda Suzuka Racing Team)、高橋巧(日本郵便Honda Dream TP)の上位10台。
中須賀は2周目に早くも5秒台に入れて2’05”824のファステストラップをマーク。水野も5秒台に入れる。ファクトリーマシンの2台が3番手以下を離し始める。長島、岡本、渥美が表彰台争いのセカンドグループ。その後方に野左根と岩田が続く。
長島は3周目に7秒台にペースダウン。赤旗中断の間にタイヤ交換をしなかっため序盤からタイヤが厳しい。トップ3台はタイヤ交換をしていた。そのペースに業を煮やした岡本が4周目のホームストレートで長島をパス、3番手に浮上する。
トップ争いが動いたのは8周目。中須賀がスプーン入り口で水野をパスしてトップに浮上する。「ラップタイムペースが少し下がってきたので一度前に出てどの程度ペースが上がるか確認するために抜きました」中須賀にしては前に出るタイミングが早い。ペースダウンの結果、後続が追いついて台数が増えるのを避けるために早めに前に出たと言う。
渥美が最終シケインで岡本をパスして3番手に浮上する。4周目に6秒台に入れてからずっと6秒台をキープ。岡本は6周目以降7秒台。ペース差を活かして前に出たのだが9周目のS字入り口でタイヤバリアに埋もれる転倒を喫する。ここでセーフティカー(SC)が投入される。残り4周。
SCの間はタイヤが急激に冷える。特にこのウィークは寒くて風が強いのでSC明けは危険度が高い。しかし長島はダンロップタイヤのウォームアップ性がチャンスとなるので大きく左右にウェービングしてリスタートに備える。
だが同じ場所で児玉雄太が転倒、これにより赤旗中断。9周終了時点でレース成立となった。
優勝は中須賀。「あのタイミングで前に出たのが良かったです。ラップタイムペースも上がり、流れをこちらに引き寄せることになりました」
2位は水野。とにかくこの週末はDUCATIウィークと言って良いくらい注目を集めた。そして初の実戦で見せた速さは本物だった。2週間前にシェイクダウンしたマシンとは思えない。しかもまだまだポテンシャルはあると言う。「感覚的にはマシンの詰めは50%くらいではないでしょうか。自分もまだ乗りこなせているとは思えません。このウィークの入りは8秒台ですよ。そこからここまで来たのですから伸び代はまだまだあると思います」
水野とマシンが100%まで達したらどんなパフォーマンスを見せるのか末恐ろしい。
3位は岡本。ART走行の転倒からリズムが良くなかった。「赤旗後、初めてのタイヤに履き替えました。そのタイヤに合わせたセッティングができなかったのでフィーリングが掴めずペースを上げることができませんでした」
4位は長島。ダンロップタイヤがここまで注目されたことは近年無かった。長島だからこのタイム・リザルトがあるのは間違いない。ウォームアップ性を活かして先行逃げ切りを決める予定だったが路面温度が思った以上に上がり、ブリヂストン勢のラップタイムが上がった。そうなると厳しい。さらにスーパーフォーミュラ走行後の路面のラバーに悩まされた。「昨日の予選が中止になったのでフォーミュラの後の走行が決勝というぶっつけ本番でした。ラバーに乗るとグリップ感が感じられずアジャストしきれませんでした。このプロジェクトが始まって最初のレースで4位はポジティブに捉えています。一発のタイムを見せられましたし、これからですね」
開幕前から話題豊富だった今シーズンのJSB1000クラス。新規参戦チームが優勝争いに絡むなんて近年無かったこと。中須賀一強と言われて久しいが今シーズンは混戦になるだろう。こういう状況を中須賀も歓迎している。
「ドゥカティワークスマシンの水野選手、ダンロップワークスの長島選手、かつてのチームメイト野左根選手、高橋巧選手の復活、ヨシムラのスポット参戦、などかつてないくらい賑わいのある開幕戦でした。だからこっちもしっかり準備をしなくてはいけないと思います。みんなで熱いバトルを展開すれば絶対に盛り上がると思います」
次戦は4月のモビリティリゾートもてぎ。どんな展開となるのか読めないレースも最近珍しい。今シーズンは全戦目が離せないレースになるだろう。楽しみである。
優勝 中須賀克行記者会見:いつもより早いタイミングで前に出たのが結果に繋がりました
「長島選手が序盤から飛ばすのはわかっていましたが、昨日と同じコンディションと想定していたのでタイヤが温まるまでは落ち着いて行こうと考えていました。想定よりも気温が上がったので思っていた以上についていくことができました。いつもよりも早いタイミングで前に出て仕掛けたことが結果に繋がったと思っています。」
2位 水野涼記者会見:この2位は自分の責任かな、と思います
「序盤から自分が引っ張って行こうと思っていました。自分のペースが落ちた時に中須賀選手に前に行かれてしまいました。赤旗で終わってしまい中須賀選手に先行を許した結果がこれなのでこの2位は自分の責任かな、と思います。ですがこのマシンのポテンシャルの高さを感じたしみなさんにも見せられたことは前向きに捉えています。まだまだこれから詰めるところがたくさんあるので今後のマシンの仕上がりが楽しみです」
3位 岡本裕生記者会見:タイヤのウォームアップ性が課題です
「以前から自分の課題であったタイヤのウォームアップ性について赤旗中にチームと相談してウォームアップ性の良いタイヤに替えました。しかし、初めて履くタイヤだったのでマシンのセットが詰められずペースを上げることができませんでした。長島選手とバトルをしている間に先頭グループとの差が開いてしまいました」
全日本ロードレース第1戦NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース 決勝レース 上位10位の結果は以下の通り
優勝:中須賀 克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
2位:水野 涼 Astemo HondaDream SI Racing
3位:岡本 裕生 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2
4位:長島 哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI
5位:高橋巧 日本郵便Honda Dream TP
6位:津田拓也 オートレース宇部 Racing Team
7位:野左根航汰 Astemo Honda Dream SI Racing
8位:岩田悟 Team ATJ
9位:日浦大治朗 Honda Dream RT桜井ホンダ
10位:伊藤和輝 Honda Dream RT桜井ホンダ
Photo & text:Toshiyuki KOMAI