2019年の鈴鹿8時間耐久ロードレース合同テストが7月9日から11日まで3日間行われた。
当初は3日間雨の予報であったが、初日は曇り、二日目は晴れ、最終日が雨、と鈴鹿8耐に必要な天候全てのテストができた。但し、路面温度が思ったほど上がらず二日目の45度が最高であった。鈴鹿8耐本番では50度を超え、時には60度近くまで上がる鈴鹿8耐ならではの高い路面温度でのテストができなかったことが気がかりである。
晴れでも、曇りでも、雨でも速かったのがホンダワークスの「Red Bull Honda」であった。チーム体制は高橋巧、清成龍一、ステファン・ブラドルの3名。清成はWould Super Bike(WSBK)レース参戦のためテストは欠席した。
今年、全日本ロードレースで圧倒的な速さを見せつけて連勝を飾っている高橋巧。ワークス2年目でチームもマシンもまとまり、そして高橋巧自身が乗れている。マシンを耐久仕様に変えているとは言え初日に2分5秒台をたたき出す。今回のマシンは高橋巧が造り込んできた。高橋のベースセットに清成とステファンが合わせるのだが、3人揃っての走行は鈴鹿8耐レースウィークに入ってからとなってしまう。
「テストは順調に進んでいます。タイムも安定して出ているしアベレージも良いです。自分が安定してタイムを出せる状態に持っていってあとはレースウィークに入ってから調整しようと思います。」テストは順調だが満足のいく仕上がりにはなっていないという。このタイムをみれば完成度の高いレベルにあるように見えるのだがもっと詰めていきたいと言う。「レベルを上げた状態に仕上げておけばレースウィークに余裕を持って走れますからね」「確実に去年よりは速いペースで走れると思います。何も無ければ勝てる自信はありますが、鈴鹿8耐は何が起きるかわかりません。」アベレージを意識しているという高橋。燃費との闘いでどこまでアベレージを上げられるか、理想のレベルに持っていけるまで精力的に走り込んでいた。
鈴鹿8耐5連覇がかかっているYAMAHA FACTORY RACING TEAM。ライダーは中須賀克行をエースに、アレックス・ローズ、マイケル・ファンデル・マークのいつのもトリオ。お互いにリスペクトし合うひとつにまとまったチームだが先日のWSBKイタリアでマイケル・ファンデル・マークがケガをしたのが心配される。ケガから2週間後のイギリスに参戦、翌週のアメリカにも参戦予定で万全ではないが順調に回復しているようである。本人から中須賀宛に「絶対に鈴鹿8耐に出るから!」とメールが来たそうである。
ヤマハが吉川和多留監督、中須賀克行選手合同インタビューを実施した。シーズン開幕前のセパンテストから今シーズンと鈴鹿8耐を見据えてマシンを見直したところが結果的にバランスを崩してしまい、全日本ロードレース前半戦では苦しんだが鈴鹿8耐に向けてモディファイを加えてきたことがまとまりつつある。しかしホンダワークスに立ち向かうには更なるポテンシャルアップが必要だと言う。
「鈴鹿8耐は一人で闘うのではなくチームで闘う。マシン、チーム、ライダーのトータルバランスが必要。そう言う意味ではライダー3人の信頼関係とチームとの連携は非常に高いレベルにある」と中須賀。
「この3人で組んで3年目、しっかりと相手を理解し合っています。マシンのセットにしても「これだったら彼もいけるだろう」と相手を思いやる気持ちを持っています。監督として言いにくいこと、例えばタイヤ。本数制限上、一人がずっとユーズドで走らなければならないとき「一周で止めといたから、あとはオマエが行ってタイムアタックしろよ」とお互いをわかり合って気を使ってくれているので監督としてとても助かっています。3人の中でしっかりとコミュニケーションが取れています。昨年、中須賀がケガした瞬間にアレックスとマイケルが「オレ達でカバーしよう」と言う雰囲気になりました。今年は万全ではないかもしれませんが、そこを補って余りあるチーム力はあると思っています。」と吉川監督。
「昨年自分がケガで決勝レースを欠場しましたが、アレックスとマイケルが勝ってくれて4連覇を繋いでくれました。今年、マイケルがケガをしましたがレースウィークに彼が乗っても乗りやすいマシンになるように心がけて仕上げています。5連覇へのプレッシャーは意識していません。我々は5連覇のために闘っているのではなく、一戦一戦を勝つために闘っています。その結果が4連覇、5連覇に繋がると思っていますので。
鈴鹿8耐は何かが起きるかわかりません。どんな場面に遭遇しても的確に判断して対応できる準備をしっかりと進めるだけです。」と中須賀。
「決勝レースに対して如何に幅広く準備ができるか、様々な場面を想定して対応できるか、そして決勝レースまでにどれだけ安全マージンを築けるかを考えて準備することと、ライダーに安心して乗りやすいマシンを提供することがチームの役割だと思っています。」と吉川監督。
加賀山の加入によって優勝に期待がかかるヨシムラスズキMOTULレーシング。ライダーは加賀山就臣、渡辺一樹に加えて今年もシルバン・ギュントーリの3人で臨む。マシンは渡辺一樹のセットで加賀山とシルバンが合わせて乗る。初日は総合6番手、二日目総合5番手につけてセットを煮つめる。加賀山にとって初めてに近い雨のブリヂストンタイヤ。最終日に雨が降り精力的に走り込んでいた。雨の最終日は総合2番手につけた。
