ロードレースの次代を担う若手ライダーの育成のために2006年から開催されている「MFJロードレースアカデミー」。目的は「年少者にモーターサイクルスポーツを通じて社会性や親子のコミュニケーション、向上心、自立心、規律、助け合いの精神を育み、心身の健全な発達を促すとともに競技力向上をはかること」会場は栃木県・ツインリンクもてぎ。年間10回のカリキュラムです。
この日(8/10)は、朝6:00起床して夕方18:30まで南コース、ロードコースと、これでもか!と言うくらいみっちり走り込みました。
「MFJロードレースアカデミー」には「年間アカデミー」と「1DAYアカデミー(以下:1DAY)」の2種類があります。
年間アカデミーは12歳から18歳までの若手ライダーが対象。レースに必要なマナーを学び、ライディングテクニックはもとより、フィジカルトレーニングや走行前車両チェックなど総合的なトレーニングを行っています。
“1DAY”は年齢/性別の制限はありません。「オトナもこのアカデミーを受講したい」という声が多く、2012年から始めたプログラムとのことです。これからレース出場を目指す人、サーキット走行を楽しんでいる人を対象にレースに必要なスキルやマナーを教えます。
講師陣も充実しています。元国際A級ライダー・五百部徳雄(いおべのりお)氏を校長に、元WGP125ccクラス世界チャンピオン2回の坂田和人氏、2014年全日本ロードレースST600クラスチャンピオン・小林龍太氏が年間アカデミーをみます。“1DAY”は毎回インストラクターが変わり、この日は今年CEV(スペイン選手権)に参戦している長島哲太選手が担当しました。
“ロードレース参戦”と、目的が明確ですのでスクールの内容も無駄がなくレースに必要な事項だけを徹底して教えています。坂田コーチ、小林コーチ共に年間アカデミー生徒ひとりひとり全員を把握しているので「前回からここが良くなった」「前回指摘したのにまた悪くなっている」と、的確に指導しています。
しかも坂田コーチはスパルタ指導。と言っても闇雲に厳しくするのではなく、二度三度言ったことを忘れている場合に厳しく指摘します。「意識の問題だ」と坂田コーチは言います。悪いところやクセを直そうとしたらその事を意識して走らないと絶対に改善しない。坂田コーチ自身も世界グランプリを走っている時に、タンクの上に“●●コーナーでは顎を引く”などメモを貼っていたそうです。走りに集中してしまうとやるべきことを“忘れてしまう”。だからメモを貼って、意識して走っていたそうです。基本を何度も何度も反復練習する、しかも、それを意識しながら走る。その指導をひとりひとりに細かくアドバイスしています。
また、生徒さんの親御さまからも状況や悩みをヒアリング、それに対してひとつひとつ丁寧に説明しています。親御さまの悩みや課題をコーチが情報共有し生徒に教えることで、一貫性を持ったアドバイスがなされています。
「自分が若い頃は誰も教えてくれなかった」と坂田コーチ。1DAYに参加されたリターンライダーの生徒さんも同じ事を言っていました。「自分達の時代は“気合いで乗れ”とか“テクニックは盗め”と言われてきたので、基本ができていない。だからもう一度基本に立ち返るために参加している。自分が若い頃にこのスクールがあったら自分のバイクライフは変わっていただろう」
さらに1DAYに参加していた女性ライダーはMFJレディースロードレース参加者。「スタンディング(立ち乗り)でバランスを取るとかフルブレーキングなんて一般公道ではできないこと。ここで教わったことを思い出しながら走ると絶対に上手に乗れるようになるので、今後も参加し続ける」とコメントしていました。
「MFJロードレースアカデミー」はちびっ子ライダーにレースで必要な事をキッチリ教える、それだけではありません。挨拶や礼儀マナーも厳しく指導しています。だからみんな礼儀正しく、気持ち良い子どもたちばかりです。そしてその眼はキラキラに輝いていていました。将来を担うこのちびっ子達の活躍が楽しみです!
photo & text : koma