渡辺一馬、JSB1000クラス初優勝!2位に松崎克哉。カワサキがワン・ツーフィニッシュを決めた。3位にモリワキの高橋裕紀。タイヤの選択が明暗を分けた第3戦。
カワサキのホームコースでKawasaki Team GREENがワン・ツーフィニッシュを決めた。渡辺一馬は最高峰クラス初優勝、松崎克哉は全日本ロードレース初表彰台。高橋裕紀(MORIWAKI MOTUL RACING)が3位表彰台。オートポリス特有の天候の変化に翻弄された第3戦決勝レース。明暗を分けたタイヤ選択。
全日本ロードレース第3戦「AUTOPOLIS SUPER 2&4 RACE 2018」決勝レースは予報通り朝からの雨。さらにオートポリス特有の雨と濃霧に包まれて朝から真っ白な世界となった。
朝のフリー走行は濃霧のためキャンセル、その後もレーススケジュールは二転三転した。最終的に11:50〜12:05 フリー走行、12:15〜スタート進行、12:30決勝スタートのスケジュールに決定する。
フリー走行はウェット宣言が出されて行われた。あれほど酷かった濃霧がスーッと消え、晴れ間さえも見えてくる。しかし走行開始10分で再び濃霧に覆われ赤旗中断、そのままフリー走行は終了となる。
このまま濃霧のため決勝レース中止かと思われたが再度霧が晴れてスタート進行が始まる。12:30、JSB1000クラス決勝レーススタート!この時の路面はハーフウェット。まだまだ濡れているところが多く、非常に難しいコンディションであった。
高橋巧(Team HRC)が絶妙なスタートを切り、ホールショットを奪うか?と思えたが中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)がアウトから被せて1コーナーを制する。しかし2コーナーで高橋巧がイン側からの強い加速でトップに出る。その先の第2ヘアピンで今度は中須賀がトップを奪い返し、オープニングラップは中須賀が制する。高橋巧、渡辺一樹、秋吉耕佑(au・テルルMotoUP RT)、津田拓也(ヨシムラスズキMOTULレーシング)、加賀山就臣(Team KAGAYAMA)、野左根航汰(YAMALUBE RACING TEAM)、中富伸一(HiTMAN RC甲子園YAMAHA)、清成龍一(MORIWAKI MOTUL RACING)、近藤湧也(JOYNET GBSレーシングYAMAHA)の上位10台。
序盤は、中須賀、高橋巧、渡辺一樹、秋吉の4台が先頭グループを形成する。その中で秋吉が次第に遅れ始め3台によるバトルとなる。4周目の最終コーナーで高橋が中須賀のインから立ち上がりの加速でホームストレートで抜き去る、しかし、なんと渡辺一樹が1コーナー進入で高橋巧、中須賀の2台を一気にかわしてトップに立つ。
渡辺一樹トップで6周終了。高橋巧の立ち上がりの伸びが速い。7周目の2コーナー立ち上がりで中須賀を抜くと第1ヘアピンで渡辺一樹をパスしてトップに立つ。三つ巴のバトルはレース折り返しを過ぎた9周目まで続く。このときのラップタイムは2分フラットから1分58秒台。スタート時はところどころ濡れていた路面だが次第に乾き始める。
中須賀、高橋、渡辺一樹の3台でトップ争いが展開されると思われたが、ここで後方から尋常じゃないタイムで追い上げてくるライダーたちがいた。渡辺一馬、松崎克哉、高橋裕紀である。彼らはあの難しいコンディションの中、スリックタイヤを履いてレースに臨んでいた。
渡辺一馬はオープニングラップを16番手で通過する。「序盤の3周では自分が何位にいるかさえもわからず、トップも見えなくなっていたので「あぁ、終わったな」と思いました」。しかし、「レインタイヤでは1分58秒台が限界だと思っていた」という渡辺一馬は6周目に1分56秒535を計測、ドライとレインの境界ラインを超えるタイムに入れた。乾き始めた路面ではスリックタイヤの方が断然速い。そこからは破竹の勢いでトップを追いかける。
トップ3台が1分59秒前後のラップタイムに対して、8周目:渡辺一馬1分55秒056、高橋裕紀1分55秒820、松崎1分54秒733、とトップよりも約4秒速いラップタイム。ついに渡辺一馬はトップ3台が視界に入る位置まで追い上げてきた。10周目、ジェットコースターストレートの先の右90Rコーナーのインから渡辺一樹をパスしてついに3番手浮上!さらに畳みかけるように中須賀を複合コーナーでかわして一気に2番手まで順位を上げる。
10周終了時、トップ高橋巧と渡辺一馬の差は3.3秒、高橋巧のラップタイム1分58秒305、渡辺一馬1分53秒764、その差は歴然。セクター2でのタイム差は0.8秒。そしてついに複合コーナーで高橋巧をかわしてトップに浮上する!