昨年のEWC世界チャンピオン:F.C.C. TSR Honda France。今シーズンはル・マン24時間耐久レースの戦績が響きランキング3位と厳しい状況に置かれているが、最終戦鈴鹿で逆転チャンピオンの可能性は残されている。ライダー体制は、ジョシュ・フック、フレディ・フォーレイ、マイク・ディメリオの3名。世界耐久を転戦するマシンは耐久性とメンテナンス制を考慮した造りとなっており鈴鹿8耐だけに参戦するトップチームと比べると速さに欠けるが、最終戦鈴鹿にはワークスマシンが投入され、常にトップ3近辺に位置している。
全日本ロードレースJSB1000クラス2年目の水野涼が今シーズン開花。強さを速さを備えてきた。ライダーラインナップは、水野涼、ドミニク・エガーター、チャビ・フォレス。ドミニクは昨年もハルク・プロから参戦している。英国スーパーバイク選手権に参戦しているチャビ・フォレスは鈴鹿8耐も鈴鹿サーキットも初。水野は路面温度の高かった2日目に2分6秒276までタイムを詰めてドライでは2日間とも総合4位につけた。
今年のKYB MORIWAKI MOTUL RACINGはライダーラインアップをガラリと変えた。エースの高橋裕紀は変わらず、チームメイトとして小山知良、そして現在オーストラリアスーパーバイク選手権に参戦中のトロイ・ハーフォスを起用した。モリワキのモディファイされたCBR1000RRとピレリタイヤのパッケージは変わらず。雨のピレリタイヤは定評があり最終日には総合2番手につけた。
18年ぶりにカワサキワークスが復活。Kawasaki Racing Teamの参戦は話題を呼んだ。ワールドスーパーバイクチャンピオンのジョナサン・レイ、レオン・ハスラム、そして今年からWSBKに参戦しているトプラック・ラズガットリオグル。Kawasaki Racing TeamはWSBKレースのためこのテストは不参加であった。
以下に3日間各日の総合上位10チームを記載する。(メインカー、Tカー2台同時にコースイン可能なため、同じチームのリザルトが2つ掲載される。以下の順位はチーム別の順位)曇り、晴れ、雨、と3つの天候で走った結果だ。路面温度の高い時に強いチーム、雨に強いチーム、など傾向が読み取れると思う。
鈴鹿8耐合同テスト初日(曇り)総合上位10台。
1:#33 Red Bull Honda 2’05”939
2:#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2’06”442
3:#1 F.C.C. TSR Honda France 2’06” 911
4:#634 MuSASHi RT HARC-PRO. Honda 2’07”118
5:#7 YART YAMAHA 2’08”338
6:#12 ヨシムラスズキMOTUL RACING 2’08”372
7:#090 au・テルルMotoUP RT 2’08”617
8;#71 TK(Team KAGAYAMA)SUZUKI BLUE MAX 2’09”046
9:#3 KRP三陽工業& will raise RS-ITOH 2’09”184
10:#19 KYB MORIWAKI MOTUL RACING 2’09”275
鈴鹿8耐合同テスト2日目(晴れ)総合上位10台。
1:#33 Red Bull Honda 2’06”139
2:#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2’06”213
3:#634 MuSASHi RT HARC-PRO. Honda 2’06”276
4:#1 F.C.C. TSR Honda France 2’06” 789
5:#12 ヨシムラスズキMOTUL RACING 2’07”495
6:#7 YART YAMAHA 2’07”709
7:#3 KRP三陽工業& will raise RS-ITOH 2’07”872
8;#090 au・テルルMotoUP RT 2’07”872
9:#95 エスパルスドリームレーシング・IAI 2’07”966
10:#25 ホンダ鈴鹿レーシングチーム 2’08”326
鈴鹿8耐合同テスト3日目(雨)総合上位10台。
1:#33 Red Bull Honda 2’17”363
2:#12 ヨシムラスズキMOTUL RACING 2’20”581
3:#19 KYB MORIWAKI MOTUL RACING 2’20”769
4:#80 SYNCEDGE 4413 Racing 2’21”269
5:#090 au・テルルMotoUP RT 2’21”641
6:#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2’21”786
7:#71 TK SUZUKI BLUE MAX 2’22”094
8;#1 F.C.C. TSR Honda France 2’22” 547
9:#25 ホンダ鈴鹿レーシングチーム 2’22”618
10:#95 エスパルスドリームレーシング・IAI 2’22”828
photo & text : Toshiyuki KOMAI