中須賀克行、今季3勝目! 追い詰めた水野涼、一歩及ばず2位、手負いの高橋巧は3位。
中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が5戦ぶりに優勝、今季3勝目を上げる。その中須賀を追い詰めてあと一歩及ばず2位に水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO. Honda)、手負いの高橋巧(Team HRC)は3位表彰台。
決勝日も蒸し暑い晴天。気温32℃、路面温度52℃のコンディションの中、23周の決勝レーススタート。
ホールショットは水野が奪う。しかし1コーナーで膨らみ、そのイン側を中須賀、高橋、野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が通過、4番手で水野は2コーナーを立ち上がる。V字コーナー進入で高橋をかわした水野が3番手、オープニングラップは中須賀、野佐根、水野、高橋、渡辺一馬(Kawasaki Team GREEN)、渡辺一樹(ヨシムラスズキMOTULレーシング)、加賀山就臣(ヨシムラスズキMOTULレーシング)、秋吉耕佑(au・テルルMotoUP RT)、羽田大河(au・テルルMotoUP RT)、岩戸亮介(Kawasaki Team GREEN)の上位10台。
中須賀、野佐根、水野がワンパックとなって先頭集団を形成、高橋、渡辺一馬、渡辺一樹の4番手グループとの差を開げていく。ここで水野がペースを上げる。野佐根とは年齢も近く普段は仲が良い二人であるが「中須賀さん、高橋巧さんの次は野佐根選手と評されているので、絶対に負けたくなかった」と野佐根をプッシュ、5周目にかわして2番手に上がる。その野佐根、8周目に再度水野の前に出たがその直後の5コーナーで転倒、すぐに復帰するも先頭争いから離脱してしまう。
これで単独2位になった水野はトップ中須賀を追いかける。ここまでの水野、ラップタイムペースは中須賀よりも速い。8周目に1分49秒512、さらに13 周目に1分49秒362のファステストラップをマークする。
8周目に1 秒326あった差が13周目には0.294秒差にまで縮まる。
そして14周目の5コーナーでインを突き、初めて絶対王者中須賀の前に出た。しかし、その先の130RからS字でクロスラインから抜き返される。
「自分なりにプレッシャーをかけるつもりで5コーナーで飛び込んだのですがすぐに抜き返されてしまい「まだ全然余力はあるんだな」と思いました」と水野。
中須賀も厳しい路面コンディションへの対応に苦慮しながらも冷静にレースを運ぶ。高橋や野佐根とは違う新しい追手:水野について事前にどんなタイプのライダーか分析していた。「水野選手はテストから速かったので、たまに後ろについて走りをみていました。タイプ的に野左根選手に近いタイプかなと分析はできていました。決勝レース中に後ろについて見る手もありましたが、もてぎはストップアンドゴーでブレーキングに合わせて走るのがやりにくいサーキットなので、ブレーキを冷やす意味でも敢えて前に出て走りました。」と中須賀。
水野にコンマ3秒まで迫られた中須賀、ラップタイムペースを上げるが水野もついてくる。しかしラスト3周でさらにペースアップ。22周目に1分49秒458のベストタイムをマーク。これには水野もついて行けず中須賀がトップチェッカー。中須賀を追い詰めたが抜くことができなかった水野は悔しい2位。JSB1000クラスにステップアップしてから初の表彰台を獲得した。
「中須賀選手を追いかけて行ったときにタイヤを使い切ってしまったようです。最後の数周、中須賀選手がスパートをかけて離されないように追いかけたのですがやはりタイヤを使い切っていたようで、完敗でした」と水野。水野の速さ。それは高橋と同じワークスマシンを手に入れただけではない。水野自身のフィジカル・メンタル面の鍛錬の成果が現れた結果であると思う。
ケガを押しての出場となった高橋。「何周保つかわからないと思ってサーキット入りしましたが、走ってみたら意外と乗れました。但、路面コンディションに合わせきることができませんでした」と悔しさを見せたものの、3位表彰台獲得はシリーズチャンピオンを考えると最低限の差で済ますことができた。今回は後輩の水野に負けてしまったがそれでもホンダのライダーが二人表彰台に上がれたことを喜んでいた。