スリックタイヤ勢の勢いが止まらない。「序盤は転倒のリスクが高かったのですが、自分の見える範囲に一馬さんがいたのでそのペースに合わせて、離されないように徐々にペースを上げて行きました」と、オープニングラップを25番手で通過した松崎。13周目の1コーナーでアウトから高橋巧を抜き去り2番手浮上、これでカワサキ1-2体制となった。
オープニングラップ15番手通過の高橋裕紀も順位をぐんぐんと上げ、14周目の2コーナーで高橋巧をパス、3番手に浮上する。「ピレリタイヤは柔らかいので少し濡れた路面であれば序盤はブリヂストンより有利に走れるのではと思っていました」「スタートしたあと、一馬がレインタイヤの先頭グループと一緒に着いていったと思い“序盤で一馬に離されたらもうこのレースは無いな”と思っていたところ、後ろから近づいてきたマシンが一馬で“あれ?前にいたんじゃないの?”と思いました。」と高橋裕紀。
「最後の3周はとにかく長かった」と言う渡辺一馬がトップを守りきり、JSB1000クラス初優勝を挙げる!2位には松崎克哉。JSB1000クラス初表彰台を飾る。しかもカワサキのホームコースでKawasaki Team GREENが1-2フィニッシュを達成した。3位には高橋裕紀。昨年の岡山大会に続いて2回目のJSB1000クラス表彰台を獲得する。
山特有の天候の変化に翻弄されたオートポリス大会。ハーフウェットの難しい路面とレースの途中で雨が落ちるかもしれない予報の中でスリックタイヤを選択したチームが上位入賞を果たした。
「何よりもJSBで勝てるライダーにしてくれたチーム、カワサキに感謝を伝えたいと思います。フリー走行で急激に路面が乾いてきてレインタイヤでは保たないだろうとは思ったけど、「本当にスリックタイヤで行けるのか?」と弱気になっていたところを「腹くくって行こう!」と背中を押してくれたのはチームでした。チームみんなで勝ち取った勝利だと思っています。2007年の柳川選手の優勝以来、その次に自分の名前を残せたこと、さらにその場所がカワサキのホームコースのオートポリスだったという事がすごく意義深いと思います。どれだけありがとうと伝えたら良いのかわからないくらい感謝の気持ちでいっぱいです。但、ここで満足してはいけないので次は真っ向勝負して勝てるように頑張ります。」と初優勝の喜びを語っていた。
「カワサキさんとチームに支えられた結果の2位表彰台だと思っているので感謝の気持ちでいっぱいです。JSB1000クラスの凄いメンバーの中で表彰台に上がれるとは思っていなかったのでチームのおかげでここに立てていることが嬉しいです。一馬さんがスリックで行くと言うので、サイティングラップで様子をみましたが、路面は乾き始めてきているし、フリー走行でレインタイヤで走ったグリップ感と、濡れた路面をスリックで走ったグリップ感が同じだったので「スリックでも行ける」と思いました。」と松崎。
「サイティングラップに出ていくときはレインタイヤをつけていましたが目の前をカワサキの2台がスリックで通過したのでメカニックに「スリックタイヤで行く可能性が高い」と伝えてコースインしました。グリッド上につくとヨシムラさんもスリックに見えたので「上位は全員スリックなのかな」と思っていましたが、実際に他のライダーのタイヤをみたらほとんどがレインだったので非常に悩みました。しかしチームメカニックやピレリタイヤさんから「裕紀なら行ける!」と半分おだてられて(笑) 本当に賭けではありましたがスリックで行くと決めたなら“やってやろう!”と言う気持ちで臨みました。結果、本当に3位表彰台を獲得できたのでチーム、ホンダさん、ピレリタイヤさんに感謝です。」と高橋裕紀。
全日本ロードレース第3戦「AUTOPOLIS SUPER 2&4 RACE 2018」決勝レース 上位10位の結果は以下の通り。
優勝:#11 渡辺 一馬Kawasaki Team GREEN (スリックタイヤ)
2位:#15 松崎克哉 Kawasaki Team GREEN(スリックタイヤ)
3位:#72 高橋裕紀 MORIWAKI MOTUL RACING(スリックタイヤ)
4位:#1 高橋巧 Team HRC(レインタイヤ)
5位:#46 星野知也 TONE RT SYNCEDGE4413(スリックタイヤ)
6位:#26 渡辺一樹 ヨシムラスズキMOTULレーシング(レインタイヤ)
7位:#31 津田一磨 Team BabyFace(スリックタイヤ)
8位:#34 岡村 光矩 KRP三陽工業&RS-ITOH(スリックタイヤ)
9位:#21 中須賀 克行YAMAHA FACTORY RACING TEAM (レインタイヤ)
10位:#22 児玉 勇太 TEAM KODAMA(スリックタイヤ)
photo & text : Toshiyuki KOMAI