2015年鈴鹿8時間耐久レースの決勝レースはYAMHA FACTORY RACING TEAMの意表をつく(?)作戦に始まり、6回ものセーフティーカー導入という波乱の展開でしたが、ヤマハが19年振りの優勝を果たして幕を閉じました。
昨年の8耐は「レジェンド」がキーワードでしたが、今年は「MotoGPライダー」がキーワードでした。あのケーシー・ストーナー選手がMuSASHi RT HARC-PRO.から参戦。対するヤマハは現役MotoGPライダー、ポル・エスパルガロ選手とブラッドリー・スミス選手をファクトリーチームに起用、そしてF.C.C. TSR HondaはMoto2で活躍するドミニク・アガータ—選手を起用、開幕前から話題騒然でした。
朝から真夏の太陽がジリジリと照りつける晴天。気温33度、路面温度54度のコンディションの中で午前11時30分決勝レーススタート!
ホールショットは#17 清成龍一選手が奪いますが、1コーナーで#634 高橋巧選手が清成選手をパス、トップに立ちます。ポールポジションを獲得した#21中須賀克行選手はスタートでエンジンがかからずなんと20番手付近まで下がってしまいます。130Rで#12 アレックス・ロウズ選手がトップに浮上、#634 高橋選手、#104 山口辰也選手、#778 ドミニク・アガータ—選手の順にオープニングラップを通過、#21中須賀選手は7番手まで順位を上げます。
近年の鈴鹿8耐の特長である「序盤のスプリントレース並みのハイスピードバトル」は今年は見られず、中須賀選手の2分8秒496(ファステストラップ)が最速、多くのチームは2分9秒台、10秒、11秒台で走行します。25周目に#12と#634がルーティンのピットイン。それぞれ津田拓也選手、ケーシー・ストーナー選手にチェンジします。ここで#21中須賀選手はルーティンのピットインをしません。それどころかなんとそのまま3周も引っ張り28周目にピットイン、ブラッドリー・スミス選手にライダーチェンジ、会場内は騒然とします。これがその後のレース展開に大きく影響します。さらに#17 Team KAGAYAMA 清成選手は中須賀選手よりも1周遅い29周目にピットインしました。
今大会は6回もセーフティーカー(SC)が入る波乱の展開となります。SCでペースを乱されたチームもあれば、SCを利用して作戦を変更するチームもあり、情報が錯綜しました。
そして大きな波乱は33周目に起きます。#634ケーシー・ストーナー選手がヘアピン進入の110Rで転倒、マシンとライダーが激しく回転、コース上にマシンが横たわったため、この日1回目のSC導入となります。 ケーシー選手はそのままメディカルセンターに運ばれ、残念ながらMuSASHi RT HARC-PRO.の鈴鹿8耐3連覇の夢はここで終わってしまいました。
トップ争いは#778F.C.C. TSR Honda、#21 YAMHA FACTORY RACING TEAMが激しく順位を入れ替えながら展開します。両チームとも、1スティントの周回数が従来の定石と言われていた27周を大きく超えました。#21YAMHA FACTORY RACING TEAMは、第1スティント28周、第2スティント32周、第4スティント30周、#778 F.C.C. TSR Hondaは第1スティント26周、第2スティント31周、第3スティント34周、第4スティント32周で6回ピットに作戦を変更します。
#17 Team KAGAYAMAも6回ピットでした。そのスティント周回数は第1スティント29周、第2スティント31周、第3スティント33周、第4スティント33周と長い周回を走りました。ライダーへの負担も大きかったと思います。
優勝争いをするトップチームは燃費も課題のひとつでしたがマシンの燃費性能が向上とライダーの燃費走行が寄与していると思われます。
トップ争いの2チームに、#12ヨシムラ スズキ シェルアドバンス、同じく6回ピットに変更した#17 Team KAGAYAMAが加わります。
3回目のSCが解除された直後に、#12 津田選手が周回遅れのマシンに追突されて転倒、場内が騒然としますが後続との貯金があったので2番手でコース復帰します。マシンは傷つきましたが津田選手の判断でそのまま走行を続けます。
レース折り返しを4回目のSC導入時に迎えました。4時間経過後(101周終了時点)の順位は、トップ#21YAMHA FACTORY RACING TEAM、2番手#12 ヨシムラ スズキ シェルアドバンス、3番手#778 F.C.C. TSR Honda、4番手#17 Team KAGAYAMA、5番手#30 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAMのトップ5です。
110周目、この日5回目のSC導入。ここでルーティンのピットインを行った#12ヨシムラ スズキ シェルアドバンスはマシンの修復を行います。その間にリスタートが切られ、#778 F.C.C. TSR Hondaが2番手、#17 Team KAGAYAMAが3番手に浮上します。
117周目、トップの#21YAMHA FACTORY RACING TEAMが中須賀選手からブラッドリー・スミス選手へライダーチェンジ。しかし(中須賀選手の)黄旗無視でライダーチェンジしたばかりの#21ブラッドリー選手は30秒のストップアンドゴーペナルティを科せられ、その間に#778 ジョシュ選手がトップ浮上します。
残り3時間を切った129周目、#21ブラッドリー選手が#778 F.C.C. TSR Hondaドミニク選手をかわしてトップに浮上します。
その後も安定した速さをみせた#21YAMHA FACTORY RACING TEAMが8時間のゴールをトップで通過、19年振りにヤマハに優勝をもたらせました。SC導入をみて6回ピットに変更した#778F.C.C. TSR Hondaと#17 Team KAGAYAMAは、それぞれ2位、3位表彰台を獲得します。
2015年鈴鹿8時間耐久ロードレース 上位10位の結果は以下の通りです。
優勝:#21 YAMHA FACTORY RACING TEAM
2位:#778 F.C.C. TSR Honda
3位:#17 Team KAGAYAMA
4位:#30 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM
5位:#12 ヨシムラ スズキ シェルアドバンス
6位:#94 GMT94 YAMAHA
7位:#111 HONDA ENDURANCE RACING
8位:#25 Honda Suzuka Racing Team
9位:#87 TEAM GREEN
10位:#32 MotoMap SUPPLY
photo & text : koma
special thanks : Toshiya Onishi