中須賀も「若くて元気のあるライダーが出てきてかき回すことは歓迎」と水野や野佐根の若手ライダーの活躍を期待している。
序盤の出遅れとマシンのマイナートラブルでペースを上げられず単独走行を続けていた渡辺一樹が4位、二人で激しいマッチレースを展開していた秋吉と加賀山は最後に秋吉が前でゴール、5位に入る。加賀山は6位。
以下、7位:岩戸、8位:Zaqhwan Zaid、9位:前田、10位:亀井雄大(Honda Suzuka Racing Team)の上位10台であった。
中須賀克行記者会見コメント
「優勝で後半戦のスタートを切れたことは素直に嬉しいです。決勝レースは路面温度が上がって厳しかったです。この路面コンディションに合わせられたライダーが上に来るな、と思っていました。苦手なスタートも決まってトップに出てからは自分の走りに集中しました。タイムがつかず離れずで自分自身もプレッシャーをかけられ続けてキツかったですけど、“キツイのはみんな同じだ”と言い聞かせて逃げ切ることができました。そこでもしも追いつかれていたら負けだと思ったのですが差が少し開いたのは自分の方がタイヤのマネジメントができていたのかな、と思います。
休む間もなく来週は岡山のテストがあり、すぐにレースウィークを迎えます。恐らく暑いコンディションになると思います。ここ数年暑い岡山を走っていないので来週のテストが重要になると思います。岡山は得意なサーキットなのでそこで結果を残せるように集中してテストに臨み、勝負できる体制でレースウィークを迎えられるようにしたいと思います」
水野涼記者会見コメント
「ウィークを通して調子が良かったので優勝は狙っていました。レース展開的にも中須賀選手を最後まで追い上げてプッシュしたつもりでしたがやはり役者が1枚も2枚も上手でした。最後に離されてしまったのは今の自分の実力だと思います。ゴールラインを超えるまでは100%攻めきったつもりですので悔しいですけど悔いはありません。気持ちを切り替えて次戦岡山では勝てるように頑張ります。
後半離れてしまったのはタイヤマネジメントの差が出てしまったのだと思っています。次戦の岡山は全日本初優勝、そしてJ-GP2クラスチャンピオンを決めたサーキットで思い入れが深く得意なサーキットです。今回の課題であるタイヤマネジメントや、ペースアップをレベルアップして勝ちを狙いたいです。」
高橋巧記者会見コメント
「朝フリーのフィーリングは悪くなくタイムをポンポンと上げる事ができました。決勝レースはスタートしたら思っていた以上に路面コンディションが悪く、そこに上手く合わせきることができませんでした。プッシュはしていたのですが離される一方で、現状の中でベストを尽くしましたが3位に入るのがやっとでした。
今回は水野選手に負けましたが、表彰台にホンダのライダーが二人乗るのは久しぶりのことなのでこれを継続させつつ、今度は自分が(水野より)前で、且つ中須賀選手を超えられるように全力を出して良い勝負ができるようにしたいと思います。」
全日本ロードレース第5戦「MOTEGI 2&4 RACE」の決勝レース上位10位結果は以下の通り。
優勝:#1 中須賀克行YAMAHA FACTORY RACING TEAM
2 : #634 水野涼MuSASHi RT HARC-PRO. Honda
3:#13 高橋巧 Team HRC
4:#26 渡辺一樹 ヨシムラスズキMOTULレーシング
5:#090 秋吉耕佑 au・テルルMotoUP RT
6:#12 加賀山就臣 ヨシムラスズキMOTULレーシング
7:#64 岩戸亮介 Kawasaki Team GREEN
8:#15 Zaqhwan Zaidi Honda Asia-Dream Racing with SHOWA
9:#75 前田恵助 YAMALUBE RACING TEAM
10:#35 亀井雄大 Honda Suzuka Racing Team
photo & text : Toshiyuki KOMAI