ヤマハファクトリー鈴鹿8耐参戦復活決定!

2025/03/20

ヤマハファクトリー鈴鹿8耐参戦復活決定!

ものすごいニュースが飛び込んできた!2025年鈴鹿8耐にYAMAHA FACTORY RACING TEAMの参戦が正式発表された。2019年を最後にファクトリー参戦を見合わせていたヤマハが6年ぶりの復活参戦となる。

ヤマハ創立70周年

「2025年 YAMAHA MOTORSPORTS MEDIA CONFERENCE 」が東京都千代田区の明治安田ホールで開催された。ヤマハは今年創立70周年を迎える。竹田祐一MS統括部統括部長からモータースポーツ戦略の概要と、ファクトリー参戦する全日本選手権の活動を中心とした2025年シーズンの活動体制などについて発表があった。そして小野哲MS戦略部長から創立70周年を記念する活動の一つとして2025年鈴鹿8耐にファクトリー体制で参戦することが発表された。場内はどよめく。鈴鹿8耐にファクトリー参戦しているのはホンダのTeam HRCとBMWのBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMのみ。ヤマハのファクトリー参戦は誰もが望んでいたことだった。

ライダーは中須賀克行、監督は吉川和多留。この鉄板の組み合わせは変わらない。残りのライダーはこれから詰めていくことになる。MotoGPライダーか、WSBKライダーか、そこも楽しみなところだ。

2019年の忘れ物を取りに行く

YAMAHA FACTORY RACING TEAMは2015年から4連覇を飾る。5連覇をかけた2019年、ヤマハ、ホンダ、カワサキのファクトリー対決は終盤まで熾烈な接近戦を演じる。しかし残り5分、トップを走るカワサキワークスのジョナサン・レイがオイルに乗って転倒、赤旗中断のまさかの幕切れ。ヤマハの優勝がアナウンスされたがレギュレーションにより赤旗掲示の1周前の順位が適用され、ゴールから2時間後にカワサキの優勝がアナウンスされた。これによりヤマハファクトリーは2位、5連覇は絶たれた。

「その忘れ物と取りに行きます」と中須賀。だが、6年間のブランクは大きいと言う。

鈴鹿8耐復活、最初は他人事だった

発表会の後、中須賀に聞いた。鈴鹿8耐復活の話を聞いたのは昨年暮れの契約更改時期。最初は「へぇーそうなんですか。おめでとうございます!と伝えましたよ」と他人事だった。何故?と聞くと「年齢的な部分が大きいです。全日本ロードのスプリントと鈴鹿8耐ではレースが全く違う。ここ最近の鈴鹿8耐の暑さは尋常ではない、殺人的とも言えます。その暑さの中で果たして自分がどこまでパフォーマンスを発揮できるのか未知数でした」

「鈴鹿8耐に参戦する目的によっても違ってきます。創立70周年を記念するメモリアルとしてと、勝ちに行く、では全然違う。ファクトリーなら当然勝ちに行きます。その時に俺(中須賀)が中心にいられたら良いけど、両手を挙げて喜んでいられない自分もいました。」

YZF-R1を知り尽くした中須賀だからこそ

鈴鹿8耐のベースマシンは中須賀が走らせている全日本仕様のR1だ。2015年のフルモデルチェンジ以来中須賀がずっと開発してきた。数年前、「ホンダもスズキも新型になって今ではウチ(R1)が一番古いんですよ」と言っていたがそれでもチャンピオンを獲り続けている。中須賀だから熟成を重ね、戦闘力を上げる開発ができる。R1を走らせたら誰よりも速い。

それはヤマハが一番よくわかっていることだ。年齢的なリスクはあるもののそれを上回る成果を出せると確信したからこそ中須賀へのオファーだろう。中須賀もヤマハの期待を十分にわかっている、「自分が信頼されていると言うことは素直に嬉しいです。弱気になってはいけない。今ある環境の中でできることを最大限に活かして勝つことを目標に突き進むしかないと思いました。だから契約更改の返事をするときは『鈴鹿8耐もよろしくお願いいたします。』と回答しました」

ウィングレッドを装着した新生R1

 2025年のYZF-R1は新たにウィングレッドと呼ばれる“羽”を装着した。MotoGPでは今や当たり前になっているウィングレッド。昨年から2025年に導入する構想を描きテストを重ねてきた。相当数の距離を走っているそうだ。「コーナー中のダウンフォースが効いてマシンの安定性が増す、加速時にウィリーを抑えてくれるので、今まで立ち上がりではパワーを出さないようにしてたところを、よりパワーが出せるようになったこと、今のR1のポテンシャルを最大限に引き出せる状態になっていると思っています」と好感触だ。

勝てなかった時の俺は強いですよ

前人未到の12度のチャンピオン称号を持つ中須賀だが昨年はチームメイトの若手:岡本裕生にチャンピオンを取られた。もちろん若手育成も中須賀の重要な役割だから嬉しいのだが、根っからの負けず嫌いの中須賀がこのまま黙っているわけがない。「昨年はチャンピオンを獲れず今年はゼッケン2番で悔しいシーズンインとなります。だけどこういう時の自分は強いですよ。今までもその悔しさをバネにどうやったら勝てるか、を徹底的に追求してきました。今年は絶対にチャンピオンを奪還します」「今年はDUCATIも進化するだろうしBMWも参戦してきて混戦になるでしょう。その分全日本ロードが盛り上がると思いますし、その中心に自分がいて引っ張っていけるように頑張ります」

ライバルがいるからレースを続ける。超えたい自分があるからレースを続ける。中須賀が見ているのは常に目の前にある1勝。この勝ちへの拘りこそが中須賀のプライドだ。

全日本ロードレースは4月19〜20日、モビリティリゾートもてぎで開幕する。負けず嫌いの中須賀の走りを生で観てほしい。

Photo & text:Toshiyuki KOMA